30話「RELOAD OF CRIMSON SPEED STAR」
SCARLET30:RELOAD OF CRIMSON SPEED STAR
・甲斐機関。
あの戦いの後赤羽は甲斐機関の集中治療カプセルに搬送された。
生命力が著しく低下していた。
「美咲ちゃんはね、死神さんのことが好きだったんだよ。
美咲ちゃんは不器用だからその好きが師匠としてなのか、
それとも男性としてなのかはわからないけれど。」
「・・・・。」
カプセルの前で久遠が語る。
「だが、俺は・・・・。」
隣にいるキーちゃんの方を見る。
「そんなこと美咲ちゃんだって知ってるよ。
だから美咲ちゃんは今日あそこでその思いを燃やし尽くしたかった。
焼き払いたかったんじゃないの?
私はまだ恋愛とかってよくわからないけれど・・・・。」
「・・・・・。」
確かにそれが正しければ辻褄は合う。
けど、それだけでは説明がつかないこともある。
俺としてはやはりそれ以上に
彼女は壊れた自分を焼き払いたかったようにも見えた。
自分の限界を知っていたうえで。
「・・・・・。」
赤羽の容体は変わらない。
昏睡状態だ。生死不明とまで言ってもいいかもしれない。
「・・・ん、」
インターホンが鳴る。
「私が出てくるよ。」
久遠が向かう。
やがて、
「死神さん、通してもいい?」
「相手は?」
「睦月ちゃん。」
「むつき?・・・・・白羽睦月か!」
気付くや否や久遠に連れられて白羽睦月が来た。
「・・・・・・・。」
「何か用か?」
「・・・これ。」
手に提げた布から何か薬のようなものを出した。
「これは?」
「制御薬。何らかの状態であたしたちが投薬できなくなったときに
一時的に使用する薬。これを使えばその子を一時的に治せる。
・・・本当は別の子に使いたかったんだけど。」
「完全には治らないのか?」
「無理。・・・・それじゃ、」
そういって彼女は踵を返す。
「待て、お前は三船だろう?どうして手助けをする?」
「・・・・あたしをあたしと言ってくれたから。」
それだけ言って帰って行った。
「・・・・パーフェクトサイボーグも人間だな。」
「だね。」
薬を調べる。
確かにこれを使えば一時的に彼女の意識を取り戻させることができる。
だが完全に治すことはできない。
けれど、この甲斐機関の技術で彼女をスキャンして
何とか改造を可能な限りなおしてやりたい。
「キーちゃん、できる?」
「任せて。・・・・廉君はどうするの?」
「どうって?」
「赤羽ちゃんの告白にどうこたえるの?」
「・・・・赤羽の気持ちを受け入れることはできない。
俺にはキーちゃんしかいないよ。
わかってもらえるかどうかはわからないけど
ただ全力を尽くすだけだよ。」
「・・・ん。そうしてあげて。」
それから俺たちは夜を徹して赤羽美咲の体を調べ尽くした。
その一方で俺自身の治療の準備も着々と進んでいた。
大いなる静寂が訪れようとしていた。
再び真っ赤な炎を燃え上がらせるために。
・7月15日。
俺は赤羽美咲を復活させた。
「・・・・・うう、」
「目が覚めたか?」
「・・・・甲斐、さん・・・?」
彼女がカプセルの中で目を覚ます。
「私は・・・・生きているんですか?」
「ああ。生きている。」
俺は赤羽に白羽から制御薬をもらったことを告げた。
「・・・そうですか、あの子が・・・・。」
「それと、何とか君の体を治す方法も見つかった。」
「!本当ですか!?」
「ああ。実はもう準備もできている。
ただ実行する前に一応君に伝えておきたかったからな、」
「・・・・私は、お願いします。」
「・・・わかった。」
キーちゃんにメールをする。カプセルにコマンドを入力する。
「このカプセルにその準備をしておいた。
再び一週間ほど眠ってもらうことになるがいいか?」
「・・・はい。」
「そして俺はかねてから予定した通り右足の集中治療に移る。
少し予定が狂って完治するのに2か月かかるがな。」
「・・・私のせいですか?」
「俺がしたくしてやったんだ。気にするな。」
「・・・・すみません。」
「・・・・・・・それから、赤羽。」
「はい?」
「お前が倒れる前に言ったあのことだが・・・。」
「・・・・・はい。」
「あれはその、」
「久遠から聞いていませんか?私はあなたのことが好きだったんです。
あの人が、甲斐三咲さんが来るまでは。
でも私は感情を殺されていた。だからこの気持ちが
どういう好きなのかは私にもわかりません。
あなたにはあの人がいるということも知っています。
ただ、それでも言っておきたかったんです。
私の生きた証がほしかったんです。」
「・・・今はどうなんだ?」
「今だって好きです。大好きです。
ですけれど、久遠のことも甲斐三咲さんのことも同じくらい大好きです。
私にはその区別がわかりません・・・・。」
「・・・・いや、いいさ。」
「私は8月の清武会には出られるのでしょうか?」
「ああ、問題はない。・・・そうだな。
言い忘れるところだったが俺がいない2か月間の間
君は大倉道場に通うことになった。
指導員は佐久間さんだ。
俺が中学時代世話になった人だから安心していい。
少なくとも俺より指導はうまい。だから、心配せずに戦ってくれ。」
「・・・・了解です。全力で期待に応えます。」
同じ言葉。だが今日のは屈託のない笑顔だった。
「・・・だから、必ず帰ってきてくださいね。
私はあなたとまたあの道場で稽古をしたいのですから。」
「・・・・ああ。君の成長を楽しみにしている。
そしていつか、試合をしてみたいものだな。」
「・・・・追いついて見せます。だって私はあなたの弟子ですから。」
互いに笑い、そして握手をした。
それから一週間彼女はカプセルの中で
専門の治療を受けて完全ではないものの改造された肉体は治った。
そして入れ替わりに俺は俺自身の出発のために
2か月間の永い眠りにつくこととなった。
今は二人は会えない。
だがこれは終わりではない。
新たなる戦いのためのリロード期間だ。
待っていろよ、赤羽美咲。




