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妖狐、神楽坂文のコンサル譚10 【重慶幽鬼】  作者: 非常口どん八
第三章

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13/20

13 てめぇの車もよぅ、何かの間違いで、空に落ちてくれたら面白れぇんだけどな




          (3)




 ホンヤートンのカフェを出て、SPY探偵団の四人は、昨夜の、デオとザオが勇気と遭遇した場所に行った。

 ここからは、ホンヤートンが見える。

 その夜景は綺麗そうだが、対照的に、ここの一帯は汚く壊れた廃墟地区だった。

「うむ。確かに、夜ともなれば、幽鬼や、妖怪といった類のものが出てきてもおかしくなさそうな、不気味な雰囲気になるんだろうな」

 と、カン・ロウンが言い、

「まあ、幽鬼じゃなくとも、治安は、悪そうだな」

 と、キム・テヤンが言った。

 何か怪しい取引をする犯罪者や、不良のたむろする光景が浮かんでもおかしくなく、確かに治安は悪そうだった。

「肝試しとかしに来るのも、いるんじゃない?」

 パク・ソユンが、思い浮かんで言い、

「まあ、そういった人間もふくめての、治安の悪さだろうね」

 と、カン・ロウンが相づちした。

 すこし、散策してみる。

 すると、離れた廃墟のほうに、

「あれは、地元の警察?」

 と、ドン・ヨンファが気がついたように、警察の人間たちと思しき姿が、ぽつぽつあった。

「だろう、ね」

 カン・ロウンがうなづき、

「現場の調査と、いちおう、“ヤツラ”の捜索でもしているんだろう」

 と、キム・テヤンが補足した。

 なお、警察たちからは、こちらは気づかれてないようで、

「あまり、気づかれないようにしたほうがいいな」

「まあ、何か、怪しまれても困るしな」

 と、カン・ロウンとキム・テヤンが、そう言葉をかわす。

 確かに、こんなところに“こんな四人組”であり、何か怪しまれてトラブっても困るのは間違いない。

 現場には入って行かずに、遠目に、眺めるだけにして、

「まあ、昨夜か、朝から捜索しているのかは分からないが……、まだ、見つからねぇってことは、」

 と、キム・テヤンが言いかけた途中、

「だから? 死んだんじゃ、ない?」

 と、また、パク・ソユンが無責任に言たT。

「いや、死んだことにするなよ、お前は。タヌキのヤツも、いちおう、生きてるって言ってる、っつうに」

「恐らくは……、彼らふたりは、床が抜けて下に落ちたものの、そのまま幽鬼から逃れ、また、現場からも、退散したんじゃないだろうか?」

 と、カン・ロウンに、

「はぁ、」

 と、パク・ソユンが、曖昧に相づちしつつ、

「そしたら、そのまま、警察に、保護してもらえばいいんじゃないのかい?」

 と、ドン・ヨンファが、聞いた。

「まあ、彼らは、自分たちのしている活動を、多くの人が快く思ってないものだと分かっていたからね。通報されて、現場に来た警察に捕まることを恐れたの、か……?」 

「まあ、それも併せても、幽鬼からずっと追われてたことから、パニくってたのかもしれねぇな」

 と、答えるカン・ロウンに、キム・テヤンが補足した。 

 また、キム・テヤンが続けて、

「それに、“幽鬼の力”を目撃したからには、現場に来た警察に助けをもとめて駆け込んだとしても、安心できるからは、“アレ”だ」

「まあ、十数人、いっきに空に落とされたと思しきケースもあるみたいだからな。それこそ、つけ狙ってきた幽鬼から、パトカーや警察車両ごと、空に落とされて殺されてしまう可能性もある。それで、そのまま、姿を隠して、現場から離れるほうが善策だと考えたのだろうな」

 と、カン・ロウンがまとめた。

 また、ここで、

「けど、そのあとは、どうすんの?」

 と、パク・ソユンが聞いた。

 現場から離れて、“死んだことにして身を隠す”つもりだとするのなら、これが肝心な問題だろう。

「ま、あ……? あのふたりも、重慶の金持ちみたいだからね、いろんなところに部屋だったり、物件を持ってたり……、それから、頼るツテは、沢山あるのじゃないか? 事情を話して、ちょっと、匿(かくま)ってもらったり」

 と、ドン・ヨンファが、調べた限りのふたりの情報から、推測して言った。

「まあ、それでも、あんな騒がしそうなふたりが、これからしばらく、ずっと隠れた沈黙を保てるのかはアレだけど」

 と、言葉をつけ加えつつ。


 また、すこし現場周辺を歩いたところ、

「おっ?」

 と、オレンジ色の、目立つランボルギーニが停めてあった。

「ふたりが乗り捨てていった、ランボルがあるね」

 ドン・ヨンファが言った。

 キム・テヤンが、

「けっ、その車は、落とされちまえばよかったのによ」

「おいおい、酷いこと言うな、テヤン」

「フン、てめぇの車もよぅ、何かの間違いで、空に落ちてくれたら面白れぇんだけどな」

「はぁ、嫌なこと言うなぁ」

 と、ドン・ヨンファが、確かに嫌そうな顔をした。

「まあ、慌てて、現場に放置して行ったんだろうな」

 と、カン・ロウンと、

「それに、いくら速く走れるったって、こんな、坂がちな、重慶の街だよ。止まったところで、幽鬼に追いつかれたら、逃げ場がなくて終わりだろうからね」

 と、ドン・ヨンファが言った。

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