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46話「紅蓮の閃光(スピードスター)・前編」

SCARLET46:紅蓮の閃光スピードスター・前編


・カルビ大会決勝戦。

俺自身も赤羽もまさかここまで来れるとは思わなかった。

それだけ今回のカルビは強豪ばかりが参加していた。

そしてその強豪達との戦いに勝利して決勝戦で

彼女と戦えるというのは一種の奇跡と言えるかもしれない。

お互いにそれまでの戦いで少なからず消耗しているが

しかし、この際そんなものはほとんど関係ない。

試合に向けてのボルテージでどうにでもなる。

むしろどんどん力が沸いてくる。

「ではこれより決勝戦を始める。両者前へ!」

審判からの指示を受けて俺達はコートの中央に立つ。

もう互いに言葉はいらない。

ただ、全力を以て目の前の相手を打ち砕くだけ、

「正面に礼!お互いに礼!構えて・はじめっ!!」

号令と同時に俺は拳を振るい、彼女は走り出した。

恐らく見えていないであろう俺のパンチの軌道を予測して

彼女は回避しつつ得意の朱雀を放ってくる。

確かに俺でも彼女の朱雀は対処しきれない。

だが、手がないわけではない。

「朱雀激闘!」

「!?」

彼女の朱雀に合わせるように俺もまた朱雀を放つ。

互いに変調とフェイントを織り交ぜながら

しかしその上で相手の技の軌道を読み合いながら

互いの制空圏を形成していく。

俺は敢えて彼女の制空圏の只中に拳を放つ。

「玄武鉄槌!!」

思った通りに彼女はそれを防ぐと同時にカウンターの膝蹴りを放ってきた。

が、

「玄武激闘!」

そのカウンターを防ぐと同時に俺もまたカウンターの裏拳を繰り出す。

それも再び彼女の制空圏の只中にだ。

「っ!」

彼女も気付いたのか裏拳を防ぐと同時に膝蹴りを俺の制空圏の只中に放つ。

玄武の応酬では先にリズムを乱した方が負ける。

玄武鉄槌は防御と同時にカウンターの攻撃を放つ関係上

カウンターは最短距離に放つ必要がある。

お互いに玄武鉄槌を繰り出す場合

どちらもカウンターは最短距離=最速で行われる。

つまり防がれたのと同じ場所に敢えて攻撃をする必要があるのだ。

もしそれ以外の場所に放てば最速ではないということになる。

最速同士で互角に渡り合っている状況でスピードを妥協してしまえば

拮抗が崩れて一瞬で自分が劣勢になる。

玄武同士の打ち合いの決着はこのループを前提としているため

それ以外の内的要因或いは外的要因でのみ発生するものだ。

この場合時間切れになるか体力の都合で

最速からわずかでも落としてしまうか或いは・・・。

残り時間はまだ1分以上ある。

その間ずっとこれが続いているとは思えない。

だから、俺の方から敢えて玄武をやめる。

当然彼女の膝蹴りが俺の鳩尾に叩き込まれる。

が、それと同時に彼女のもう片方の足に廻し蹴りを放つ。

「っ!」

彼女が距離をとった。そして正面に深く制空圏を形成した。

「せっ!!」

そしてそのまま俺に向かって突進してくる。

あれだけ深い制空圏は2,3発程度では崩せない。

そして壊せるだけの数を用意してしまえばその間に彼女の攻撃が来る。

制空圏バリアを突撃に使うとは中々スーパーじゃないか。

しかしその戦術には穴がある。正面にしか制空圏がないことだ。

だから俺は回転しながら跳躍した。

「白虎一蹴!!」

「っ!!」

それはカウンター気味に彼女の顔面に吸い込まれるはずだった。

しかし俺の視界に再び彼女の姿が確認された時は

彼女もまた回転して跳躍していた。

「!?」

「白虎激闘!!」

俺が回転を終えて空中で停止をすると同時に

彼女の後ろ回しが俺の顔面に叩き込まれた。

「一本!!」

「・・・・・・・・」

まさか、俺が裏をかかれるとは。

先に一本取られてしまうとは・・・。

が、彼女が着地すると同時に俺もまた神速のワンツーを放ち

彼女の小柄を後方に吹っ飛ばす。

「くっ!!」

着地に失敗した彼女はそのまま畳に倒れてしまった。

「一本!!」

審判から下され、同時に第一ラウンド終了の鐘が鳴った。

「判定は引き分け!よって延長戦を始める!」

ジャッジが下される。

しかしこれからの延長戦は今までとは少し違う。

既に互いに一本を奪い合っている。

次にどちらかが一本をとった場合その時点でその者の勝利となる。

スピードが武器の彼女の方が有利に立っている。

逆に彼女からすればただのワンツーですら一本奪われることが

判明したからかもっと慎重に来るだろう。

だが場合によっては防御をかなぐり捨てて

一気に勝負を仕掛けてくるということもあり得る。

・・・彼女の性格からしてそれは中々考えられないことだが

その可能性は0ではない。備えておいて損はないだろう。

「正面に礼、お互いに礼、構えて・はじめっ!!」

再び放たれた号令。同時に彼女が走り出す。

再び正面に深い制空圏を形成した状態で突進してくる。

だから今度は俺も正面に制空圏を形成した状態で突進する。

「!?」

「玄武猪突!」

彼女の制空圏を守る手を全て払ってそのまま彼女の体を突き飛ばす。

今時純粋なタックルなど使う奴はそうそういないだろうが

制空圏の防御に頼る相手には有効な場合もある。

「ん、」

「くっ!」

次に倒れたらどうなるか分かっているからか

彼女はギリギリで受身に成功して直ぐに立ち上がった。

同時にその腹に拳を打ち込む。

「・・・ぐふっ!!」

彼女の体が浮き上がり次いで放った廻し蹴りで横薙ぎに吹っ飛ばす。

しかし、彼女はそれを側転のような形で着地した。

「・・・今のを・・・」

「・・・簡単に倒れちゃあなたへの恩返しになりませんから・・・。

この試合をくれたあなたに報いるためにも

私の方から弱音を上げるわけにはいかないんです!」

そして彼女は再び朱雀を放ってきた。

俺も同じように朱雀で応戦する。

やはり朱雀同士ではスピードタイプの彼女の方が相性がいいからか

俺のをやや上回っている。

が、朱雀を攻撃にしか使っていない彼女では当然防御が薄い。

「反し椿!!」

「!?」

彼女の攻撃を防ぐと同時にその手で裏拳を放った。

「っ・・・!!」

胸に直撃した彼女は痛みに耐えるように後ずさった。

・・・昔はこの一撃で間違いなく倒れていた。

耐えられたのは成長のおかげだな。・・・いろんな意味での。

「どうした!サンドバッグでは昔と何も変わらないぞ!」

「・・・私は・・・飛ぶ!!」

「!?」

彼女が跳躍した。

脚力を徹底的に鍛えていたからかあっという間に

俺の頭上よりも高くまで飛んだ。

流石に踏み台がないからか天井までには達していないが凄まじい跳躍力だ。

「白虎落雷!!」

そしてかかと落としにアレンジした白虎を放ってきた。

咄嗟に回避しようとしたが理性が追いついてそれを止め、

深く構えた制空圏で防ぐ。

「くっ!」

しかし防ぎきれずに後ずさってしまった。

さらに着地と同時に彼女の前蹴りが俺の下腹に突き刺さる。

痛手ではあるがさっきのをもし回避を選んでいたら

きっと空中で通常の白虎に切り替えて

俺の頭に廻し蹴りを当てていただろう。

そうなれば再び一本となって勝負が終わってしまっていた。

・・・俺がこの手で育てたとは言え随分と強くなってくれたものだ。

だから俺はまるで握手をするように右拳を彼女に向けた。

「?」

「青龍虚影・・・」

そして次の瞬間には彼女の鳩尾に右拳をねじ込んでいた。

「!?」

彼女の体が高く舞うと同時にタイムアウトを知らせる鐘の音が響いた。

「そこまでっ!!」

「ぐっ!!」

背中から畳に叩きつけられる彼女。

ギリギリで試合外だからか一本としては扱われない。

「・・・速いなんてもんじゃない・・・」

「まあ、青龍をスピードに特化した技だからな。」

普通に殴った方が手数も威力もあるから存在を忘れかけていたが。

「判定・引き分け!よって最終戦・再延長戦を始める!」

「・・・赤羽、次の150秒で全て終わりだ。

きっとこのままでは有効判定が互角でも試合内容で俺の勝ちとなるだろう。

だが、そんなつまらない決着を望む気はない。

今度は俺の方から攻めさせてもらう。お前も全力で来い。」

「・・・はい!」

「両者・中央へ!正面に礼!お互いに礼!構えて・はじめっ!!」

そして最後のゴングが鳴った。

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