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44話「赤と白」

SCARLET44:赤と白


・決勝トーナメント第一回戦・第三試合。

赤羽とマスターホワイトがコート中央に立つ。

何か起きてもいつでも止められるように俺や、

里桜、龍雲寺、久遠、斎藤がコートのすぐ傍で構えている。

当然今まで沈黙を続けていた大倉会長、伏見提督もSPスタッフを

連れた状態で近くまで観戦に来ている。

見たところ三船の代表者はいないようだ。

「ではこれより決勝トーナメント第一回戦・第三試合を始める!

正面に礼!お互いに礼!構えて・はじめっ!!」

号令が下された。同時に赤羽が攻める。

恐らく彼女が今一番得意であろう朱雀をいきなり放った。

俺や久遠でも防ぎ切ることは難しい赤羽の朱雀。

しかしマスターホワイトはさも当然のように

それをすべて回避或いは防御して赤羽の鳩尾に拳を打ち込んだ。

「!?」

赤羽の体が宙に浮かび数秒後に畳の上に落下した。

「い、一本!」

早い・・・。

審判が試合を早めに終わらせるために

マスターホワイトに有利なように働いているのか・・・!?

「・・・・・。」

彼女が平然と立ち上がる。表情からしてそこまで威力はないようだ。

それに対してマスターホワイトが動揺しているような感じはない。

まさか全部見透かしているのかもしれない。

自分が審判や空手協会から警戒すべき存在とみなされていて

なるべく試合を早く終わらせるために審判が働いているのを

前提にして威力が弱い代わりに格下から確実に一本を取れるよう

調節した佇まいをしている可能性・・・。

赤羽の朱雀を正確に対処したりパーフェクトサイボーグの

頭にはスーパーコンピュータでも入っているのか・・・?

「続行!」

通常よりやや遅れて続行の合図が放たれた。

どうやら今ので彼女もこの試合に隠されたものに気付いたようだ。

自分の勝利など論外、如何に自分を安全に負けさせるかに

全力で努力していると言う場の雰囲気。

だが、その雰囲気に素直に従ってやるような彼女ではない。

「せっ!!」

再び朱雀を繰り出した。

マスターホワイトは当然のように回避と防御をして

やり過ごしながら彼女の懐に入り拳を放つ。

「玄武・・・!」

それを彼女は制空圏で防ぐ。が、カウンターの一撃は当たらなかった。

逆に奴の2発目が彼女の脇腹を穿った。

「・・・っ!!」

きっと彼女の感覚からすればトラックに轢かれたような

衝撃があっただろう。

しかし彼女は倒れなかった。

それどころか何故か蹴った方の奴の方がバランスを崩していた。

一体何が起きた・・・?

「白虎!」

彼女が白虎を放つ。奴はそれを防ぐ・・・寸前に

防御ではまずいと判断したのか回避行動をとった。

と、それを読んでいたとでも言うように彼女が着地と同時に

奴の脇腹に膝蹴りを打ち込んだ。

「・・・直撃した・・・?」

これには俺だけでなくその場にいた彼女以外の全員が驚いていた。

赤羽美咲の攻撃は確かに速い。

だが朱雀以外の技はいずれも単調で

上級者相手には簡単に対処されるだろう。

ましてやマスターホワイトには朱雀や玄武すら防がれた。

それなのに今更ただの膝蹴りが直撃した。

「・・・・・・・・・」

そこで奴をよく見ると汗をかいていた。

汗・・・という事は彼女は先ほど送熱を使った・・・?

しかしただ送熱した程度であのマスターホワイトがバランスを崩すほど

油断を見せるだろうか。いや、昔の彼女を思い出す。

確か彼女は三船のサイボーグは自分で体調の管理ができて

100%の性能をいつでも発揮できるよう調整されていると言っていた。

ならばそんなサイボーグの奴に直接熱を送り込んだとしたら・・・?

彼女も最初の交流試合の際に連続で試合を行なったその疲労と熱で

休んでいる時でさえかなり体力を消耗し続けていたようだった。

つまり奴は今体内で急激に上がった温度を

下げるために機能の多くを割いている?

と言うか彼女や白羽睦月と違って奴は0から作り出された存在。

言ってみれば全身が精密機械のようなもの。

たとえ外気からの温度には対応できたとしても

内部の高温には弱いんじゃないのか?

それで彼女はわざと人体でも体温の高い部分である脇腹を触らせて

受身の送熱を放って奴をビジーにさせた・・・。

そして彼女が今放っている朱雀は

ただの朱雀ではなく送熱を含ませた朱雀炎翔・・・。

「せっ!!」

彼女の飛び蹴りが命中してマスターホワイトが倒れた。

「い、一本!」

この結果に会場は騒然とした。

「・・・ふん、馬鹿だな。」

「!?」

すぐ隣。いつの間にか車椅子の男がそこにいた。

「赤羽剛人・・・!?」

「久しいな死神。」

「どうしてお前がここに・・・」

「あの白い坊ちゃんのお守りさ。

昨日のように熱暴走した時のために三船から遣わされた。

俺は奴の機能を強制的に止める装置を渡されている。」

「・・・あんた・・・」

「この試合に関しては俺は一切手出ししていない。

だが、昨日馬場の奴と一緒に奴を止めた際に美咲には

あいつの弱点が熱だってことを伝えておいた。

・・・死神、お前は美咲が三船とまだつながっているとか

考えているかもしれないがそれは少し違う。

奴と美咲が同じ大会に参加している場合に限り

俺達赤羽兄妹は奴の見張りをするよう指示を受けているんだ。

三船のためじゃない。被害を出さないようにするためにだ。」

「・・・・。」

「ほれ、見とけ。お前の弟子の姿を。」

赤羽剛人に言われて視線を試合の方に戻す。

あれから排熱のために著しく弱体化したマスターホワイトを

赤羽が完全に押していた。

もう朱雀ではないが攻撃の全てに送熱を組み込んでいるのだろう。

マスターホワイトの全身から壊れたロボットのように煙が出ている。

そして赤羽が奴の肩を踏み台にして跳躍した。

5メートルはあるだろう天井まで至ると

その天井を蹴って猛スピードでマスターホワイト向けて落下してくる。

「朱雀堕天!」

彼女を迎え撃つために構えた奴の腕、

それに彼女が激突して落下スピードやそれを最大限活かした脚力を

使って奴の右腕は無数の金属片を散蒔かせながら引きちぎれた。

彼女が着地すると同時に奴は倒れた。

「一本!合わせて二本!よって勝者・赤羽美咲!!」

判決が下ると同時に会場を震わせるほどの声が上がる。

「すごいね、美咲ちゃん。一人で倒しちゃったよ・・・。」

「・・・ああ。・・・ん!」

しかしその時だ。

ヘッドギアを外してコートから出ようとした彼女に

背後から奴が襲いかかった。



油断した。

兄さんから言われたとおり熱が弱点だって聞いていたから

あの人から最初に教わった送熱を使ってマスターホワイトを倒した。

でも、終わったのは試合だけで私は背後からその白い片腕に襲われた。

右腕を引きちぎってその断面から排熱がされてしまったからか

最初みたいな勢いで襲われて私は抵抗も反応も出来なかった。

けど、衝撃は襲ってこなかった。

「大丈夫か!?」

「・・・甲斐さん・・・!」

その白い片腕をいつの間にか私の傍らにいたあの人が止めていた。

・・・嗚呼、この人はいつだって私を・・・。

「青龍一撃!!」

そうして先ほど馬場雷龍寺を倒した一撃でマスターホワイトを

数メートルは弾き飛ばした。同時に煙や火花が散ったところを見ると

どうやら完全に機能停止したみたい。

「美咲ちゃん!大丈夫!?」

久遠が胸に飛び込んできた。

「・・・ええ。甲斐さんが止めてくれましたから。」

「・・・いや、それよりよく奴に勝てた。」

「・・・兄さんが弱点を教えてくれましたから。

それに偶然あなたからその弱点を突ける技を教わっていたので・・・。」

「運が良かったな。」

そう、運が良かった。

でも運だけじゃこの人と同じ舞台には立てない。

あと一回私は自分の力で相手に勝利しないといけない。

そうして決勝の舞台であの人と真剣勝負をする。

それがあの人の望みであって私のこの一年間の恩返しだから・・・。

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