5.4 あの日から…さらに1年。イエロー
「登録者数、だいぶ減ったな。」
億越えだったイエローチャンネルは、今じゃ100万くらいまで減っている。
登録してるのは、各国の政府関係者が半数近い。
ここ数年、それぞれがイエローに接触をこころみたが、誰も接触出来ず、みんなほぼ諦めていた。
自分は特に何にもしてない。
普通に配信しているだけだから、とっくに居場所何か特定されていてもおかしくないのに、何故か未だ直接のコンタクトは、一つもない。
(これも、あのお願いに含まれているって分けか。)
俺の願いは、ただひとつ。
この部屋だ。
両親が亡くなってから、数年かけて作りあげたこの城の維持。
「誰にもこの部屋を侵されたくない!!。」
あの時、HEROをやる時に引き換えに願ったのは、それだけ。
夜はオンラインゲーム、朝日を見ながら眠りにつき、昼前に目が覚める。
風呂に入って、来々軒に電話。
昼飯と夜食を頼む。
週に一度、配達で必要な日用品を頼む。
最高の俺の城。
…だったのに、あの日俺は死んだ。
理由がまた、腹が立つ。
巨大生物が倒れ倒れた時に立ち上がるのにちょうどいい掴める場所。
この15階建てのタワマンを杖代わりにしたんだ。
縦に長いタワマンは、さぞかし掴みやすかっただろう。
(まあ、逃げ出さなかった俺にも非があるし)
俺は、ここぞとばかりに、マンションのベランダから生配信していた。
閲覧者数は、うなぎ登り、俺はテンションMaxhigh状態。
コメントに、『早く逃げて』とかも一杯あったがガン無視。
(逃げる?、ここから?、そうしたら俺はまたあのくそな外の世界にいかなくちゃいけなくなるだろ!)
外で働いた期間は地獄だった。
帰ってゲームのスイッチが入ると、ホッとして、仕事の為にゲームをやめて寝ないといけない事が苦痛だった。
あの時も、近くに巨大生物が倒れ込んできて激しくマンションは揺れ、窓枠にしがみつき必死にカメラを回しながら「スゲー、ヤバイー!」と興奮状態。
巨大生物が立ち上がろうと身動きをしたので、さらにベランダの手すりから乗り出してカメラを回そうとしたその時、
「ん?」
巨大生物の左手が突然俺の方に向かって伸ばされた。
*
(なんでよりによって真ん中掴むかなぁ。上掴めよ!上!)
『すまない、握り潰してしまった。…さらにすまないが私の代わりに戦ってくれないだろうか…』
(はぁ!?よくこの状況で、お願い出きるよね?、マジかよ。有り得ないんだけど!?)
『代わりに願いをひとつ叶えられ…』
(ひとつ??。けちだなぁ、せめて3つくらい叶えろよ。)
『…君に3つも願いなんてないだろ。君の願いは、今の生活』
(…そうだな、この部屋、マンションかな。俺の城。誰にも侵されたくない!叶えてくれるなら、やってやってもいいけど。)
『契約成立』
次の瞬間、俺はゲームのコントローラーを片手に、いつも通り部屋にいた。
「あれ?」
あわててカーテンを開けてベランダに出る。
外に見える景色は、さっきと変わらないが、巨大生物はいなかった。
そのまま部屋に戻り、今度は玄関を飛び出してエレベーターに乗り1階まで降りて外に飛び出す。
振り返ってマンションを見上げて、元通りマンションがそこにある。
「嘘だろ…夢…なわけないな。」
今でも覚えているあの感触。
巨大生物の手のひらと、窓に押し潰されて…。
「!!!!」
身震いする。
自分の身体が潰れる感覚。
(どうせなら、そこ消しとけよ!あいつ役に立たないな。)
そして、今。
あれから4年。
俺は、変わらず部屋から出ない生活を送っている。
いや、最初の方だけ外に出たな。
さすがにあの後ライフラインが止まってしまい、食料や水を調達しなくてはならなくなり、ついでに例の件を試そうかと。
電車も止まってうごかないので30キロポイントまで歩いて見てみた。
30キロ。
一度死んだ俺が、生きていけるデッドライン。
巨大生物はみずからの命と引き換えに、地球にいくつかの事をしていった。
まずは隕石周辺に結界を張って怪人達を封印した。
しかしこの封印も永久じゃない。
そこで代わりに戦う戦士を選んだ。
残りの力で5人なんとか戦士を作った。
一度死んだ俺達は巨大生物の力で生き返ったので、巨大生物の結界の余波がある所のみ生きていられる。
それの限界がだいたい30キロ。
28キロくらいから身体がしんどくなってそれ以上進めず、諦めて引き返した。
帰り道、途中でスーパーによって日持ちしそうな食べ物を片っ端からかごに積め会計。
そのままカートを押してマンションまで帰った。
スーパーは、ほとんど棚が空っぽだったので、何件か回らなくてはならなかったが、幸せな引きこもり生活の為に頑張った。
しかし1週間もすると食料全てなくなってしまった。
近くでやっていた炊き出しに行き、お腹を満たす。
その足で前回のカートを押しスーパーに行ったが、近場のスーパーもコンビニも全て閉まっていた。
「嘘だろ…」
そうなると、カートは邪魔なので3件め辺りで置いてきた。
その日は、なんとか25キロくらいのところでまだかろうじて営業していたスーパーにやっとたどり着き、わずかな食料を手にして歩き出した。
(どうしよう、幸せな引きこもり生活は?、そもそも俺は一度死んでるんだろ?。なんで腹が減る?。…生きてるのか死んでるのか分からない)
やっとの思いでマンション近くまで歩いてきたら、いい匂いがして、立ち止まる。
(…来々軒?)
瓦礫の山の中、ポツンと立つ一軒のラーメン屋。
ふらふらと近づいて暖簾をくぐり、扉を開けた。
「らっしゃい!久しぶりのお客さんだ。どうぞどうぞ。」
店主が嬉しそうに出迎えてくれた。
「すみませんお客さん、今材料が手に入らなくて、出きるものが、チャーハンだけなんですよ。麺が手に入らなくてね。」
「それで、大盛にして。」
「あいよ!」
出てきたのは、ネギと、チャーシュー、コーンが入ったチャーハンと、ラーメンスープがどんぶりで出てきた。
(…うま!)
めちゃくちゃ腹が減っていたので夢中で掻き込む。
「…これ、出前出来ます?そこのタワマンなんだけど…」
「出前は、元々やってるから出来るんだけど、食材が手に入りにくくてねー。なんでもいいなら、その日手に入った食材で何か作って出前するよ。」
「それでいいです。そうだな、毎日13時すぎに701号室に、2食分届けてもらえる?」
「ありがたいね、喜んで!、なあ」
厨房の中にいた若い店員も頷く。
その日のうちに、細かい取り決めを交わし、毎日の食事を確保出来た。
数ヶ月後には、政府が正式に隕石の20キロ圏内を立ち入り禁止にと発表。
俺のタワマンはギリギリ20キロの縛りからまぬがれた。
電気と水道も復旧したのが半年後。
それまでは、仕方なく外に出て水だけは確保しに外に出る。
時々、来々軒の若い店員も、給水所で遭遇した。
向こうは、明るく挨拶してくるが、正直陽キャな奴と話すのは苦手なので、頭だけ下げる。
(本当は無視したいんだけど、食事作ってもらってるからな~。)
正直来々軒無しでは、すでにマンションを出ていただろう。
あれから、他の所にも電話したが、ほとんどの店は配達場所をら聞いて断られ、なんとか配達料金を倍近く出す条件でマンションの入り口に置いてくれる。
電気が復旧してからは、まず配信を始めた。
ただマンションのベランダから隕石の方向を24時間撮してるだけのチャンネル。
意外と稼げた。
(そういえば…代わりに戦うって、どうやって?)
その方法が分からないので、とりあえず、仕方ないから
マンションの中にあったジムで軽く体力作りも始めた。
部屋の外に出る気になったのは、このマンションに誰も住んでない事が、わかったからだ。
(それも、そうだ。一度あいつ握り潰されてるし、そもそもみんな逃げ出して誰もいなかったはずだ。)
快適な生活は、すぐに終わった。
どこかのバカが、引っ越ししてきたから。
(嘘だろ!、ここに住もうなんて!)
しかも、そいつはジムも利用し始めた。
俺は夜型なので会う事はないが、後々面倒なのでジムからランニングマシン、鉄アレイ(小さいの)を2個、あとは、自転車のやつを夜中に拝借。
ゲームを手に持ち、自転車を回す。
ランニングマシンも鉄アレイも3日坊主だ。
実際戦いか始まってからはそれどころではなくなった。
(うわー、まじで怪獣映画みたいじゃん。お、みんな頑張れ。)
とりあえず、率先して戦う気もなく、かな~り後方から矢を飛ばして、戦いを観察する。
(…これ、配信出来んじゃね?!)
初回の戦闘が終わると、部屋に自動的に戻ってきていた。
「…なるほど。はいはい、ヤバイ、忙しくなりそうだな!」
まだ夕方だ、急いで電気屋に行く。
高性能ビデオカメラを一台、いや2台、ついでに専用のパソコンも一台購入。
(でも、2回目の戦いで近くに置きすぎて破壊されちゃったんだよなぁ、あの時のショックはヤバかった。)
すぐに戦線離脱して、カメラを回収。
次の日にまた電気屋へ。
3回目からは生配信にした。
最近は少し困っている。
(俺だけじゃなく、他の奴らも…困ってるだろうな)
いわゆるマンネリというやつだ。
戦いに、ゴールが全く見えないのだ。
一応対話も試みた。
奴らの音声を録音、イエローチャンネルで流して、世界中に解析を依頼。
各国や、個人、学者、己の叡知をかけてみな解析を試み解答を返信してきた。試したが、全て対話は出来なかた。
仕方ないので、戦いの最中にいろんな国の言葉で話しかけてみたり、アイコンタクト、ボディランゲージ、手話なんていう事もやってみた。
全て無駄だった。
奴らは、ただひたすら攻撃してくるのだ。
最近では、レベル4の怪人まで出てきた。
レベルは怪人の大きさで、どこかのアナウンサーが放った一言が、自然と定着した。
少しずつ怪人は大きくなる。
それは、少しずつ結界の穴が広がっている証拠でもある。
イエローの武器もただの弓から、クロスボウ、ブーメラン(炎、水、雷、氷、バージョン多数)、大きな弓(大きいだけで精度は変わらず)、投げるハンマー、甲羅(マリオ?)
ありとあらゆるゲームに出てくる接近戦で戦わなくて済む方法を試した。
ブーメランは他の仲間にぶつかりそうになって、タイミングが難しいし、甲羅はどこに飛ぶかわからないし。
(どうせなら魔法が使えたら……メガとかギラとか?、本当、いつまで戦いは…続くんだよ。あのデカブツ!あいつほんと使えねーな!説明足りねーんだよ!)




