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終業式。


「ーーーー・・本当にすまない。」


登校途中、妙によそよそしい久留米らと合流し校門へと到着すると、待っていたらしい虎野に天堂の痴漢冤罪事件の事で謝られた。


「...あー、なんだ。気にするな」


なんか俺が嵌めて彼女をこう言った状況に陥らせているようなそんな気がしてならず、妙な後ろめたさを感じ、それをかき消すように短く対応した。


「そうですよ、気にすることないですよ。京奈ちゃん」


「し、しかし...」


「海道くんの評判も天堂さんが正体を明かした時点で払拭されてますし」


「天堂にはもう謝って許してもらったんだろ?」


「あ、あぁ..」


いつものオラオラしている彼女とは程遠く、八の字顔の柴犬のようになっていた。


「ならこの件は終わりだ。」


「っ...あ、あぁ...」


じわじわと頭が下がっている虎野の頭を大きな手でポンポンすると、彼女の罪悪感も少しは軽くなったようで、アホ毛が尻尾のようにフリフリしていた。


そうして、教室へと到着すると登校最終日というのもあってか、皆冬休みは何をするだの、どこへ出かけるなどで浮き足立ちながら、終業式のため体育館へと移動した。


「ーーー・・えー...今年も残りわずかとなりました。えー...今日の朝までに締めの言葉を決めたかったんですが、中々良いのがなかったので....とにかく、来年も皆さんが健康に安全に過ごせるように我々一同尽力したいと思います。えー...私からは以上となります。」


ーーーーパチパチパチパチ


毎回5分でも1分でもなく、きっかり2分程度で終わる毎度好評の校長挨拶が終わり、表彰式へと移る。


『...次は、特別学生への表彰になります。対象の生徒は壇上へとお上がりください。』


この学校でも片手で数える程度しかいない特別学生らが、壇上へと上がる。


「....」


年一の表彰を受け取らないと特別学生としての資格を受領できないため、渋々参加していた海道は壇上で全校生徒の視線を一線に受ける。


「あの人が不良グループを壊滅させたとか、あのガタイだったら納得だわ...」

「え、あの子一年?やば、めっちゃタイプ」

「えーでも、良い噂聞かないよ?楢崎と虎野に決闘ふっかけたとか」

「あんな逸材が...我が部に迎えたい...」


(...帰ったら、何のゲームしよ)


そんな中、彼はいつもの涼しい顔の裏で大層な感想を抱かせている今の身体スペック前と変わらない事に耽っていた。


そうしていると、見知った白い天使が隣へ並ぶ。


「....!」


「ふふっ...来ちゃった。」


白木は彼のキリッとした目を少し見開かせたのを満足げにしながら、この時まで内緒にした甲斐を噛み締めていた。


「...凄いな」


壇上の後ろに控えている賞の盾から、彫刻の分野で賞を取ったのが垣間見られた。


「へへへ...結構頑張った。」


持てる時間を全て費やしたのか、1ヶ月前の記憶を手繰り寄せると気づけば透き通った純白の髪は少し伸びており、ウルフカット未満くらいの長さでより神秘的な風貌になっていた。


「....っ」


「....!...ぁ...ふふっ」


思わずいつものようにステージライトで天使の輪っかが浮かぶ白木の頭を撫でかけるが、人前すぎるためキャンセルすると、それを感じた白木は撫でやすいようにしていた頭を上げ、少し申し訳なさそうにしている彼と目が合い切ない笑みを浮かべる。


スポーツの分野、課外活動の分野、学業分野、美術分野と授与が終了し、短い締めの言葉が進む。


『...今年度も各分野の特別学生らが...』


「...海道くん。」


「ん?」


選考委員会の人が話す中、白木は彼へと顔を近づけて呼び寄せる。


「...これからは、さ...」


彼だけに見えるよう賞の板で顔を隠し、白木はこそばゆく頬を赤らめながら、涼しくも暖かく優しい彼を見上げる。


「あぁ...」


隠していても、それでも誰にも見せたくない白木を見つめる。


「もっと..その.....」


「..?」


言いたいことは決まっているのに真剣な眼差しの彼を前にして言い方をあぐねている白木を、彼はできるだけ焦らせないようにして柔和に迎える。


「...一緒に授業サボれるね。」


「!...あぁ、楽しみだな。」


洗礼を浴びせるだけで改宗させるような笑顔と脳髄に伝う天使のさえずりに、彼は既に陥落していた。


終業式後、担任からのあまり羽目を外しすぎないようにとの話を最後に解散となった。


「・・海道くん。お昼食べよ」


「っ...あ、あぁ」


つらつらと下校していく生徒もいる中、白木から誘いを受け上る口角を手で押さえながら了承した。


「私も一緒に良いです?」


「あぁ、昼持ってきたのか?」


横からぬるっと現れた久留米が手縫いの弁当袋を両手で持ちながら、一体それで何人の男子を屍に変えてきたのかわからない上目遣いで聞くが、見慣れてしまっていた彼には効果がなかった。


「ムゥ...はい、ではいきましょー」


そのことに不満げながら、彼の腕を掴み白木もどさくさに紛れて彼の袖を摘み、特別棟の空き教室へと向かった。


「・・こんなところがあったんだな..」


「えぇ、時々文化部の方が使われているらしいです」


「ふぇー..そうなんですね」


「なーち、口元に粒が...」


青鷺はおにぎりを頬いっぱいに頬張りながら感心していると、使い捨てのおしぼりでそれを取っていた。


「へへ....すみません」


(...兄妹みたいだな)


ーーーー・・へへ...あーと、にぃに。


微笑ましい様子を横目で見ていると、幼稚園位か危なっかしかった頃の記憶が重なる。


「.....」


「海道くん..どうかした?」


ブリトーを掴んだまま痛みをはらんだ懐かしさに耽っていると、隣の白木が心配そうに小声で囁く。


「ん...いや、なんでもない。」


拗れて固まってしまった靴紐をそのままに、ブリトーでソレをかき消した。


「飛鳥ちゃんのお弁当かわいいですね。」


一方、久留米は栄養満点な天堂の弁当に目がいった。


「そ、そうかい?」


完璧で板についていたとはいえ、前の無理して気を張ってない天堂は妙に仕草や雰囲気が女の子らしく、王子様の破片は残りつつも、王女様へと見事に変容していた。


「このミートボールにかかってるのはなんですか?」


「あーこれはリンゴンベリーソースで、酸味があるジャムだよ。食べてみるかい?あーん」


青鷺が興味ありげにそう聞くと、天堂は説明がてらに彼女のお口にミートボールを入れた。


「んっ...うんうん....結構さっぱりしてますねー!」


「そうそう余計なもの入ってないからね。」


「もしかして、天堂さんのご両親はスウェーデンの方?」


「うん、そうだよ。母がスウェーデン人で、父が日本人だね。」


ハーフっていうのは分かってはいたが、その色素の薄い雰囲気や金髪蒼瞳の御伽噺の世界からそのまま出てきたような様態とそのルーツは合致していた。


「へぇー、私中学の頃1年くらいスウェーデンに居たわよ」


「えっ?!そうなの?僕も中学の時はスウェーデンだったから、どこかですれ違ってるかもしれないね。」


父が外交官であるソフィアは天堂も居た時期にスウェーデンに居たようで親近感を覚えた。


「えぇ、まぁ....丁度夏が終わった時からだったから、殆どお家か学校かだったけど...」


「あー、そうだね。北欧の冬は住み慣れた人でも堪えるからね....ははは..」


「うーん...人も良くていい所だったけどね...」


(....あんま経験したくねぇ)


白夜と極夜は知っている知識からでもその厳しさは計り知れず、傍目で聞いていた彼は出来れば体験したくないと率直に思っていた。


「日本の四季を経験してからでは離れられないわよね。それに清潔で安全だし」


「うんうん染みるねー」


彼女たちは海外生活を経験してから日本の当たり前を染み染み感じていた。


(仲良さそうだな...)


初めは天堂がこの仲間内に馴染めるか心配ではあったが、共通点が多いソフィアと相性が良いようで円滑に仲を深めているようだった。


「....」


まぁ、その辺は問題ないとして、今は俺が座っている位置は色々と勘違いされそうな点が気になり、視線を左右に流す。


「ん?...ふふっ、いいご身分ですね。」


ふかふかの茶革ソファーの真ん中に彼が座っており、両隣には白木と久留米ががっちり両脇を固めており、昨晩読んだ歴史本も相まって側から見れば側室を侍らせているようだった。


「勘弁してくれ」


雑誌の裏表紙に掲載されている成金みたいなイメージが思い浮かび、思わず顔を顰めた。


「....嫌なの?」


すると、白木さんがちょこんと彼の服を摘んで頬を膨らませながら、上目遣いで彼に聞いた。


「っ....いや、まぁ...何だ....その...なぁ...」


破壊力抜群の白木の甘え顔に撃ち抜かれた彼は口元を手で覆い、答えあぐねて悶えていた。


「...海道くんはいつでも、この部屋にいる子たちを好きにして良いんですよ」


そして、それに乗じて久留米は彼の無防備な耳元で、かの皇帝も撃沈してしまうかのような甘い誘いを囁く。

そして、彼の視座にはチラチラとこちらの様子を見ている白髪の妖精に、こちらと目があってポニーテールをフリフリと尻尾の様に振らせている楢崎、髪をかくし上げて横目でこちらを見ている青鷺、もうすっかり女の子になっている金髪青眼の元王子らが映っており、頭がクラっとする本能的な欲に呑まれそうになった。


「スゥ....お前なぁ...」


が、生物的に強くなった彼の強過ぎる理性は2呼吸でソレを封じて、いつもの涼しい顔で久留米を諫めた。


「....うーん、手強いですねー」


今までで一番の好感触であったがその兆しは一瞬で、久留米は目を細めながら彼の難攻不落ぶりには感服していた。


「.....海道くん。やっぱり、僕ら以外の人がいるの?」


そして、がっつり久留米の悪魔の囁きを聞いていた白木は一向に下心が見えない彼から、そう言った体だけの関係を持った人を邪推した。


「「「「......っ?!!!」」」


直接的でなくとも大体の意味を理解した一部の彼女らは一斉に彼の方を向き、その返答を待った。


「....?...あぁ、まぁ一人関わりがあるのはいるな」


だが、海道くんは彼女らに紹介していないクリーンな関係の紫色のお団子を提げている人を思い浮かべる。


「...やっぱ...朝の...」


「そ....そっかぁ....そう、だよね...」


「.....うん。」


想像力豊かなソフィアや天堂、白木は彼は割り切った関係の人としっかり欲を発散しているのだと嫌に合点が言っていたが、久留米は冷ややかな笑顔で彼の腕を掴んで詰め寄ってきた。


「海道くん。私...聞いてないですよ?」


「関わりってどう関係だ?」


「ん?なんの話ですか?」


楢崎と知らんぷりしている青鷺は聞いてはいたものの、いまいち掴めずにいた。


「ん、いや昔から親ぐるみで付き合いのある奴で、姉貴みたいな...」


「うぅ...年上...」


「どうりで...」


「....幼馴染ぃ」


すでにその辺りの主にピンク髪女は早々にレースから退場したが、ここに来て本命よりのダークホースであった。


「....海道くんは年上がいいの?」


白木は射抜いたモノを何もかも飲み込む深く赫い瞳を彼へと向けて、駒を進める。


「「「っ!!」」」


皆が彼の答えを待ち、はぐらかせられない空気の中、今までそういうのに関係のない人生だったため、間の中で考えてはみる。


「...年上か...(精神年齢で言えば37だから...ただ、37以上だと母親とかの年代...それはそれで若い肉体に引っ張られてるせいか、どこからが年上か)....わからん。」


2秒くらい思案しても、初恋の人とかいない人生だったためそんな答えになってしまった。


「つまり、年上でも年下でも同年代でも特に異論はないと!」


「「「うんうん!」」」


年齢でのマイナス査定はないとそう受け取った彼女らは食い気味に詰め寄る。


「っ...あー...年下、あんまりタッパが小さいのは無いな。同年代か年上からだな」


両サイドと前方付近から圧をかけられている彼はソファーの背もたれに引きながら、しいてのNG

を呟く。


「なっ...163cm45kg163cm45kgは嫌ですか?!」


青鷺は彼のタッパの好みを聞き、漁師の競りのような勢いでこちらに身を乗り出す。


「っ...いや、そこまで拘りはない...ただ、俺からしたら、身長差がありすぎると子供に見えるってだけで」


「うっ...私最近カフェオレなら飲めるようになりましたからぁ!」


別に青鷺に向けられたわけではない子供という単語に反応した青鷺はそれを払拭するためのカードを盛大に切った。


「「「....」」」


「か...」


「「「可愛いぃぃ」」」


「え?...っぅ..」


彼女の言葉が教室中をこだまし、一瞬ジーンとする静寂に包まれたが直ぐに、彼女の末っ子気質は彼女らを魅了し青鷺は4つの山に埋もれた。


「よしよし...偉いな。なーち」


「良い子、良い子」


「うぅ...子供扱いしないでくださいー!うにゃ...ぅ...ゴロゴロ...」


4つの山に埋もれながら、久留米と楢崎に毛繕いをされている青鷺は抵抗しつつも、喉を鳴らしながら徐々に手懐けられていった。


「ふぅ....(なんとか逸らせたか)」


「....後で、好みの話の続き...しよっか」


詰問されそうな所を免れた彼は一息吐いたが、顔をこちらに寄せて耳元で囁きをついばむ真っ白い天使からは逃れられなかった。











日本国召喚獣管理省関東庁召喚獣総合事案即応科。リリースしました。

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