13 てめぇの車もよぅ、何かの間違いで、空に落ちてくれたら面白れぇんだけどな
(3)
ホンヤートンのカフェを出て、SPY探偵団の四人は、昨夜の、デオとザオが勇気と遭遇した場所に行った。
ここからは、ホンヤートンが見える。
その夜景は綺麗そうだが、対照的に、ここの一帯は汚く壊れた廃墟地区だった。
「うむ。確かに、夜ともなれば、幽鬼や、妖怪といった類のものが出てきてもおかしくなさそうな、不気味な雰囲気になるんだろうな」
と、カン・ロウンが言い、
「まあ、幽鬼じゃなくとも、治安は、悪そうだな」
と、キム・テヤンが言った。
何か怪しい取引をする犯罪者や、不良のたむろする光景が浮かんでもおかしくなく、確かに治安は悪そうだった。
「肝試しとかしに来るのも、いるんじゃない?」
パク・ソユンが、思い浮かんで言い、
「まあ、そういった人間もふくめての、治安の悪さだろうね」
と、カン・ロウンが相づちした。
すこし、散策してみる。
すると、離れた廃墟のほうに、
「あれは、地元の警察?」
と、ドン・ヨンファが気がついたように、警察の人間たちと思しき姿が、ぽつぽつあった。
「だろう、ね」
カン・ロウンがうなづき、
「現場の調査と、いちおう、“ヤツラ”の捜索でもしているんだろう」
と、キム・テヤンが補足した。
なお、警察たちからは、こちらは気づかれてないようで、
「あまり、気づかれないようにしたほうがいいな」
「まあ、何か、怪しまれても困るしな」
と、カン・ロウンとキム・テヤンが、そう言葉をかわす。
確かに、こんなところに“こんな四人組”であり、何か怪しまれてトラブっても困るのは間違いない。
現場には入って行かずに、遠目に、眺めるだけにして、
「まあ、昨夜か、朝から捜索しているのかは分からないが……、まだ、見つからねぇってことは、」
と、キム・テヤンが言いかけた途中、
「だから? 死んだんじゃ、ない?」
と、また、パク・ソユンが無責任に言たT。
「いや、死んだことにするなよ、お前は。タヌキのヤツも、いちおう、生きてるって言ってる、っつうに」
「恐らくは……、彼らふたりは、床が抜けて下に落ちたものの、そのまま幽鬼から逃れ、また、現場からも、退散したんじゃないだろうか?」
と、カン・ロウンに、
「はぁ、」
と、パク・ソユンが、曖昧に相づちしつつ、
「そしたら、そのまま、警察に、保護してもらえばいいんじゃないのかい?」
と、ドン・ヨンファが、聞いた。
「まあ、彼らは、自分たちのしている活動を、多くの人が快く思ってないものだと分かっていたからね。通報されて、現場に来た警察に捕まることを恐れたの、か……?」
「まあ、それも併せても、幽鬼からずっと追われてたことから、パニくってたのかもしれねぇな」
と、答えるカン・ロウンに、キム・テヤンが補足した。
また、キム・テヤンが続けて、
「それに、“幽鬼の力”を目撃したからには、現場に来た警察に助けをもとめて駆け込んだとしても、安心できるからは、“アレ”だ」
「まあ、十数人、いっきに空に落とされたと思しきケースもあるみたいだからな。それこそ、つけ狙ってきた幽鬼から、パトカーや警察車両ごと、空に落とされて殺されてしまう可能性もある。それで、そのまま、姿を隠して、現場から離れるほうが善策だと考えたのだろうな」
と、カン・ロウンがまとめた。
また、ここで、
「けど、そのあとは、どうすんの?」
と、パク・ソユンが聞いた。
現場から離れて、“死んだことにして身を隠す”つもりだとするのなら、これが肝心な問題だろう。
「ま、あ……? あのふたりも、重慶の金持ちみたいだからね、いろんなところに部屋だったり、物件を持ってたり……、それから、頼るツテは、沢山あるのじゃないか? 事情を話して、ちょっと、匿ってもらったり」
と、ドン・ヨンファが、調べた限りのふたりの情報から、推測して言った。
「まあ、それでも、あんな騒がしそうなふたりが、これからしばらく、ずっと隠れた沈黙を保てるのかはアレだけど」
と、言葉をつけ加えつつ。
また、すこし現場周辺を歩いたところ、
「おっ?」
と、オレンジ色の、目立つランボルギーニが停めてあった。
「ふたりが乗り捨てていった、ランボルがあるね」
ドン・ヨンファが言った。
キム・テヤンが、
「けっ、その車は、落とされちまえばよかったのによ」
「おいおい、酷いこと言うな、テヤン」
「フン、てめぇの車もよぅ、何かの間違いで、空に落ちてくれたら面白れぇんだけどな」
「はぁ、嫌なこと言うなぁ」
と、ドン・ヨンファが、確かに嫌そうな顔をした。
「まあ、慌てて、現場に放置して行ったんだろうな」
と、カン・ロウンと、
「それに、いくら速く走れるったって、こんな、坂がちな、重慶の街だよ。止まったところで、幽鬼に追いつかれたら、逃げ場がなくて終わりだろうからね」
と、ドン・ヨンファが言った。




