43話「頂上決戦!死神VS雷王!」
SCARLET43:頂上決戦!死神VS雷王!
・そしてカルビ大会の二日目・決勝トーナメントの日がやってきた。
応援にはキーちゃんと私服の久遠が来ている。
ここからは1つのコートで全ての試合が行われる。
そしてそのコートに決勝トーナメント出場者である8人が並ぶ。
第二次開会式が行われた後俺と雷龍寺を除いた6人はコートの外に出る。
「・・・ん?」
その対戦相手である雷龍寺だがどこか様子がおかしい。
余裕がない表情なのは昨日と同じなのだがそれとは別の形で余裕がない。
どこか調子でも悪いのだろうか。
「では!これより決勝トーナメント第一回戦を始める!」
しかし審判による号令がかかったため余計な詮索はなしだ。
今は集中しなければたとえ体調が悪くても相手は格上。
気を抜けば一瞬で倒されていてもおかしくはない。
「正面に礼!お互いに礼!構えて・はじめっ!!」
号令が掛かり拳を握り雷龍寺に向かう。
と、
「トゥリャアアアアアアアアアア!!!!」
「!?」
いきなり奴の飛び蹴りが迫ってきた。
それをギリギリ制空圏で防ぎ着地する寸前の奴の右足に拳を打ち込む。
「くっ・・・!」
「・・・・・」
妙だな、いきなりこんな威力重視で隙だらけの技を使ってくるような
焦った勝負をする奴ではないと思うのだが。
「えぇぇぇぇぇぇぇ!?それ本当なの!?」
ん、久遠の声だ。あいつ、試合中だってのになんて大声を。
「・・・はい。先日私の兄と共に暴走したマスターホワイトを止めるために
馬場雷龍寺さんはひどい怪我を負っているんです。」
「・・・な!?」
赤羽の声。それは本当なのか・・・!?
「死神!余計なことは考えるな!!」
「・・・!」
「今は試合中だ!全力を尽くす!ただそれだけのことだろうが!!」
「・・・分かった。」
当の本人からそう言われては仕方がない。
やや乱れた制空圏を形成し直し神経を集中する。
と、その神経を乱すために奴が朱雀以上の変調と
フェイントを混ぜた連続攻撃を放ってきた。
まっすぐ飛ぶと見せてやや曲がった前蹴り、
廻し蹴りに見せた膝蹴り、槍のように鋭い前蹴りをするように見せて
わざと寸止めしてから逆の足で後ろ回し蹴り。
全て対処しづらい攻撃。
しかしそのどれもがまともに喰らえばただでは済まない威力を持っている。
久遠や早龍寺の兄というだけあって恐ろしい強さだ。
しかし俺はまだ攻め入れちゃいない・・・!
「せっ!!」
奴が一発の前蹴りを放つより先に6発のパンチを放って
その足を徹底的に痛めつけることで威力の下がった蹴りを払い、
奴がその足を後ろに下がらせるよりその0,1秒よりも速く
その足の内股と外股を同時に殴る。
スピードを優先させたため威力は低いがそれを数で補う。
もう既に奴の右足はズタボロのはずだ。
が、直後の事だった。
「!?」
「疾風津々浦々」
何が起きたか分からなかった。
ただ気付いた時には俺は畳の上に倒れていた。
「一本!!」
「・・・・くっ!」
号令の後立ち上がろうとするが妙に頭がくらくらする。
何だ・・・!?まさか今蹴られたのか・・・!?
全く見えなかったぞ・・・!?
「甲斐!出来るか!?」
「も、もちろんです・・・!」
審判からの声を聞き入れながら立ち上がる。
右の頭が激痛の中心だな。ってことは左足で蹴られたということか。
奴の右足を壊すのに夢中になりすぎていたか・・・?
「続行!」
ともあれせめて一本取らないとここで終わってしまう。
今度は奴の左足に注目を・・・
「疾風津々浦々」
「!?」
奴の左足が一瞬で俺の眼前に迫った。
「くっ!!」
ギリギリでガードしたが恐ろしいスピードだった。
久遠が破壊力を重視した虎徹絶刀征を編み出したとなれば
馬場雷龍寺が編み出したのはスピードを重視した今の技か・・・!?
奴の利き足は恐らく右。
もし先に右足を潰しておかず今放たれたのが右だったなら・・・。
いや、考えるのはやめておこう。
今の技には弱点がある。正確には作り出せたということだが
技を放つ前中後には移動が出来ないってところだな。
あと分かったが奴は今両腕が使えない。
恐らく昨日の俺と同じように両方の鎖骨が折れている状態だ。
だから足技だけに頼っている。
そして俺に利き足を潰された今まともに技を放てるのが左足だけ。
だから切札ありきの今の戦術を取っている。
鎖骨は確証のない推測だが人体で最も折れやすいのが鎖骨だ。
そして格闘技をやっているなら尚更鎖骨が折れる確率は高い。
ならば・・・!
「せっ!!」
制空圏を右に集中しながら距離を詰める。
「疾風津々浦々」
「っっっ!!!」
それを見越していたのか前蹴り版が俺の腹を穿った。
腹筋やら胃袋やらが今ので潰れたかもしれない。
が、それは俺も覚悟していた。
だから構わずに突き進み畳の上に戻ったばかりの
奴の左の膝に前蹴りを打ち込む。
「!?」
まるで大木のように鍛え上げられた足だが伸びきった膝に
70キロ以上の体重を込めた一撃をうけたらどうなるか。
「くううううう・・・・!!」
重い音が響き奴がバランスを崩した。
そのまま倒れてくれればそのまま一本か或いは技ありは取れるだろう。
だが、そんな甘い結果に妥協していられる余裕はない。
奴のすぐ前に騎馬立ちで構えて連続でパンチを放つ。
「青龍嵐征!!」
一発一発の威力よりも手数と速度を優先させた青龍の拳。
「はああああああああああああああああああああああああ!!!」
「ぬうううううううううううううううううううううううう!!!」
前のめりにバランスを崩した奴を支えるどころか後ろに倒す勢いで
10秒間に100発以上のラッシュを放つ。
そしてラッシュをやめると騎馬立ちから前屈立ちに構え直し
左手を奴の眼前に向け右拳を自分の胸の横に構える。
「しまっ・・・・」
「青龍一撃!!」
後ろに控えた右足で前に一歩しながら右拳をそのまままっすぐ発射する。
この威力の危険さを察知したのか奴が十字受けでガードするが
そのガードの上から俺の全体重と腕力が宿った拳がブチ込まれる。
「せっっ!!」
踏み込んだ足が畳を突き破ると同時に
相手の体がコートの外まで吹っ飛んでいく。
「ぬううううううううううううう!!!!」
5メートルはあるだろう向かいのコートにまで吹っ飛び
そこからずっと転げ回り10メートル先の壁に激突した。
踏み込んだ右足と放った右手から血が滴る。
「い、一本・・・!」
審判がジャッジを下すと同時にタイムアップを告げる鐘の音が響いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
うつ伏せに倒れているため表情は見えないが
奴の両腕からは激しく出血して骨らしきものが見えていた。
すぐに審判が様子を窺いに走る。
「・・・馬場!馬場雷龍寺!しっかりしろ!生きてるか!?」
「・・・・・・・・うう、」
反応がある。生きてはいるようだが
しかし起き上がるだけの体力は残っていないようだった。
「勝者・甲斐廉!!」
判定が下ると同時に歓声が湧き上がる。
「・・・ふう、」
ひび割れたヘッドギアを外して先方の様子を見に行く。
「・・・さすがだな拳の死神。」
「あんたが怪我していなければ立場は逆転していたかもしれない。」
「・・・末妹が余計なことを口走らなければ・・・」
「それで、詳しい状況を聞かせてくれ。」
「・・・昨日お前と久遠が運ばれた後だ。
控え室に続く廊下でそこの白の男が選手を複数血祭りにあげていた。
それを俺と車椅子の男・赤羽剛人の二人で止めたんだ。
その戦いで俺は鎖骨を両方とも破壊された。
・・・どうしてあの男が失格にならないのかは分からないが・・・。
くっ・・・!」
「分かった。もう休め。」
「・・・妹を頼んだ。」
それだけ言って雷龍寺は意識を失い担架に乗せられ運ばれていった。




