6.アンチヒーロー
メインキャスター 山田 :「いや、最近怪人の出現率高い ですね、どう思われますか。田中さん。」
解説 元自衛官 田中 : 「昨日もおとといもでしたね。彼らかなり疲れている感じです。」
コメンテーター 元政治家 鈴木 : 「それも、これも、日本の武器が役に立たないからでしょ、まあ、アメリカもロシアもですけど。」
コメンテーター ヒーローオタク 桜木 : 「冗談抜きに、日本の、いや世界中の力を結集して早く巨大ロボ作るべきですよ!、基盤となるガ○ダムとかイン△ラムとかあるでしょ!」
キンコン
山田 「! 本日も、怪人出現情報が発令されました!画面切り替わります、こちら政府カメラですが…」
田中 「おい、あれ…いつもよりでかくないか?」
キンコン
山田 「あ、政府より、レベル5認定、緊急避難警告が発令されました。40キロ圏内にいる方、避難してください。」
鈴木 「冗談じゃない、俺は逃げる」
桜木 「あ、鈴木さん!、全く、ダイジョブですよ、なんだかんだ彼らが怪人を倒してくれますって。俺は最後まで、見届けますよ。」
田中 「…俺も、残るぞ。」
山田 「…お二人、さすがですね~、では!」
アナウンサーは、脱兎のごとく逃げ出し、それに続いてスタッフも何人かスタジオを出て行く。
桜木 「……まあ、仕方ないか、じゃあ俺の独壇場!。HEY世界中の皆!観てるかい!。司会者が消えたんでここからは、俺が皆にお届けしちゃうよ!」
田中 「……制限なし、自由だな。よし、好きにしゃべるぞ。」
桜木 「そう来なくっちゃ、田中さん!。うわ、映像解析したオタ友から、なんと、レベル5の大きさ8メートル32センチ、確かレベル4は、5メートルちょっとだったから、かなりデカイですよ。」
田中 「レベル1は、150センチくらい、レベル2は2メートルほど。で、レベル3が確か2メートル30くらいでしたよね。レベル4から半端ないですよね。冗談抜きに巨大ロボ必要レベルですよ。」
桜木 「あーもう、ガ○ダム動かして~!!」
来々軒のテレビが、キンコンを連発している。
と、同時に携帯も震える。
テレビは、アナウンサーと元政治家が逃げ出し、テロップは40キロ圏内に避難勧告が出されている。
『あれ、そういえば、来ませんね彼ら…』
『いつもなら、だいたいレッドが最初に来るのに、来ないなぁ?』
地面が揺れる。
『げ、炎吐いたぞ、レベル5やべー、半端ねぇー!』
『とうとう、そんなレベルになったって事ですね、あ!』
さらに地面が激しく揺れ、店内の食器がガタガタ揺れ、落ちて割れる。
『今の、ビームじゃないですか!すげぇー!、て田中さん!?』
テレビからまた一人姿が消えた。
『うわお、マジかよ、やったね、俺の一人電波ジャック!。俺は最後まで動かないよ!、早く来てくれ!俺らのヒーロー達!。みんなヒーローに応援メッセージ、俺のスマホに送ってくれ!アドレスは、これな!』
テレビからは、ヒーローへの応援メッセージが読み上げられ始めた。
「…はぁ」
誰かのため息が聞こえる。
「……行かないのか?」
親父さんがボソリと言った。
全員が親父さんに視線を向ける。
親父さんは、店員を見ていた。
「……」
店員は厨房の椅子に座って携帯を握りしめている。
来々軒に沈黙が流れた。
ガタン。
奥の席で座っていた男が立ち上がり、ポケットから財布を出しお金をテーブルに置く。
「ご馳走さま、旨かったよ。」
そのまま店の扉を開くと、携帯を操作する。
「…親父さん、明日は、スタミナつくもの…作ってもらえる。」
そう言うと、赤い光に包まれて消えた。
全員がその光景を見て、茫然としていた。
『あ、来ました、レッドです!!、待ってたぜ~俺らのヒーロー!』
テレビの画面にレッドが映り、雑魚を倒し始めた。
「…行かないのか?、おい?」
再び親父さんが、店員に話かける。
自分に言われているようで、むねが痛い。
が、体は動かない。
トゥルル
誰かの携帯が鳴る。
「どうした?」
携帯を手に一人が店の奥に歩いて行く。
しばらく話すと、戻って来てお札を二枚置いて、店の扉を開く。
「…親父さん、俺も明日スタミナつくもの欲しいな、唐揚げとか?、あとはいつものスープ、ニンニクマシマシで。」
扉が閉まる。
『あ、ブラック来ましたよ!、待ってたぜ!ブラック!やっちまえ!』
「…あいつもかよ、はぁ。…あんたもだろ、早く行けば?」
カウンターに座っていた男がラーメンの続きを食べ始める。
「…いや、俺は」
「いいんじゃない、絶対行かなきゃいけないなんて決まりないんだし、あんなのと戦うとか、バカだろ。俺はパス。」
そう言いながらチャーハンを食べ始める。
「お前イエローか、グリーン、いや、イエローだな。」
「そういうあんたは、多分ブルーだろ、タワマンの最上階に住んで金持ちぶってる。」
「なんで知ってる!」
「冷静に考えれば分かるさ、こんな所に住んでるの俺達くらいだぜ。出て行かないどころか、わざわざ住みに来る奴なんているわけない。ちなみにあのタワマンは、俺のテリトリーだから本来他の奴らは立ち入り出来ないんだよ。入れるって事は、そういう事だろ。」
「テリトリーって…」
「あそこ一度壊れてるの。あの変な巨人がさ、起き上がるのに、タワマンつかんだのよ!もちろんグシャ!」
「…そうなんだ…」
「あんなん無理でしょ。別にしがらみもなんもないし、何かもうどうでもいいかな、契約解消とか出来ないかな~。」
「…無理だよな、俺もそこまでしがらみないし…、いや恩はあるかな。」
ビールを飲み干して、立ち上がる。
「親父さん、俺は美味しいビールと、このチャーシューが一番お気に入りだよ。」
お金を置いて扉に向かう。
「明日来ないかも知れないけど、…用意だけはよろしく!」
扉を開けると、青い光に包まれて消えた。
『うをっ!ブルーです、ブルーが来たぞ!。グリーンはどうした??。グリーン!待ってるぞ!』
「くそ!なんなんだよ?馬鹿ばっかりだな!」
餃子に醤油をかけ、口に入れる。
「おい、苦戦してるぞ、おい」
店員は手に持った携帯を投げすてる。
「もう、無理だよ!」
「何言ってるんだ、頑張って行ってこい!」
「そもそも間違ってたんだよ。」
店員は、親父さんの、手を振りほどく。
「毎日毎日、親父はここにいるよ!確かにいるよ!。てもここから出られない、俺が、戦い続ける限り!永遠に。最初の願いを間違えたんだよ!」
店員は親父さんの足元にうずくまる。
「ゴメン親父!おれがあんな願いをしたから、本当にゴメン!」
店員は泣きながら親父さんに謝り続ける。
「…頭上げろ、俺は、幸せだよ。」
親父さんが店員の頭に手をのせる。
「嬉しかったよ、お前が跡ついでくれて、店を大事に思ってくれて。それだけで俺は満足だよ。孫の成長もみれて、嬉しいんだよ。むしろ、俺のほうが願うよ、ずっとこのままでって。でもお前が先に参っちまったな。すまん。辞めてもいいんだぞ。」
「…親父」
「誰も責めないよ。お前は頑張った。」
「…ゴメン、親父行ってくるよ。」
「え!行くの!なんで?」
「妻と子供の為に、あとみんなが美味しい食事を食べられる為に。俺が倒れたら、来々軒はなくなっちゃうからな。」
店員は、携帯を拾うと電話をかける。
「もしもし夏実、俺。テレビ電話にしてくれる。」
『どうしたの、避難してるの、ってまだ来々軒じゃない。早く避難を…』
「ゴメン、大事な話、お義父さん達も聞いてもらって。実は俺グリーンなんだ。」
『グリーン?』
「あの日店にたどり着いたんだけど、店は跡形もなくて。途方にくれてたら怪人と巨人の戦いに巻き込まれて、死んだんだ。」
『何言ってるの?』
「グリーンになる事を条件に店と親父を返して欲しいって、願ってしまったんだ。」
『…本当なの。』
「俺、もう行かなくちゃ。最後かもしれないから、ゴメン。」
『待って、パパ』
「果林」
『パパ、頑張って!グリーン大好き』
「果林、パパ頑張るよ。大好きだよ」
店員は、親父さんに携帯を渡し着ていた作業着を脱ぎ捨てる。
「じゃあ、待ってるよ」
そうこちらに向かって言って緑の光に包まれて消えた。
『グリーン!待ってたよ!、これで4人そろった!あとは、いつもの遅刻魔イエローのみ』
「…いや、行かないし。」
「行かないのかい?」
「親父、ラーメンもう一杯。」
「…いや、ゴメンよ。俺作れないんだよ。」
「なんで!」
「ほら」
親父さんの手がフライパンをすり抜ける。
「俺は、そうだな座敷わらしみたいなもんかな~、いや座敷オヤジ。俺が出来るのは、配膳と片付け、あと口出しする事だけだ。」
「なんだよ、じゃあ、あいつ死んだら飯おわりじゃん!」
「そうだな、あいつが死んだとたんに、来々軒は瓦礫に戻る。」
「はあー、この店も俺の快適な引きこもり生活の一部って事か…。」
立ち上がると、扉に向かって歩き出す。
「あんたは何か希望ないんかい?」
「…とんこつ…」
「とんこつね、わかった、メニュー増やしとくよ。」
親父さんが、入り口まできて俺の背中を思い切り叩いた。
「いて!」
「行ってらっしゃい。」
「背中は叩けるんかい!」
ため息を吐く。
「待ってろよ、とんこつラーメン!」
黄色い光になり飛んで行く。
『来たーーー、イエローーー!そろったーー!5人!』
*
「みんな行ったな。やっと5人の力が一つに…」
実は俺も使命があった。
バラバラな5人をひとつに、して欲しいと。
なかなか骨の折れる作業だった。
何せ店から出られないのだから、5人が店に来てくれるようになってからも被らない日々。
特にイエローが部屋から出ないからかなり難しい使命だった。
「…ひとつになったかな?今ので?」
うーん、ちょっと微妙だな。
「頑張れよみんな」
俺に出来る事は、見守るだけだ。
テレビの画面には、レベル5の前に立ちふさがる5人の姿。
彼らの姿が5色に光はじめ、画面がみえずらくなる。
あわてて、店の扉を開けて外を見れば、昼間のように北の方角が5色の光で明るく輝いていた。
「いったい何が!」
*
『なんだこの光は!眩しい!いったい現場で何が起こっているんだー!』
あまりの眩しさに、中継がスタジオに、切り替わる。
『いや、気持ちはわかるけど、映像追わないと!何かが…あ!光が小さく!、画面戻して!』
光が収まると、そこには何もなかった。
『あれ、戦いは?、終わったのかな?』
怪人もヒーローも誰もいなかった。
『いったい何が…』




