1.ブラックの事情
この星には、ヒーローがいる。
何処からともなく現れ、
5色のカラーに身を包み、
宇宙人と戦い日本を、
世界を守る為、
彼らは、いったい…何者か…。
「朝か…。フワァ~ァ~… 今日も疲れた…。」
俺は、何とか立ち上がり洗面所へと向かう。
今日は金曜日。
今日出勤すれば、休みだ。
ここが頑張りどころ。
冷蔵庫をあけて菓子パンを取り出し、牛乳を取り出す。
朝はしっかり食べないと。
いつ呼び出されるか分からない。
この間は、昼飯の時間丸々呼び出された。
仕事に影響がなくて助かるが、腹が鳴って大変だった。
今では非常食でカバンと机に、栄養ドリンクと、チョコ、小さなお菓子が入っている。
テレビをつけると日常のニュースに加えて、昨日の立ち入り禁止区域情報が流れる。
「昨日は、夜中に怪人が出現。レベルは1から3と認定。数分後にヒーローが現れ怪人を倒しました。」
「昨日は何色でした?。」
「レッドと、ブラック、後からブルーとグリーンが現れましたね。」
「イエローは、不参加ですか。」
「いつもながら最後にチラッと来てましたよ。もうほとんど終盤でしたね。」
「相変わらずヤル気ないね~、イエローは。」
テレビの解説者は好き勝手話してる。
「…まあ、事実なんだよなぁー。意外と…。」
今日はゴミの日だ。
パンのゴミと、飲み干した牛乳パックをゴミ袋に放り投げて、スーツに着替える。
カバンを肩に下げ、ゴミ袋を縛って持ち上げ家を出る。
アパートのごみ捨て場は通りすぎ、駅に向かう。
駅まで歩いて5分ちょっと。
3年前、同じ時間駅に向かう学生、サラリーマンで駅前の道は混雑していた。
今では、駅までいかないと、人に会わないほど誰もいない。
今住んでるアパートも8部屋あるが、住んでるのは自分だけだ。
隣の家も、その隣の家も、全て空き家。
駅前つくと、ゴミステーションがある。
ゴミ収集車も、週に一度。
今ではここにしか来ない。
先客がいた。
「あ、おはようございます。」
爽やかに挨拶した男は、「お先に」と、駅に入って行く。
あの爽やかな笑顔野郎、正直ムカつく。
スーツは、いいものを身に付け、靴もピカピカ。
腕に嵌めた時計は、高級品。
そしていつも上り列車に乗る。
(俺も2年前まで上りだったのに…。)
あいつに会うと、いつも気持ちが惨めになりながら、俺は下りホームに向かう。
*
「おはようございます。」
電車に揺られる事30分。
のどかな田舎町。
会社は、小さな工場。
一階にある事務所が、俺の仕事場だ。
俺を含め、従業員は、10人。
3年前まで30人くらいいたが、皆辞めたり移動を願い出て、関西方面に逃げ出した。
「おはよう、相変わらず真面目だね~。きっちりスーツ着てさぁ。どうせ、誰も来やしないんだから、楽な格好で来ればいいのに。」
社長は、いつもジャージにスニーカーだ。
理由は、いつでも逃げられるように。
「僕のポリシーですから。」
俺は、机に座りパソコンを開く。
今日は定時にきっちり上がって、スーパーに行きたい。
今住んでる場所には、スーパーもコンビニもない。
自販機は有るが、補充されてないので、無用の長物。
ただのライトでしかない。
スーパーは、さらに2駅先にある。
そこも、19時には閉まってしまうので、残業でもしようものなら、弁当もパンも売り切れてしまうのだ。
今住んでる所で料理はしない。もともと得意じゃないし、ガス屋があの地域から撤退しているので、ガスは使えない。
つかえるのは電気と水道。
何より、週に2.3回は呼び出しがあるので、疲れてしまい料理何かやる気にならない。
回復の為に一分一秒でも早く眠りたい。
*
「良かった~。今日は、なかなかいい弁当が買えた。」
帰りの電車。
携帯が鳴る。
「お疲れ様、スーパー行けた?。」
妻、さくらからのテレビ電話だ。
「うん、今日はなんと幕の内があったんだよ。ラッキー。陽菜は?。」
「ちょっと待ってね。陽菜ちゃん、パパだよー、おいで~。」
携帯の、画面に3歳になった娘が写ったが、ご機嫌斜めのようだ。
「ちょっと眠いみたいで、駄々こねてる。」
「陽菜~パパだよー。」
電車でこんな事が普通に出来てしまう。
何故ならこの時間誰も乗ってない。
いつも貸し切り状態。
禁止区域から10キロは、民間人立ち入り禁止、入れるのは、防衛隊のみ。
さらに20キロの住民は、立ち退き。
俺のアパートは、ギリギリ20キロを免れ、立ち退きはしなくてよいのだが、ほとんどの住民が逃げ出した。
禁止区域の中心は霞ヶ浦だった所。
3年前、隕石が堕ちたのだ。
大きさは、ちょっと大きな家一軒分くらい。
そこを中心にちょっと大きな地震くらいに揺れて、皆驚いたが、隕石だとわかりすぐに自衛隊や警察、消防が駆けつけて被害状況を確認しようとした。
が、その隕石から、謎の怪人が溢れ出てきて、日本は、大混乱に。
さらに驚いたのは、その怪人達を、追って来た謎の巨大生物が空から降りてきて戦いが始まってしまったから。
日本だけでなく世界も大混乱。
そうこうしているうちに謎の巨大生物が、怪人達の数の多さに力尽き、倒れてしまった。
残った力で巨大生物が、発光し、結界のようなものをつくり怪人達を閉じ込め、消えてしまった。
今千葉は、東の3分の1しか人は住んでいない。
茨城側は、縦に長い為福島寄り2分の1に人が住んでいるが、ここもまたゴーストタウンと化している。
妻と子供は、実家が、九州だったので帰らせた。
もちろん、俺も一緒に来いと、妻の両親は何度も説得してきた。
しかし俺は、仕事を理由にして行かなかった。
いや、行けないのだ。
(これがアニメとか漫画なら瞬間移動とか出来るんだろうけど…現実は厳しい。)
テレビ電話をしながら駅を出てアパートに、向かい歩き出す。
頭の中に、警報が聞こえてきた。
(…はぁ~ 、今夜もかよー。 )
「陽菜寝かしちゃいなよ、俺も、夕飯食べてまた電話するから。」
「…うん、そうする。夜、遅くなってもいいから電話ちょうだいね。」
電話を切るとアパートまで走る。
(まさかスーパーの袋下げていけないし。)
アパートに、つくと袋ごと冷蔵庫に突っ込み、急いでスーツを脱ぎ捨て、用意してある、ジャージに
着替えて、ごつめのスニーカーを履く。
「よし、行きますか。」
俺は携帯を開くと、画面で点滅を繰り返すボタンを押した。
【変身しますか?】




