生き残りの獣人とマッドな学者について その2
俺たちを威嚇してくる少女を見て、俺は仕方ないだろうなとため息をついていた。
だってそうだろう?
途方も無い化け物が自分が住んでいた町を破壊したりして、目が覚めてみれば見たことも無い奴が自分の近くに居るのだ。
誰だって警戒するに違いない。
ここは少しずつ敵意が無いことを示して・・・。
俺がそう思っていると言うのに、少女へ突撃する研究者。
少女もさすがに虚を突かれたのか、対応出来ずに慌てているが俺も焦っている。
これで少女が更に警戒を強めるなり、逃げ出したりしたらどうするのだ。
少女は地元民だろうしこの森にも詳しいかも知れない。
そうなれば俺たちから逃げるのなんて造作もないはずだ。
少女は抱きつかれたままの姿勢で俺を見てくるが俺にはどうにもしてやれなさそうだ・・・。
彼女が落ち着くまで我慢して欲しい。
彼女が落ち着くまで1時間ほどの時を要した。
その間に俺と生物兵器たちは協力して光学迷彩幕を周囲に張って、奴らからの隠蔽を行っていた。
あれほどの高レベルモンスター相手にどれだけの効果があるかは分からないが無いよりはマシ位に思っておく。
疲れ果てた様子の少女は驚いたことに俺たちの言葉を話すことが出来るらしい。
意思の疎通が簡単に出来るのは有難いがなぜだろうか。
少女によれば、数百年前にジェイ軍なる集団が現れてこの辺りで圧制を敷いていた領主を倒してくれたらしい。
それだけではなく、その圧倒的な武力を背景に一帯の永久自治権まで王に認めさせたと言う。
言葉は彼らに感謝した住民たちが教育の必須項目として今に伝わっているとの事だ。
・・・ジェイ軍て、もしかして自衛軍の事なのか?
数百年?
どうしてそんなに年代が離れたんだ・・・物理的にあの渦に飲み込まれた者同士、近くに固まっていた者が同じ年代に跳んだという事なのだろうか。
いや気にするべきはそんな事ではない。
気にすべきは・・・少女を甘やかしまくっている彼女かもしれない。
俺としては解剖するとか言い出さなくて良かったとは思っているが、イマイチ腑に落ちないな。
さりげなく聞いてみると彼女としては少女のような可愛い猫耳少女を解剖なんてとんでもないと憤慨しているようだった。
おかしい。
明らかにいつもの彼女の発言ではないように思える。
いつもなら「未知がここにあるのに躊躇う必要性がないだろう?」なんて言いそうなんだが・・・。
俺が首を捻っていると、少女の様子が徐々に変わっていくのが分かった。
何も無い空間を凝視していたと思ったら、毛を逆立てて警戒感を顕わにして俺たちにも注意を促してくる。
何事なんだ!?
少女が空間を舐める様に駆け、鋭い爪を横に一閃すると何かが移動するような気配がした。
そして徐々に現れる何者かの姿。
俺も知らないモンスターだ。
まず顔が多い。
10や20では無い。
それが360度あるようにしか見えない・・・老若男女の顔が多数ある。
そして分厚い魔道書らしき本を手にしている。
そいつはダンタリオンと名乗り、自分には敵意が無いことを告げてきたが警戒は解けない。
当たり前だ。こんな威圧感を叩き付けられたら安心なんて不可能だ・・・。
そんな俺たちの様子を見て、ダンタリオンは微かに苦笑して見せた。




