紫団子との邂逅。
「・・あらーっ!」
「あの、初めましてクラスメイトの久留米かっ...うぐっ...」
まぁ、こうなるだろうなとは思っていた。
「いやはやー可愛い子ばかりー!」
「えっと..僕は白木っ...ぅ」
何だが、いや...こうも、ピンクじゃない妹が欲しかったカレンの暴走具合は超特急が過ぎていた。
「お人形さんみたいんぃぃぃ」
「うぅ...く、苦しいです..」
「おい...カレン、その辺に...」
いつもは愛でる側の久留米が紫団子を引っ提げているダイナマイトに愛でられているのを少し新鮮に思いながら、親戚のおばちゃんくらいの距離感でムツゴロウしているカレンを諌める。
「ぁ...あのっ...僕、一応男なんですけど...」
「ぇ...そなの?...こんなの可愛いのに?」
もみくちゃにしながらサラッと白木の伸びた髪を三つ編みにしてサイドに着飾り、玄関の鏡の前へと白木を立たせる。
「わっ...い、いつの間に....ぁ」
「....」
いつもの雰囲気の違う白木と鏡越しに目が合った海道はクラっとしたのを揺り戻そうとし、思わず固まってしまう。
「あれれ...そっかぁ、清澄はそっちも。だもんね」
清澄の事なら霧雨ママくらいは知っているカレンはその様子に結構な事を呟く。
「「「っ!」」」
サラッとバラされた清澄、一瞬で腑に落ちた久留米、その言葉に嬉しさを滲ませる白木らは互いに目を見合わせる。
「!...そっち"が"?そっち、”も”!ですか?!」
「ふふふ...言い間違いじゃないわよ...ね?清澄」
カレンと海道を交互に見ながら余裕のない久留米は厳密に聞くと、カレンは久留米の肩を支えモキュモキュさせながら彼の前へと渡す。
「....」
「っ....あぁ、間違いではない。」
久留米は最後通告を受ける前の被告人のような表情で、縋るように彼を見つめ、彼ははぐらかさずにまっすぐに目を見て首肯する。
「っ...ふぅ、心臓止まるかと思いました...ぅ」
「ほんとだー、心臓バグバグだねー」
カレンは胸を撫で下ろしてそのまま座りそうだった久留米をバックハグしており、一向に距離感はバグっていた。
それから、すっかり自分家だと思っているカレンは彼らをリビングへ招き入れて、学校での清澄の話を聞いていた。
「・・清澄が不良?ないない」
カレンは紫お団子をフリフリとさせながら手を仰ぐ。
「まぁその...学校でトップ3の子たちを完封してしまったのもありますし...彼女らのファンも結構多かったので」
「....っ」
久留米がその噂の経緯を説明していると、彼の言われのない噂を気にしていたのか白木は彼の裾を掴み、まるで自分のことのようにやるせない表情を彼へ向ける。
「!...白木たちに怖がられてないなら、大したことじゃない」
強がっているわけでもないとわかるように、できるだけ声のトーンを下げて白木の天使の輪っかを撫でる。
「っ....うん。」
短くとも信頼が通じているやり取りに白木は撫でやすいようにしながら小さく頷く。
「ふふーん、白木ちゃんは清澄とどこまで行ったのかなぁ?」
「「「っ!!」」」
いい雰囲気になっている右隣の白木にしなだれながらそう聞くと、一瞬で空気は凍りついた。
「「...」」
白木と彼は互いに目を見合わせて、耐えきれずそらす。
「「っ!!」」
「...ふむふむ、正妻は春さんですか」
「そ...そうなの?海道くん」
「ぁ...っと....」
白木は彼に近寄り上目遣いで迫ると、彼はたまらず白木の頭を撫でてはぐらかした。
「っ...ムゥ...」
はぐらかされたなぁ...と残念に思いつつも彼の優しい手に絆されてしまうのを心地よく思ってしまう。
「うーん、なら....久留米ちゃんとはどこまで行ってるのかな?」
「っ...ひゃぅ...」
カレンは久留米の首元に息を吹きかけながら抱きつき、いつもはする側の彼女は虚をつかれて無防備に吐息をこぼす。
「おい...可愛がりが過ぎないか?」
「何ー?嫉妬ぉー?」
「何でもない。」
うざい絡みが始まりそうなのが醸し出し、さっさと話を切ろうとする。
「ちょー嘘嘘、あの清澄がある程度の距離感を許した子達なら大丈夫でしょ?」
「あのって...」
「!...その、カレンさんは海道くんとはどういう関係で...」
髪を整えて調子を取り戻した久留米はその辺りをはっきりさせたかった。
「それは...ん...あたし達ってどんな関係なの?」
「カレンは姉貴みたいなもん。」
「えー...私、姉っぽいこと全然してないけど」
そういえばその辺はあまり言語化してこなかった事から、彼に直接聞くと意識してなかった答えが来て拍子抜けした。
「まぁ、度々....怖い夢見たとかで泣きついて来てたしな」
「な!...それはっ...子供の頃の話でしょ」
鮎川さん家で泊まった時にゲストルームに駆け走ってきて抱きついてくるのは度々ある話であったが、当人はずいぶん昔の話だと思っていたようだった。
「この前だって、ホラー映画見て寝れなく...っ」
「ちょっ...もう、喋りすぎ」
あまりに格好悪い話にたまらずカレンは彼の口をバッテン印で塞いだ。
「悪い悪い」
彼は家族と同等の存在にしか見せない柔和な表情でカレンのしなやかな手をそっと掴んで離した。
「「....」」
その距離感といい彼らはカレンと彼の仲の良さに入り込めそうになかった。
「いやはや、私妹が欲しかったんよねー、お人形さんみたいな可愛い妹ちゃんが」
「うふぅ....」
お人形さんという単語から、過去の嫌な思い出をフラッシュバックして久留米は少し苦い顔をする。
「おい、その辺にしとけ」
もみくちゃにしながら久留米の髪型をツインテールにさせたカレンの手を取って、彼女から引き剥がした。
「ぷぅ...」
「うぅ...助かりました。」
「大丈夫...じゃないな...カレン。紅茶入れてくれ」
「えー...分かったー」
ちょっといじりすぎたと内省していたカレンはキッチンの方へと向かった。
「・・っ...美味しいですね。この紅茶」
「なんか...その、心がスゥーッとするね。」
「ですです。」
「ふふーん、茶葉によって最適な紅茶の淹れ方があるのん」
「凄いです。」
「あぁーん...そんな褒めてくるとまた無茶苦茶したくなるぅ」
彼女のいれた紅茶は好評で、久留米の容態も回復して寿命が10年は伸びそうな笑顔がカレンの心を打ち抜き手をワシワシし始めた。
「カレン。こっち来い」
「なっ...ムゥ、へいへい。」
ちょっと目に余ることが多い点から、彼はカレンを自分の隣に座らせて自分が久留米や白木との境界線になるようにした。
ーーーピーっ...ぴーっ...
「え、なんの音ですか?」
「?」
すると、机に置いていたタブレットから通知音が鳴り響いた。
「あー...そういえばだったか」
カレンが家にいる用事の一つとしてそれがあった。
「おー、どうする?清澄ぃ」
タブレットを覗き込むようにカレンは彼に顔を近づけて、やはり親しげに彼の顔を上目遣いで見上げる。
「いや...今日は」
「えーいいじゃん、いつも一緒に入ってるんだし」
「っ...その話詳しく!!」
「な..ぇ...」
怪しい会話に久留米は前のめりに追求するが、白木は色々と想像してしまってショートしそうになっていた。
「屋内プールの自動点検が丁度終わったから、どうしようかなと」
「....はい?」
「???」
彼の家には本当になんでも揃っているようだった。
日本国召喚獣管理省関東庁召喚獣総合事案即応科。リリースしました。




