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合否の結果

「おや? もうこんな時間ですか」

 無趣味と言いつつも、漫画趣味確定のトオリさんが腕時計を確認する。

 ほとんど漫画設定の話ばかりしてたな。

 しかもこの世界から見た異世界の話で、オレからすれば日常のあるあるを延々と喋っていた感じだ。

 でもこの世界の話をされても全くついていけないから、それは助かったな。

 でもそれがきっかけで、最終的にトオリさんの『心眼復活』の手段として認められなければいいけど……

 周りから見ても仲良く話しているように見えただろうし、オレも漫画の話なら楽しく話はできた。

 さて、トオリさんの目的は一旦置いといて。

 いつもなら、ここから加速して何か変なことに巻き込まれるけど、今回はまだ何もない。

 お嬢様の時は買い物が終わろうとした時点で、第2第3のお嬢様の買い物が発生した。

 ナカザワさんは水着で魔導植物追いかけ始めるし、リリィさんはアパート1棟ぶっ飛ばすし。

 油断しちゃダメだ。

「そろそろ帰りましょうか。私はとてもいい休日が過ごせました」

「え……」

 なにもない、だと?

「おや? その反応は、この先を期待しているのでしょうか?

 でもそれはもっと仲良くなってからにしましょう。

 今日は最初に言った通り、歩くだけですよ」

「い、いえ……そういうわけでは……」

 姉系に関わると、毎度毎度オチがつくのだが、今回は平和回?

 いや、まだ終わってない。家に帰って寝るまでが危険地帯だ。

「では帰りましょう。ハナに言われた水棲植物は手に入れられませんが、今は水の上も歩けませんしね」

「……水の上、歩けたんですか?」

「研ぎ澄まされた魔力制御なら可能ですよ。

 ちなみに、ハナの場合は並外れたパワーでゴリ押しで水の上を駆け抜けますよ」

「そうなんですね……」

 トオリさんは言いつつ笑うが、それを聞いたオレは引いてしまう。

 地方支部でこの化け物揃い……これが本部の人間となったら、新幹線と同じ速さで走る人がいるんじゃないだろうな?

「ところで、端的に聞きますが、オレは合格ですか? 不合格ですか?」

 ここではっきり不合格を突き付けられれば、今後の憂いは1つなくなる。

 まぁ男としても失格と言われているようなものなので、素直に喜んでいいのかは迷うところではあるけど。

「うーん……保留、といったところでしょうか」

 とりあえずセーフ……かな?

「ただ、魔法のない世界、いわゆる『異世界』に関する漫画の話で盛り上がったのは得点高いですよ」

 そりゃオレが住んでた世界だもの。共感するものは多いよ……

「ただ、森の中にも入らず危ない目にも合わなかったので、実力的なところを測れなかったのは残念でした」

 よかったぁ。森方向を全力拒否して。

「つまり、合格寄りの保留です。次回も楽しみにしていますよ」

 …………

「えと……改めて聞きますけど、合格したら何をするんですかね?」

「私の力を取り戻す糧になってもらいます。

 さ、もうすぐバスの時間のはずです。

 ここは1時間に1本しかないので、少し急ぎましょう」

「……はい」

 糧ってなに? 餌? なにされるんだ?

 それが役割なら生かさず殺さず監禁されるとか?

 やばいぞ……トオリさんの目は冗談を言っていない。

 ……帰ったらトオリさんと仲が良さそうな、ナカザワさんに相談してみようかな?

 ナカザワさんはナカザワさんであまり関わりたくないんだけど、監禁されるよりマシかな……

 帰りのバスの中、トオリさんはずっと目を瞑っていたが、眠っているわけではなさそうだった。

 いわゆる瞑想ってやつだろうか?

 何か考えているのか、逆に何も考えずリラックスしているのだろうか?

 なんかもう『心眼のトオリ』って聞いてから、目を瞑っているだけでも怖いんだけど……

 オレがビクビクしながらバスの中で眠れず過ごしていると、いつの間にか討伐協会に到着していた。

「今日はありがとうございました。

 約束通り報酬は後日支払うので。

 それでは、また」

 バスから降りると、トオリさんはそれだけ言って一礼し、協会内には入らず多分帰っていった。

 ……とりあえず即決じゃなかったってだけで、アウト寄りのセーフといったところか。 

 オレもこのまま帰りたいところだけど、リリィさんのこともあるし、とりあえず協会に入るか。

「おっかりぃ。楽しかった?」

 すると、植木鉢を逆さまに持ったナカザワさんに遭遇してしまった。

 でもその植木鉢。中に土が入っているように見えるけど、どうなってんの?

「正直言うと、心労度がヤバイです……」

 ちょうどいいからトオリさんの相談でもしようか。でもその手に持つものを見たら、変な手伝いとかさせられそうだしなぁ……

「はは。サナは今日もいっぱい『設定』の話をしたみたいだねぇ」

「? 設定の話、ですか? 確かに漫画設定の話はたくさんしたと思いますけど」

 トオリさんの話す漫画の話は、内容に触れることも多かったが、内面の設定に触れる時間の方が長かった気がする。

 確かトオリさん自身もそう言っていたっけ。

「違うよぉ。

 サナの休日の過ごし方は『何かの設定になりきって過ごすこと』だからね。

 前は『右手が疼く』設定だったよ。それで友達が心配してたけど、教えてあげたらドッと疲れたみたい。

 心配損だ、ってね」

「んな……」

 まさかそんな……それって中二病ってやつじゃ……こっちの世界にもそんな人が……

 って、漫画でも定番の人物設定だよな。どんな漫画でもだいたい1人はいそう。

「だから最近は休日に付き合ってくれる友達もいなくてねぇ。

 だから『デート』を装って依頼料を払ってまで『なりきって』るんだよ。

 物好きだよね。そこまでいくと尊敬しちゃうよ」

 ぶっ飛び人間のナカザワさんにそこまで言わせる、中二病トオリさんて……

「あぁ……そうだったんですか……」

 それを聞いたら、確かにドッと疲れが出てきた。

 確かにその友人が言うように心配損だ。

 そりゃ糧になってもらう、なんて言われたら全力拒否するぞ……

「で、コウキくんはどんな『設定』だったの?」

「え……あぁ『心眼のトオリ』ってやつでした。

 その時代はすごく強かったけど、支部長に治療されてからは弱くなったそうで。

 確かに今言われてみれば、漫画でもありそうな『設定』ですよね。

 びっくりしましたよ。やっぱりトオリさんの本業は事務なんでしょうか?」

「え? その話は本当だよ」

「え?」

 安心したのも束の間。

 ナカザワさんの言葉を聞いて、オレの中の思考が停止した気がした。

「いやぁ、強かったねぇ。

 一般討伐員じゃ手も足も出なかったよ。

 遠距離攻撃の魔法や魔銃は当たらないし、剣より鋭い手刀でしょ。それに物理型魔銃で銃撃しても、弾丸を指2本でつまんじゃうし。

 飛行魔法を使わなくても、この建物の屋上までひとっ飛び。

 でも敗因だったのは、私がせっかく手に入れた新種の魔導植物が入った瓶を割っちゃったことだね。

 もう久々に怒っちゃったよ。

 ちょっと省略するけど、それから全力で羽交い締めにして、支部長の妙案で盲目回復試験薬を使ったら、アラ不思議。

 目が見えるようになった途端、すんごい弱くなっちゃったんだよね。

 あの時のサナの慌てようといったら、今思い出しても笑っちゃうよ」

 ナカザワさんはそう言いつつ、くすくすと笑うが……

 なにそのでたらめな強さ……

 そんな人の糧? 餌? 監禁? 合格よりの保留?

 漫画の話で盛り上がってる場合じゃないよ……なんとしてでも逃げないと……

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