5 独り言? いやいや、一人作戦会議だよ
僕は甘いものが好きです。
プリンプリンなプリンも、メロンメロンなメロンも好きです。
あぁ、かぶりつきたい。
食いしん坊な僕。ジリアードです。
ランチはカフェテリア形式です。
お肉と野菜ちょっと。
あとはケーキと生クリームもりもりにしようっと。
席に着く僕。
正面にはガン見してくる王女。
いやちょっと、乗り出さないで。近いから。あと瞳孔開きすぎ。
僕の食べ残した海老の尻尾が消えている。
そこの騎士令嬢、しれっと通り過ぎようとしてるけど口もごもごしてんの見えてるからね。僕でなきゃ見逃しちゃうね。
足元には何故か床で食事しようとしてる侍女。
え、その首輪まじ? ぼく、お前のせいで友達いないんだよ?
地獄のランチタイムを終えた僕。ジリアードです。
午後の授業は実践魔法学(中級)です。
今日の授業内容としては、風魔法を使って卵を浮かせる。それだけ。
意外と難しいんだよね。生卵って重心安定しないし、強すぎると割れたり吹き飛んだりしちゃうの。
繊細な魔力コントロールで一定の量の風を起こし続ける。
ただ火の玉飛ばすよりずっと難しいんだよ。
まぁ、僕にかかれば朝飯前なんですけど。
空も飛べちゃうからね。
と言うわけで今僕は新しい魔法の開発に忙しいの。
それはね、転移魔法。
やっぱり転移魔法は必須だよね。
何に使うか? そんなの決まってるじゃない。
夜中に女の子の部屋に遊びに行くのに使うんだよ。
木に登って二階の窓へジャンプなんてもうしたくないし、飛行でも見つかる可能性はあるでしょ?
相手の部屋に直接行けるなんて、便利極まれりでしょ。最高。サンキュー。
空想上の産物だとか、理論上は可能だとか。色々な説が流れてるけど、要はそれを実現できた人はいないわけ。
そんなの出来たら、前世でパパッと魔王城まで行ってたよね。
体をナノサイズまで分解して、風魔法で運んでから再構築するだとか。
任意の場所に新たな自分を作り出して古い方を処分するだとか。
今んところ発表されてる論文はそんなのばっか。正直異常だと思うよ。僕は。
要は空間収納の応用でしょ? 仕舞った体を別の場所で取り出せば良いわけだ。
空間自体は生き物が長期滞在出来る環境ではないけど、瞬間的移動であれば影響は出ないはずなんだよ。理論上ね。
それを生卵で実験してるの。
デスクの端から端へ。なかなか上手く出来たよ。後は生き物で実験してみないとね。
なんでこんな簡単な事誰も思いつかなかったんだろうね。
あ、そっか。空間収納は僕のオリジナル魔法でした。
オリジナルっていうか、生まれ変わり特典の副産物かな。
こういう魔法系の実験とか考察が楽しくてしょうがないの。職業柄かな。
え? 僕の職業? 言ってなかったっけか。
今はね、賢者やってるよ。
死後の世界まで行って、悟り開いちゃったからね。
色々わかっちゃった感じなの。
まぁ、生まれ変わってから、悟りについてはあやふやな記憶しかないんだけどね。
あ、賢者ってきいて惚れた?
賢者ってなんかインテリっぽい。
脳筋よりインテリのがモテる気がするんだよね。メガネかけようかな?
偏見? そう。
さて、転移の実験が済んだので、生物での転移について考えようかね。
なんか適当な生き物でもいいけど、なけなしの良心が痛む気がしないでもないんだよなぁ。
え? クロエを使う?
それもちょっと考えたよ。自称奴隷だし。別にいいかなって。
でもさ、これで万が一傷でも負わせたらどうなると思う?
責任とってとか言われそうじゃん。僕の考え付かないような恐ろしい要求されそうじゃん。
てかクロエなら、わざと傷を負ったりとか普通にすると思う。
やだ恐い。
なんとなーく行き詰まったし、授業時間も余って暇だから、教科書開いてみようと思う。
こう言う時は初心に帰る、大事。うん。
空間収納から教科書を取り出す。
あ、使用済み卵は適当に浮かせてます。ついでにちょっと熱めの風魔法にしてるから、いい感じに半熟になるといいなぁ。
卵浮かせつつ教科書開いてたら真面目に授業受けてるように見えるよね。うんうん。
教科書の隙間から、ひらりと紙が落ちてきた。
手紙? ピンク色の小花が咲いた可愛らしい便箋だ。
もしかしてラブレターとか? ふふっなんかニヤニヤしちゃうね。
あ、ラブレターでした。いや、うん。
内容的には「貴方をお慕いしております」を特濃コッテリドロドロにした感じの文章なんだけど、いやそれだけで充分気持ち悪いんだけどさ。
なんかこう、全部新聞の切り抜き文字でできてるんだけど。
え? え??
犯行予告かな?
僕もしかして脅迫されてる?
誰だよこんなん寄越したやつ。
なんかゴミ挟まってるし。なにこれ、糸?
あ……。
髪の毛だわこれ……。
銀色の。
フィリアナがこちらを見つめている。
やだもう。気絶したい。
視界が黒く染まる。
「デュフフ……」
意識を失う寸前、そんな笑い声が聴こえた気がした……。




