29話「赤に咲く」
SCARLET29:赤に咲く
・第三回戦目。
無理だと思っていたが赤羽は
特に問題なく相手を打破してブロック決勝戦に進んだ。
「じゃあ、赤羽ちゃんはブロック決勝戦まで進んだんだ。」
「ああ。
けど、そろそろきつくなってきたみたいだから準備しといてくれるかな?」
「うん。赤羽ちゃんをよろしくね。」
「ああ。」
キーちゃんと連絡を取る。
いつでも治療ができるようにスタンバイしてもらっている。
「これよりブロック決勝戦を開始する!」
号令がかかる。
「行って来い。」
「はい。」
赤羽が戦場へ向かう。
相手はあのリインハルトだった。
あの時はスピードでは負けていたが今回は・・・・。
「ではブロック決勝戦・始めっ!」
号令と同時に赤羽は朱雀を展開する。
それで調子を崩されたのかリインハルトは竦む。
赤羽の灼熱の攻撃がリインハルトを襲う。
リインハルトも得意のスピードで赤羽を襲うが、
朱雀のフェイントにまんまと引っ掛かり空振りで無防備になったところに
スピードを込めた拳を打ち込まれて開始30秒でKO負けとなった。
「朱雀炎翔・・・・」
赤羽が編み出した技は絶好調だった。
送熱を含んだ拳を朱雀と混ぜて使い、躱すことも防ぐこともできずに
体力を削られその状況を打破するために放った一撃を回避して
スピードを込めた一撃で沈めるという技。
元々朱雀は彼女と最高に相性のいい技と思っていたが
交流試合に参加する程度の相手になら
大抵完封勝ちできるほどとは思わなかった。
だが今の彼女は危険だ。
昼休みを挟み、決勝戦が始まる。
相手は伏見道場の中学2年生の少女・衣笠愛美だった。
伏見で女性とは珍しいな。
けどそれは逆に強敵の証。
「決勝戦・開始っ!」
号令がかかる。
「はああっ!!」
突如、衣笠の轟雷のような攻撃が赤羽を襲った。
「!?」
制空圏を練る暇さえ与えられずに彼女の体が宙を舞う。
「あれは、綺龍最破!?」
「知ってるの?」
「黒帯の上、2段を取るときに必要な型の一つで制空圏相手だろうと
構わずに打ち破る超攻撃用の型だ。
まさか、交流試合で見られるとはな。」
綺龍最破なんて俺がいた実戦クラスの大会でだって
中々みられるものじゃないレアな技だ。
これを教えているとは、伏見道場の指導には相変わらず驚かされる。
だが、彼女だってそうやすやすと負けたりはしないはずだ。
攻撃をガードする。ごく普通な攻撃への対処法だ。
しかしガードした場合にもわずかながらダメージはある。
綺龍最破は相手がガードしていようがむしろそれを利用して
大ダメージを与える攻撃に特化した技だ。
教科書にも載ってるくらい知られた技ではあるが
これをマスターできるものはそのうちの1%未満だ。
それを中学2年生ができるとは驚きだ。
が、赤羽美咲も負けてはいない。
「くっ!」
「な、」
突撃を制空圏でずらして玄武のカウンターを打ち込む。
綺龍最破相手にガードは禁物。
だから最も有効な手段は回避。
衣笠の突撃はパワーはあるが、スピードはそこまで速くはない。
それに気付いたのか彼女は朱雀を発動する。
綺龍最破を回避し、的確に攻撃を加えて行く。
「ならば!」
衣笠は戦術を変え、綺龍最破なしでの攻撃に移る。
だがそれでも朱雀のスピードには勝てずに
一方的に攻撃を受けていく。
「美咲ちゃんすごくいい調子じゃん。」
「ああ。」
このままいけば勝てるだろう。だが、
「!?」
急に彼女の様子がおかしくなった。
周りをきょろきょろ見回したり自分の手元を見ている。
「ねえ、あれってまさか・・・・」
「・・・・まさか、」
あの仕草、まさか目が・・・・!?
「今だ!綺龍最破!!」
衣笠の驚異的な攻撃が
彼女の体を宙にぶっ飛ばす。
「くっ・・・・!」
そのまま彼女は畳にたたきつけられてしまう。
「・・・・・・・。」
彼女は立ち上がるが、やはり挙動不審だ。
間違いない・・・・目が見えていないのか!
「なんだかわからないがチャンスだ!」
衣笠が再び綺龍最破を放ち、無防備な彼女をブッ飛ばす。
「ねえ、ヤバくない?いくら美咲ちゃんでも目が見えなかったら・・・・」
「ああ・・・・。まずいな。」
目が見えなかったらいくらスピードがあっても意味がない。
それに敵の攻撃もかわせない。
「・・・・くっ、」
彼女が両手を虚空に泳がせる。
その手が偶然衣笠の肩に触れる。
「そこっ!!」
それで距離をつかめたのか衣笠に回し蹴りを打ち込む。
「ぬっ!」
不意打ちだったのか衣笠は腹を押さえて後ずさる。
いいダメージだが、
偶然は二度も起きないし向こうも赤羽の目が見えないことに気付いている。
だから衣笠は距離を取ってから再び綺龍最破を放つ。
超攻撃が彼女の体を宙にぶっ飛ばす。
「くっ・・・・!」
彼女はなんとか着地をする。
「とどめっ!」
衣笠が綺龍最破を放つ。
「・・・・・!」
直後彼女は制空圏を取り戻し、その攻撃を回避する。
「何!?」
「はあっ!」
そしてすれ違いざまに腹に膝蹴りを入れる。
同時にタイムリミットが来る。判定は引き分けだ。
「赤羽!」
急いで彼女の下による。
「甲斐さん・・・・」
「目は大丈夫か?」
「はい。さっきは見えなかったですが今は見えています。
・・・・・甲斐さん、」
「なんだ?」
「150秒後にお話があります。いいですか?」
「・・・ああ。」
「なら、赤羽美咲行ってきます。」
そして彼女は延長戦に向かっていった。
・延長戦。彼女は朱雀を使い、
そのスピードを最大限に生かして衣笠に乱打を打ち込んでいく。
「もう、見切ってる!」
衣笠は足払いをして彼女の足を止め回し蹴りでぶっ飛ばす。
か細く軽い彼女の体はたったこれだけで致命的なダメージを負ってしまう。
が、彼女はいつものように立ち上がる。
痛みに負けぬように歯を食いしばっているのがわかる。
「・・・美咲ちゃんって本当に強いよね。」
「・・・ああ。」
「けれど、前から変わらない。あの子は激しく燃える蝋燭のよう。
いつ燃え尽きてもおかしくないくらいに本気だよ。
死神さん、美咲ちゃんが三船道場出身ってことはわかったけど
他にも何か知ってるんじゃないの?」
「・・・・あの子の体はもう限界なんだ。
だが、彼女は焼き払いたいものがあると言った。
燃え尽きたいものがあるとも言っていた。
だから戦わせている。」
「・・・信頼しているんだね。
けど、たぶんその信頼は最悪の形で終わると思う。」
「何?」
「美咲ちゃんの気持ちは・・・・もう、」
うつむく久遠もまた何かを知っているようだった。
「くっ!!」
綺龍最破を受けて壁にたたきつけられる赤羽。
が、その壁をけって衣笠へ向かっていく。
「何!?」
「白虎一蹴!!」
空中で体勢を立て直して高速の回し蹴りが
衣笠の脇腹に命中する。
「はあああっ!!」
さらに彼女の拳が衣笠の胸に打ち込まれる。
そして拳を通じて衣笠に熱が送られる。
「ぐう・・・・・!熱い・・・!!」
衣笠は離れようとするが彼女は離さない。
「はあ、はあ、あと少し・・・!!」
彼女は回し蹴りで衣笠の左足をくじく。
そしてひるんだ衣笠に熱気をこめた拳の朱雀を叩き込んでいく。
「朱雀炎翔!!」
灼熱の拳が宙を切る。
全力のスピードが込められた拳が衣笠に叩き込まれる。
「ま、まだぁ・・・・・!!!」
衣笠は耐えて綺龍最破を繰り出し、
赤羽を天井近くまでブッ飛ばす。
もう彼女の体は・・・・!!
「まだ・・・・!!」
彼女は天井を蹴る。
そのまま猛スピードで衣笠向けて急降下する。
「そんな技が!?」
「これが私の炎の証です!」
そしてそのまま衣笠に正面から激突する。
「・・・・・・・っ!!!」
「朱雀堕天・・・・・・!!」
名前の通りまるで朱雀が残り少ない力を使って
天から堕ちてきたかのような技だった。
拳でも足技でもない技とは珍しい技だが、
だからこそ衣笠は畳に倒れたまま失神していた。
そして彼女が、赤羽美咲が立ち上がる。
「せっ!」
一本を取ると同時にタイムアップとなる。
「勝者は赤羽美咲!よって優勝者は赤羽美咲!」
号令が下る。
「・・・・美咲ちゃんが優勝した・・・・・」
「・・・・・。」
呆気にとられる俺たちの前に彼女が歩み寄ってきた。
足取りからおそらくまた目が・・・・。
「甲斐さん・・・・」
「・・・なんだ?」
俺の位置を確認した彼女は、
「・・・・大好きでした。今までありがとうございました。」
今まで見たことのないほどの笑顔でそう告げてそのまま彼女は倒れた。




