表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

5.2 あの日から…さらに1年。ブルー

「だりー。今日もマジ疲れた~。」

熱い風呂に浸かりながら、今日の戦いを思い返す。

少しずつ強くなる敵、俺達のレベルもだいぶ上がり…、

「だー、もう、無理だろー、そろそろさぁ~。」

俺達は、ただの人間。

与えられたのは、特殊スーツ、想像で作れる武器、そして"不死身の肉体"。

でも、戦えば疲れるし腹もへる。

前は、週に何度か召集されていたが、最近じゃ頻度も上がっている。

特にここ3日、毎日召集されてかなり限界が近い。

「ゲームじゃないんたから、レベルも経験値も無いんだよ!!。」

敵のレベルが上がるのに、自分たちは変わらない。

いつも元気に先人切ってた、ブラックとグリーンも、最近じゃ覇気を感じない。

いまだに元気なのはレッドくらいだ。

(あの赤、ちょっとイカれてるだろ、俺達の方が普通だよ。)

イエローは変わらず後方支援が多いが、元々やる気は感じてない。

「……いつまで続くんだ、これ。」


あの日の願い、いや、願い自体は間違えてない。

あれが正解だ。

その前、あの日が全て何かを狂わせた。

霞ヶ浦に隕石が堕ちてきたあの日ではない、その5カ月前。

俺の人生の運気が一生で一番良かったあの日。


俺は、宝くじが当たった。


前後賞合わせて10億円。


東京の下町、集合団地の2LDKに、家族5人で住んでいた。

父親が一時病気で入退院を繰り返していて、まともに仕事が出来ず、母親が朝から夜遅くまで働いていた。

俺も長男として家計を支えたくて、中学卒業したらすぐ工場に働きにでた。

3年後、妹も、同じ工場に働きに出て、一年過ぎた頃親父が死んだ。

母親はすっかり気落ちしてしまい、俺が頑張らなきゃと掛け持ちで夜も働き始めた。

一番下の弟は、来年受験だ。弟だけでも、高校に行かせてやりたい。

妹は昼間働き、そのお金で夜間の高校に行き始めたが、毎日疲れて帰ってくると、布団に直行している。

もっとお金が欲しい!


そんななか、たまたま通りかかったいつもの駅前。

の宝くじ売場。

なぜか?ふらっと立ち寄って、なぜか?10枚買ってしまった。

3,000円。

買ってから我に返り、自分の行動におどろいた。

(何無駄な買い物してんだよ!)

恥をしのんで返金してもらおうか、かなり悩んだ。

(明日から、昼飯パン1個にすればいいか……はぁ、今日は…)

俺の20歳の誕生日だった。


年明け、家族皆で駄目元で当選番号確認をする。

「いくよ、まず組が、42組。」

「すげ、組あってるよ。」

「番号は、125837」

「1258……」

10枚の宝くじを前に、全員がフリーズした。

「……えーと、もう一度……」

しばらくしてようやく俺が言葉を絞り出す。

「…42組、え?やだ!こわい!おにい自分で見てよ?!」

妹に携帯を押しつけられて、震える手で画面を確認する。

「42組 125837…」

「あ、お母さん!」

母が卒倒して背後に倒れそうになり、慌てて弟が支える。

「心臓が止まるかと…やだ、私を殺す気かいあんたは…」

「ちょっと待ってよ、これ連番じゃない!、……てことは…10億円…」

全員で、顔を見合せる。

「信じられない、おにい!。怖いよ、なんか取り憑かれてるんじゃない?」

「実感ない。あ、以外と当たってるかも。買った時かなり無意識でさ、買った事に俺も驚いたよ。」

「ちょっと、皆、まずは落ち着きましょう。いい、この事は誰にも言っては駄目よ。全体に。」

全員頷く。

「友達、親戚、誰にも言っては駄目。いつもどうり生活しなさい。それと、権利はお兄ちゃんにあるんだから私達に口出しする権利はないよ。」

「お兄様、俺は高校さえ行ければ満足なんでそれだけお願い!」

「ちょっとずるい!私は出来れば専門学校に行きたいんだけど、手に職ってやつ。最悪あとで返すから。」

「なんだよ、当然皆で使うに決まってるだろ?、高校だけじゃなくて大学も行けるぞ!、俺も夜学行こうかな。それに、前から話していた海の近くの大きな家とか買って、皆で住もうぜ」

母親と一緒に銀行に行き、10億円の入った通帳をてにいれた。

その後皆で話し合い、弟と妹が将来行きたい学校の近くに家を買った。

近くのお寺に親父の墓地も買った。

お金がなくて墓も建てられず、ずっと家に遺骨も置いてあったが、この前、親戚も呼んで立派な納骨式をした。

やっと親父が天国に安心して行ける気がする。

新しい家は、千葉の海の近くの築浅中古一軒家。

春休み中に引っ越し。

俺と妹はバイトしながら夜学に通い、弟は高校に合格して楽しそうだ。

母親も前よりらくな仕事について、毎日楽しく暮らしていた。

その日数は たった 42日。


42日後、隕石が堕ちた。


あの日俺以外は皆家にいた。

俺はコンビニでバイト中で、衝撃で倒壊した店から店長と一緒に何とか這い出して、外の光景に愕然とした。

周りの建物は、全て倒壊していた。

俺は痛む体を引きずって、家に急いだ。

しかし、その方角はもっとひどい惨状で、ところどころから、火があがっている。

とてもじゃないが、途中で進めなくなった。

目印が何もないのだ。

道も、家も、何もかもが燃えていた。

愕然として座りこんでいたら、巨大生物が飛来してきて戦いが始まり、誰かに腕を捕まれて、立ち上がらせられてその場を後にした。

気づいたら病院で、いろんな機械に囲まれて、身体中が痛かった。

微かに聞こえた医者の声から、全身火傷でもって後数日らしい。

(どうせ死ぬなら、皆と一緒が良かった。皆ごめん、俺が、宝くじなんかあてたせいで、もっと幸せにしてやりたかった。)

ベッドの上で痛む身体、涙が溢れ出す。

このままじゃ、身元不明で無縁墓地じゃないか。

せめて家族皆で同じ墓に入りたい。


〖その願い叶えてやる。かわりに奴らと戦ってほしい。〗


誰かが、頭の中に語りかけてくる。


〖お前の希望を言え、可能な限り叶えてやる〗


(…死にたくない、まだ全然幸せになってない、お金だって、全然使ってないし、やりたい事、もっとあるはず…なあ、俺の家族を返してくれよ。皆で幸せになるんだよ!返せよ!)


〖死んだ者を生き返らせる力はない。〗


(じゃあ、せめて家族の身体だけ元に戻せたり出来ないのか。生きてなくてもいいから。父親と同じ墓にきちんと入れてやりたい。)


〖可能だ。では。契約成立。〗


ピー


そこで俺の命は尽きた。

次の瞬間、体育館にいた。

(あれ、…今俺、死んだよな…。身体、痛くない)

火傷の跡もないし、どこも怪我してない。

身体中を見回して、かすかな異臭に頭を上げる。

目の前に木の箱が3つ。

「!!!」

脳内が、ハッキリして、それが何か!…わかってしまった。

「あ、起きました、お疲れですよね。申し訳ないですが、順番が詰まってて、移動してもよろしいですか?」

だいぶやつれた、年配の男性が、話しかけてきた。

「移動って…」

「焼き場の順番回ってきたんで、行きましょうか。」

目の前の、3つの棺が外に運ばれようとしていた。

「待って!」

慌てて、棺の窓を開けると、母さんがいた。

他の2つも開けると、弟と妹がいた。

「……すみません、あと1日だけ、1日だけすみません」

「…分かりました。次のかたにお譲りしますね。」

「ありがとうございます」

男性が去ったあと、棺の蓋を外して3人を抱きしめて、


ただ ただ、泣いた。


次の日、3人の火葬を済ませ、3人の遺骨と父親の遺骨をを新潟に住む父方の親戚に預かってもらい、新しい墓を建ててもらった。

父親の遺骨、駄目もとで墓があった跡地に行って見たら、うちの墓地の辺りだけ被害を免れていた。

(サービスよすぎるだろ、これ)

もちろん費用はだした。

親戚には一緒に帰るよう、なんども説得された。

(説明できないよな~、ヒーローになって戦うからなんて言えない。ましてや、実は俺も既に死んでるなんて…)

新潟には行けないんです。

30キロを超えたら、俺はどうなるのだろう。

叔父達の乗った車を見送って、肩に掛けたバックを開く。

俺が唯一持ってた持ち物、財布と携帯、通帳と印鑑。

生き返った時、このバックを背負っていた。

バックは、コンビニのロッカーに入れっぱなしだったはず。

ましてや通帳と印鑑は、あの日灰になったはずだ。

そして財布は、中学に入ったお祝いに父親が買ってくれた財布。

とても大切な宝物だ。

(…ほんと、サービス精神"神"かよ。)


しばらく避難所で生活しながら、新しい家を探した。

10億円は、まだほとんど使ってない。


*


「…あれ、ちょっと寝てた、俺…」

懐かしい夢を見ていた。

「あの頃にもどりたい、父さんがまだ元気だったあの頃に…」

懐かしさに、涙があふれてくる。


グゥ


「…なんで、こんな時でも腹減るかなぁ~、あーもう、今日は来々軒だな。」

少し寝たらちょっと元気になったし、家族の夢を見た日は心も満たされる。

鼻をすすりながら、風呂場に直行してシャワーを浴び、ラフな格好に着替えて部屋を出る。


「行ってきます、皆」


玄関に飾ってある5人で撮った最後の家族写真。

父親が病気になった時、まだ元気自分が写った家族写真を撮りたい、そう言って皆でおちゃらけて撮った写真。

みんな笑顔で笑っている。


携帯に残っていた写真は、全部現像して部屋の至るところに、飾ってある。


まるで一緒に暮らしてるみたいで、落ち着く。


(…他の人が見たら多分引くだろうな。)


まあ誰も入れるつもりはないけど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ