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【第5話】環境確変(プラネット・リセット)、大炎上の火星

ズズズズズズズ……!

足元から、これまで経験したことのない不気味な地鳴りが響いていた。

スサノオ・ドリルがオリンポス山の地下数万メートルに達し、マグマ溜まりの「蓋」を電磁プラズマ爆発で消し飛ばしてから、わずか数時間後のことだ。

『警告:オリンポス火山、超巨大噴火(スーパーエルプション)の兆候を検知』

『大気組成の急激な変化が始まります。全プレイヤーは直ちに避難エリアへ退避してください』

「凪くん、シミュレーション通りの圧力が来てる! 早く逃げないと、ここごと吹き飛んじゃう!」

奈美が俺の腕を引っ張る。

「がっはっは! 最高の爆発だ! だが余韻に浸ってる暇はねえ、溶岩チューブへ飛び込むぞ!」

須佐さんが俺と奈美を巨大な両腕で抱え、あらかじめ俺の脳内マップで特定していた、地下の強固な天然の洞窟(溶岩チューブ)へと滑り込んだ。

その直後だった。

ドオオオオオオオオオオオオオオン!!!!

鼓膜が引きちぎれんばかりの爆音が火星の大気を揺らした。

オリンポス山の山頂から、夜空を焦がすような真っ赤なマグマの柱が噴き上がり、それと同時に、地下深層に数億年間封印されていた莫大な量の「メタンガス(CH₄)」が、爆発的に大気中へとブチまけられた。

「始まったな……!」

洞窟の隙間から外を見上げた俺は、その光景に鳥肌が立った。

噴出した大量のメタンは、火星の大気と混ざり合い、静電気の火花をきっかけにして惑星規模の「大爆発」を起こしたのだ。

赤い星が、一瞬で眩いオレンジ色の炎に包まれる。火星全体が燃えている。

強烈な熱波が地表を焼き尽くしていく。だが、その熱こそが、動画で最大の壁と言われていた土壌の毒「過塩素酸塩」を完全に熱分解し、ただの塩と酸素へと変えていく「大洗浄(デトックス)」の光だった。

さらに、メタンが激しく燃焼したことで、化学反応によって膨大な量の「水蒸気(H₂O)」が爆発的に生成されていく。

炎に包まれた火星の空に、今度は数万メートル級の巨大な積乱雲が、星全体を覆うように急速に形成されていった。

「奈美、散布装置が起動したぞ!」

「うん! キノコの胞子が、爆風に乗って赤道全域へ広がっていく……! それと、上空の火山灰に向けて『ケイ素分解菌』のミサイルも全基射出完了!」

奈美が端末を叩く。空中でバクテリアが火山灰のケイ素をナノレベルで分解し、灰が太陽光を遮る前に、可溶性の栄養分として地表へ落とし始める。

ゴロゴロ、ピシャアアアアアン!!!

激しい上昇気流のなか、火星の歴史上初となる、数百万発の「稲妻」が地表に向けて狂ったように落ち始めた。

燃え盛る炎、降り注ぐ豪雨、そして空を引き裂く落雷。

まさに「稲妻の語源」の通り、雷が空気中の窒素を固定し、最高の肥料に変えて大地へと流し込んでいく。

「開拓率、急上昇中……!」

俺の視界のUIが、狂ったように数値を更新していく。

『火星開拓率:0.15% → 15.40% → 38.90%……』

「耐えろ、みんな! この地獄の後に、俺たちの新しい世界が始まるんだ!」

俺たちは激しく揺れる地下洞窟の中で互いの手を握り締め、惑星が生まれ変わるための「産みの苦しみ」の嵐が過ぎ去るのを、じっと待ち続けた。

(第6話へ続く)

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