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45話「朱雀が巣立つ時」

SCARLET45:朱雀が巣立つ時


・気付いたら私はある研究所で育てられていた。

赤羽家と言う表向きの家宅はあったけど

そこに帰ることはあまりなくて・・・。

母親の顔は知らない。父親もあまり・・・。

やはり便宜上のため用意された両親はいた。

実の兄はいたけれどあまり会ったことはない。

ただ分かることはこの三船の研究所で

私のクローンが作られているということ。

小学校に通い始めた頃に外国からクローチェ博士がやってきた。

どうやら私の遺伝子は珍しいものらしい。

そこから一ヶ月に一人のペースでクローンが作られていった。

私がベースになってはいたけれど私自身はその場にいることはなかった。

どうやら私の最初のクローンが直接関わって

彼女からクローンが作られてきているらしい。

三船が最強の人間を作るために私はその1号となるためだけに

生まれて育てられてきたそうだ。

小学校を卒業するまでは教育と身体改造を徹底された。

毎週のように身体検査が行われて私に合ったパーツを持った

クローンが生成されていく。

そしてその次の週には私の体はさらに改造されていく。

・・・この様子だと私も誰かのクローンか

0から作り出された存在かもしれない。

小学校を卒業してからは本格的に三船での洗練が始まった。

薬物で精神を制御しながら空手の基礎や

実戦のパターンを叩き込まれていった。

どんどん自分というものが分からなくなってきた。

多分このまま中学を卒業する頃にはもうこの世界に本当の意味で

赤羽美咲という人間なんていないんだろうなって思っていた。

でも中学2年の12月に突如三船の研究所は閉鎖された。

多分法外な活動をしていたのが表沙汰になったのだろう。

クローチェ博士はどこかに連れて行かれて

二度と戻ってくることはなかった。

多くいた私のクローンは一人を除いて回収された。

私は大倉道場に引き取られた。

大倉会長が引き取ってくれてホテルに宿泊してもらえながら

薬物や改造手術の後遺症の治療をしてくれた。

それでも三船の調査のために多くの人員が割かれていて

私の更生をしてくれる人は中々見つからなかった。

きっとこのままここでも私は誰でもないまま

何もできないまま壊されていくのだろう。

そう思っていた。そして迎えた14歳の誕生日。

会長から私をある人物の弟子にして更生してくれる考えを聞かされた。

どうせ無駄なのだろうと私の腐りかけていた心が訴えていた。

けど、あの人は違った。

私のことを知らされていないからか

私をただひとりの普通の人間として扱ってくれた。

でもまだ心を許しちゃいけないと思ってしばらくはそっけなく接していた。

・・・やけに裸を見てくる人だし。

2月になった。三船の預かりであの研究所とは無縁を装っていた

私の兄が私を追ってきた。奪還ではなく始末のために。

私は雪の降る中兄に襲われて重傷を負った。

このまま死ぬのかと思っていた。

でもそこにあの人は来た。

右足が動かせないというのに格上が相手だというのに

私を守るために真っ向から戦ってくれた。

あの日から決めた。この人なら信じられるかもしれない。

それから遠山さんとの試合。

最初はただの障害だとしか思っていなかった。

でもあの人のために勝ちたいと思い始めていた。

・・・結局は負けてしまったけれどあの人は優しく慰めてくれた。

負けたのに悔しいのにでもどこか清々しい気持ちだった。

次には久遠との出会い。最初は気に入らない子供だと思った。

あの人のためにもこの子は倒さないといけない。

そう思ったら私は試合中なのに感情のままに叫んでしまっていた。

また負けてしまった。でもあの人とはもっと仲良くなれて

久遠とも初めての親友になれた。

嗚呼、負けても生まれるものはあるんだね・・・。

それからは3人で楽しく稽古をしていた。

多分この頃には私はあの人が好きになっていたんだと思う。

でもそう自覚し始めたあの日にあの人が来た。

甲斐さんの彼女を名乗る女性・甲斐三咲さん。

最初は気に入らないと思った。

でも冷たい態度をとってしまう前に事件が起きた。

甲斐さんの父親が来て無理矢理別の女性と結婚させようという計画だった。

あの人は当然怒った。そしてその怒りが本当にキーさんの事を

想っているからなんだと、絶対に勝てない相手だと理解してしまった。

そして、勝ってもいけない相手なんだと。

でも同じくらいの時に私の体には限界が近づいていた。

やはり大倉道場の技術では現状維持が限界だった。

このままでは私の体は夏まで持たない。

どうせ長い命ではないと覚悟していた。

でも散ってしまう前にせめてあの人のために勝ちたかった。

交流試合っていう小さな大会でそこでの優勝は決して大きな意味はない。

そんな小さな場所だったけれどそれでも私は・・・。

私は限界を尽くしてそこで優勝を収めた。

目も見えないしほとんど体も動かせなくなっていたけれど

確かにこの口はあの人に想いを伝えられたと思う。

もう何も心残りはない。朱雀は不死鳥じゃないから燃えて死ぬ。

それだけのことと割り切って私は目を閉じた。

でも、私は終わらなかった。

しばらく闇の中を彷徨った後にあの人が私を助けてくれた。

完全に三船の闇から救ってくれた。

それからしばらくの間あの人は眠りにつくけれど

どうしようもない喪失感があったけれどそれでも前を向いて歩き続けた。

あの人がいなくても清武会で勝ち続けて、

最終的には久遠に負けてしまったけれど。

そしてあの人が帰ってきてからは・・・また裸を見られたけど

あの人が公式の試合で私達と戦いたいって望んでて・・・。

まだ私には早いレベルかもしれない。

それでもあの人の笑顔が見たいから、あの人に褒めてもらいたいから、

あの人に私の成長や想いを認めてもらいたいから

今日まで頑張ってきたんだ。


「勝者・赤羽美咲!」

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・・」

カルビ大会決勝トーナメント第二回戦。

今まで楽だった試合は一度もなかった。

それでもこの戦いは厳しくて何度も負けそうになった。

けど諦めきれない想いがあったから私は何とか勝てた。

先ほどあの人も第二回戦の勝利を果たした。

つまり、これで・・・。

「・・・よく来たな、赤羽。」

正面。

この1年間ずっと私を守ってくれて支え続けてきてくれた人・甲斐廉。

やっと・・・やっと、やっとこの人と同じ舞台で戦えるんだ。

「美咲ちゃん、頑張ってね。」

「ファイトだよ。」

後ろには久遠とキーさんがいる。

今まで私と対立していながらも私を支えてきてくれた人。

私は背中で感謝をしながら前に立つあの人に目を配る。

「お願いします、甲斐さん。・・・全力で来てください。

私のこの1年間の全てをあなたにぶつけて打ち砕いてみせますから。」

「・・・いいぜ、かかってこい赤羽美咲!紅蓮の閃光スピードスター!!」

そして、最後のステージの幕が開かれた。

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