3.グリーンは働き者
(えーと、7.0.1.と)
PiPiPi
〖ピンポン〗
カチッ
エントランスのドアが開く。
毎日お昼だいぶ過ぎた頃、このマンションに出前を持って来る。
エレベーターで7階に上がると、一番東の部屋701号室の前に、昨日の出前皿が大きめのトレーの上に乗せてある。
皿はいつもきれいに洗われていて、ラーメンどんぶりの中に封筒が入っている。
昨日のラーメン、チャーハン、餃子、ご飯、代金は2800円。
(今日の注文は、味噌ラーメン、チャーハン、ニラレバとご飯。めっちゃ食べる人なのか、夜食かな?、それとも朝食?。)
ポケットに封筒を突っ込み、トレーから一度皿をどかす。
持ってきたおかもちから、熱々の商品を出してトレーに並べ、空き皿を戻す。
「毎度あり!。」
家主には届いてないが、いつも声をかけて、その場を後にする。
*
「おう、お帰り。」
店に戻ると、カウンターで親父がテレビを見ながらクロスワードの雑誌を開いていた。
「…あのお客さん帰ったの?。」
おかもちをテーブルに置き、中に入っていた皿やどんぶりを洗い場に持っていく。
「さっき帰ったよ。相変わらず無口で変わった客だなぁ、洗い物の前に飯くっちまえ。」
冷蔵庫からラップされたおかずをとり、レンジに突っ込み、炊飯器からご飯をよそう。
味噌汁替わりにラーメンスープにネギと卵をといて卵スープにした。
「いただきます。」
昼ピークが終わったら、従業員のお昼なのは昔からの決まりごとだ。
その後1時間くらい休憩をとり、夜のピークに合わせて仕込みをする。
2年くらい前までは、だ。
あの日、隕石が落ちた後、"奇跡のラーメン屋"なんて一時期取り上げられてテレビやら、YouTuberやらがしばらくはわんさか押し掛けて大変だった。
周りはみんな倒壊してるのに、うちの店だけ偶然倒壊を免れた、と皆驚いて取材が殺到したのだ。
(まあ…ある意味奇跡だな)
チラッと親父を見る。
親父はクロスワード雑誌を前に「うーん」、腕を組んで唸っている。
今は、11時に店を開けると、若い男性が1人入ってくる。
お昼過ぎた辺り、1時頃に先ほど配達したマンションから電話がかかってきて、注文を届ける。
夜7時前後に、また若い男性が夕飯を食べにくる。
以上、お客さま2名。
他は誰も来ない。
そもそも、周りは住宅街だが、誰も住んでない。
昔は毎日ラーメンスープを仕込んでたのに、今じゃ週に一度作って、小分けにして冷凍庫にしまわれる。
食材を無駄にしないように、使いきれなかった食材はまかないにして朝昼夜の食事に回す。
メニューもだいぶ減らした。
ラーメンは、醤油か、味噌、塩。
餃子と焼売は、種だけ仕込んで皮は手作り、注文が入ってからくるむ。
チャーシューも、前は毎日大量に仕込んでいたが、今は、2日に一度、小さい鍋で作れてしまう。
3年前、霞ヶ浦に隕石が堕ちた。
中心地から半径10キロは衝撃で何もなくなった。
さらにそこから、半径20キロの住民は立ち退き勧告が出たが、大半が既に逃げ出していた。
隕石が堕ちた衝撃で多くの建物が倒壊、挙げ句の果てに未知の生物が現れたら、他人の命を救っている場合じゃない。
動ける人間は、全てを捨ててにげだし、残された動けない人間は、死を待つのみに…。
さらに謎の巨大生物が現れた時に、地球上の全てが、絶望に陥った。
世界中は、思った。
日本は、終わりだ…。次は?…。
しかし、巨大生物は、未知の生物を倒し始める。
助かった!?。
みんな安堵の気持ちで巨大生物を応援した。
が、未知の生物の圧倒的な数の多さに、巨大生物は、膝をついてしまったのだ。
未知の生物は、残った力で結界を張った。
隕石を中心に半径5キロ。
未知の生物達はそこから、出られなくなり隕石に戻っていった。
安全を確認してから被害地域で救助活動に入ったが、生きていたのは、数人で、ほとんどの方が亡くなっていた。
どうやらあれは隕石ではなく、彼らの宇宙船なのかもしれない。
政府は、奴らを怪人と命名。
結界のまわりに監視カメラをたくさん設置。
怪人対策丁を設立。
半径10キロ離れた所に、無人戦車を置き、監視を続けている。
諸外国も、日本に協力と言いながら、新型兵器のちょうどいい実験くらいな気持ちで無人で使える物を設置して行ったが、怪人が出てこれなくなったので使うタイミングを失い、かといって下げるわけにも行かず、ただ埃を被る鉄の塊になっていた。
試し打ちでもしも奴らを刺激するわけにもいかない。
しかし転機が訪れる。
半年たった頃、怪人が隕石から出てきたのだ。
そして結界を壊し始めた。
「奴らが出てきたら、攻撃開始だ。各国に通達、攻撃準備!」
サイレンが鳴り響き、戦闘態勢、臨時ニュース、30キロ圏内に退避勧告。
小さい亀裂が結界に入りその隙間から小さな怪人が一匹ぬけでた。
「出たぞ、攻撃開始!」
ここぞとばかりに兵器を撃ちまくったが、結果は結界の亀裂をひろげただけで、怪人達は無傷だった。
そしてさらに弱った結界から、2匹3匹と小さな怪人達が抜け出てきはじめた。
「ひ!、こ、攻撃だ、攻撃を続けろ!」
「待って下さい、これ以上は結界が壊れます!」
「怪人だけ当てろ!」
「無理です、奴らわかってるんですよ、結界の前に立って動かない」
「外に出て来た奴らより結界の中にいる怪人達の大きさ桁ちがいです。あれが出て来たら、大変な事になるのでは…」
「どうしたら?、んなんだ??」
監視カメラに、5つの光る物が、写っている。
その光か消えるとそこに5つの人影。
「え、ゴレンジャー?」
「古!いやいや、黒が、いるから違うだろ、ってえ、何?、戦隊ヒーロー?。赤、青、緑、黄色に黒?」
「倒してるよ、怪人を…。え、何?ヒーローって本当にいたの?」
5色のヒーローは、次々に怪人を倒し……。
「…何か、手間取ってないか?、素人丸出しみたいな。一応倒してるけど…」
「わかる、何か連携も、とれてないし、…バラバラ」
「無駄な動き多いよな~、既に疲れてるじゃんあの黄色。あー、しゃがみこんでるよ、ジジイか!」
「レッド強そうと思ったけど、ただがむしゃらにパンチと、キック繰り返してるだけだなぁ。大丈夫か?」
「あ、一応全部倒したみたいだぞ、って消えた」
「なんだったんだ、あれ?」
もちろん、この映像は世界中に流れていて、各国で笑い者になった。
しかし、世界中に戦隊ヒーローオタクはたくさんいた。
《最初から強いヒーローは、いない!》
《だんだん強くなって行く、それこそが真のヒーロー!》
《私達は、応援するわ!》
《巨大ロボット期待!日本なら出来る!》
《俺も戦う、是非6人めに!》
世界中のヒーローオタク達の言葉が、世界中に届き、そして彼らにも、届いた。
(あの初戦は、最悪だった…。消したい過去だ)
昼飯は、昨日残ったチャーシューと野菜を炒めてご飯に乗せた賄い丼。
チャーシューのタレがかかればなんでも美味い丼になる。
始めての戦い。
武器と言えばやっぱり剣だろ。
そう思い、かっこよさも考えてゲームに出てくる剣をイメージした。
頭でイメージすると、武器が出てくる。
ちょっと便利だ。
小.中学校で剣道道場に通い、高校の部活ではサッカーで走り回っていたから体力に自信があった。
しかし、初戦が終わり部屋に戻ったら、そのままベッドに倒れ込み朝まで爆睡だったし、起きたら全身筋肉痛で立ち上がれなく、仕事も休んだ。
ベッドの中で、反省し武器を変更した。
一番使いやすい武器…、中華包丁に近いの、ないかな?、いや、なくてもいいんだ、イメージすれば。
そのご中国映画に、出てくる青竜刀が近いかな。
次の戦いは、一週間後だった。
とりあえず青竜刀イメージの武器を出して戦ってみた。
(うん、前より戦いやすい)
そこから、どんどんアレンジして、今の武器になった。
もちろんまだまだ進化させるつもりだ。
体力作りも、欠かせない。戦いがない日は、ランニング、筋トレ。
戦いのあった日は、何もせず睡眠で回復。
食事は、しっかり食べて万全に備えている。
(俺は、絶対負けない。守ってみせる。この店を)
じいちゃんが始めて、親父が跡を次、自分も3代目になると、子供の頃から決めていた。
小さい頃から店を手伝い、専門学校も出て他の店で3年修行し、結婚もして嫁さんと実家を継いだばかりだ。
昼飯を食べ終えて、立ち上がる。
「さてと、親父!ちょっとランニングしてくる」




