2.ブルーの欲望
(おっ、今日も4番。どうせイエローはギリギリまで来ないんだろうし)
俺は戦場に到着すると、レッド、ブラック、グリーンの戦う少し後ろに降り立つ。
レッドは、両手に爪、両足にトゲが付いたブーツを履き、パンチやキックを繰り出している。
どうやら空手、もしくはテコンドーとかかなぁ。
かなりの腕前と見た。
ブラックは、さほど大きくないソードを右手に、左手には動き安さ重視の小さめの盾。
最初は、長いソードを両手に持って振り回していたが、効率が悪い事にすぐに気がつき、武器を替え、今の戦い方に落ち着いた。
グリーンも最初はブラックと同じソードだったが、やはり戦いづらさに気がつき、斧にちかい感じの鉈のような武器に替えた。
この3人がだいたい最初に現場に来て戦いが始まり、数分したころだいたい俺が到着する。
3人が取りこぼした敵の怪人を始末するのが俺の仕事。
武器はショートソードに、左手の甲に備え付けた銃の両手使い。
何せ3人は、己の回りしか見ない個人戦。
連携なんてなし。
俺がおこぼれを倒してると、1匹、すり抜けた奴が!。
しかし何処からか飛んできた矢が、奴の頭部を砕く。
矢の飛んできた方向をチラッと見ると、少し離れた所から、イエローが矢をつがえて狙いを定めて、確実に仕留めてくれる。
(いつも、助かります)
そろそろ敵の怪人も数が減ってきた。
レッドはまだまだ戦えそうだが、ブラックとグリーンは、そろそろ限界そうだ。
(そりゃそうだ、昨日の夜中も俺達戦ったし…)
武器をロングソードに替えると、二人の間に割って入り、残りの敵を倒して行く。
(俺、昼寝したから、余裕あり!任せとき!)
ブラックとグリーンは、少しずつ後退して行く。
*
「ぷはー、今日もよく戦った!、俺お疲れ~、カンパ~イ。」
自宅に戻った俺は、キンキンに冷えたビールと、熱々の枝豆で晩酌タイムだ。
この後、ひとっ風呂浴びてぐっすり眠る。
ベランダの窓から外を見る。
ここは高層マンションの最上階なので、きれいな景色を見るため窓は北から東に向かってかなり大きめの一枚硝子がはめ込まれている。
東は都会のネオン。
北は真っ暗やみ。
さっき戦っていた、禁止区域内。
このマンションが立つ道路までが、立ち入り禁止区域。
バリケードでぐるっと囲まれ、始めこそ見物人や、テレビ局、YouTuberが近くまで来ていたが、今では誰もこない。
もちろんマンションの住民は、軒並み引っ越した。
多分今住んでるのは、俺と、5階だか6階に1人住んでるだけなはずだ。
一度も会った事はない。
(そりゃそうだ、15階と、5階。会うわけがない。)
このマンションにはエレベーターが2基あるが、1つは、7階まで。もう1つは、8から15階まで専用のエレベーターがついている。
実質、個人専用エレベーターと化している。
朝、仕事に行く時も会わないし、生活リズムはだいぶ違いそうだ。
(まあ俺も仕事行ってないけど。)
俺のルーティンは、決まっている。
週に一度ゴミの日だけ、高級スーツ、ピカピカに磨いた靴、高級腕時計をはめて、朝、ゴミを持って駅に向かう。
いつも会う、ちょっと疲れた感じの若い男性に満面の笑顔で挨拶する。
「おはようございます。」
彼は、いつも軽く会釈を返すくらい。
でも俺は、気づいている。
彼の視線が、時計やスーツに向かうこと。
この駅、昔は、都会まで通勤時間帯30分、地価も安くファミリー層に人気のエリアで、東京に仕事に行くサラリーマンで溢れかえっていた。
今ではみる影もない、無人駅。
キオスクもシャッターを下ろし、コンビニも空の箱だけ残っている。
近くにあった商店街も、無人で年々ボロボロになって行く。
この駅から電車に乗る奴なんて、俺と、この若い男性くらいだろう。
電車は、1日朝昼夜合わせ10本もない。
上りは東京へ、下りは成田方面。
成田空港は閉鎖され、怪人対策本部が設置された。
下りに乗って行く人をたまに見かけるが、皆一様に暗い顔で乗っている。
多分軍関係者だろう。
俺は改札を抜け、都会に向かう上りホームに向かう。
若い男性は、2年くらい前までは、「この駅から俺達東京に働きに行くぜ!。」ちょっと誇らしげに同じ電車に乗る仲間だった。
しかし、いつからか、下りホームに彼は行くようになり、その頃から、だんだんうつむき、猫背になって行く。
(左遷か?、御愁傷様。)
俺は週に一度、彼に会う事で、優越感を抱きたい。
そんな、屑やろうだ。
そう、屑やろうなんだ。
だって
会社なんか行ってない。
都会に何しに行くって?。
まずは、腹ごしらえ。
昼は、ジャンクフードとかファミレスが多いかな。
その後ぶらぶらしながら買い出しをして、少し高級料理をテイクアウトして、指定した場所の宅配ボックスの荷物を受け取り、マンションに帰宅してゆっくりまったりする。
週に一度ゴミの日の俺のルーティン。
それ以外は、マンション内にあるジムで体を鍛えたり、
戦ったり。
基本それだけ。
「はあ~、全然減らないんだよなぁ~、お金。」
一時期、高級シャンパンやら高級食材なんて買ってみたが、すぐに飽きた。
やっぱり、牛丼、のり弁、ハンバーガー。ビールもいつものが一番で、最高のつまみは、ばあちゃん秘伝の糠床で漬けた糠漬け。
「俺ってやっぱり凡人だよなぁ~。みんなそう思ってるよな」
買ってきたキュウリと茄子を糠床にいれながら、写真立ての家族に話かける。
「さて、寝るかぁ~、また明日も戦いまっせ!」




