28話「朱雀が幻を残して羽ばたくように」
SCARLET28:朱雀が幻を残して羽ばたくように
・6月。赤羽の2回目の交流試合の日が来た。
「・・・行ってきます。」
赤羽が1回戦の戦場へ行く。
「死神さん、今の美咲ちゃんならどこまでいけると思う?」
「そうだな、お前のような怪物が出ていないし赤羽自身も
3か月で成長した。優勝してもおかしくはない。」
だが、今の赤羽は・・・・。
「では、第一回戦を始める!始めっ!!」
号令がかかり、赤羽は対戦相手へ走る。
「朱雀幻翔!」
いきなり変調を始め、
敵のリズムを崩しながら鋭い攻撃をガードの薄い場所へ叩き込んでいく。
「終わりです。」
そして赤羽の回し蹴りが相手の顔面をひっぱたき、KOにした。
「すごいじゃん美咲ちゃん!
まだ10秒くらいしかたってないのにKOしたよ!」
「・・・・ああ。」
「・・・?死神さん、どうかしたの?」
「なんでもないさ。」
何でもなくはない。
それは一か月前のこと。
久遠がいないある稽古の時に赤羽が急に倒れた。
すぐに甲斐機関へ運び検査したところ、
内臓器官に異常が出始めていた。
「どういうことだ?」
「・・・・私が三船を離れたからでしょう。」
「三船を?」
「はい。三船から定期的にワクチンを体に与えられなければ
この体は急激に寿命が縮み、限界を迎えてしまいます。
私が三船を離れてからもうそろそろ半年。
矢岸先生の治療があっても限界が来てもおかしくはありません。」
「なら今すぐここで治療を・・・・!」
「そうすれば試合に間に合いません。」
「試合どころではないだろう!?」
「ですが!あなたが安心して入院できるように
私は私をあなたに見せたいんです。4か月間あなたから教わったすべてを。
・・・・私自身ここで退くわけにはいかないんです。
焼き払したいものが、燃え尽きたいものがあるんです。」
彼女はそう言った。
彼女の場合は負傷でも病気でもない。薬物による人体改造だ。
普通の治療では治せない。
場合によっては三船の助力が必要になるかもしれないし、
最悪の場合治らない可能性もなくはない。
いつ手遅れになってもおかしくないその体で彼女は今戦っている。
試合は100%と言える戦いだ。
だが、俺には無理をしているようにも見える。
古い漫画にはあった。すでに手遅れになった体でまるで自分のすべてを
戦いに燃やして何も残らず真っ白に燃え尽きた男。
それと同じように彼女は壊れた体をこの試合にささげて
燃やし尽くして焼き払おうとしているのではないだろうか。
彼女は、赤羽美咲は生き急いでいるように見える。
必死になってその身を燃やして試合という形で
自分の面影を残そうとしているように見える。
まるで朱雀が幻を残して羽ばたくように。
「・・・・では、行ってきます。」
赤羽が第二回戦の戦場へ向かう。
「赤羽、」
「なんでしょうか?」
「朱雀は未来にはばたくものだ。忘れるなよ。」
「・・・・・はい。全力を尽くします。」
そういって彼女は戦場へと向かっていった。
・彼女が2回戦の戦場へたどり着く。
そこには一人の少女がいた。
とても赤羽にそっくりな少女。
名前は・・・・白羽睦月。所属は、三船道場・・・・・。
「・・・・・・・。」
「・・・・・三船の、新たな戦術人形・・・・!」
赤羽が構える。
「第二回戦、始めっ!」
号令がかかる。
同時に赤羽と白羽がぶつかり合う。
白羽は赤羽より小柄で2つくらい年下に見える。
だから余計に赤羽よりもすばしっこい。
おまけに初めて彼女と会った時と同じようにどこまでも無表情。
「ねえ、死神さん。あの子美咲ちゃんに似てない?」
「・・・・・ああ。」
おそらく赤羽をベースに作られている。
白羽からは生きた気配を感じない。前回いた白帯の男のように
パーフェクトサイボーグなのかもしれない。
「くっ!」
やや赤羽が押されていた。
白羽は四神闘技こそないもののパワーもスピードも赤羽を超えていた。
赤羽は朱雀を使うことで何とか互角の攻防をしているといったところだ。
だが朱雀は体力を消耗する。
パーフェクトサイボーグに体力の限界がないというのなら、
「うっ!」
長引くほどに赤羽の不利だ。
今も軌道を見切られ、鋭い前蹴りを腹に受けた。
赤羽はまだ制空圏と朱雀を同時に使うことはできない。
「はあ、はあ、」
息を切らしてきた赤羽。
制空圏を練り上げる。
が、白羽は赤羽の制空圏の隙である
下段に集中砲火を行なう。
「つっ・・・・!」
赤羽がバランスを崩す。そして白羽が飛蹴りを打ち込む。
「くっ!」
赤羽はぎりぎりで制空圏で回避し、そこでタイムアップとなった。
判定は引き分けだった。
「あの胴衣、美咲ちゃんの胴衣と同じワンピースタイプだし。
どう見ても美咲ちゃんと何か関係あるんじゃないの!?
死神さんは何も知らないの!?」
詰め寄る久遠。
「久遠、この試合が終わったら話がある。
それまで何も聞かずにいてほしい。」
「・・・うん、わかった。」
黙る久遠。
いつもなら愛の告白だとからかうところだろうが
さすがに今日はシリアスなようだ。
しかし、もともと持久戦が得意でない赤羽だが
今日はいつも以上にスタミナの減少が激しいように見える。
そこまで攻撃は食らっていないはずなのに
赤羽は今にも倒れそうなくらいにグロッキーだ。
「延長戦・開始!」
号令がかかり、両者がスピードを発揮する。
「玄武・・・!」
赤羽が白羽の攻撃を制空圏で防ぎ後ろ手に構えた拳を振るう。
が、白羽はそれを防ぎ回し蹴りを赤羽の腰に叩き込む。
「ううっ!」
「・・・・その腰、返して・・・・」
「え・・・!?」
「・・・・あたしの骨、返して・・・・」
「・・・まさか・・・・」
動揺する赤羽の額を飛蹴りが襲った。
「・・・ううっ!」
額を抑えてうずくまる赤羽。
「・・・返して・・・あたしの骨・・・・」
間も与えずに
白羽が赤羽を蹴り倒す。
あの白羽睦月というのは赤羽美咲のクローンか・・・・!
そういえば久遠に骨を砕かれた赤羽には
三船道場にいる赤羽のクローンの骨を移植したんだったな。
「・・・返して・・・あたしの血・・・・」
「がああああ・・・・・!!」
倒れた赤羽の腹を踏みつける白羽。
「ジャッジ!反則じゃないのか!?」
声を上げる。
「は、反則!離れなさい!」
ジャッジが白羽を離す。
「ううっ・・・・」
何とか立ち上がる赤羽。
その顔面を白羽の回し蹴りがひっぱたく。
「せっ!」
すぐに一本を取られ、今の反則を帳消しにされてしまった。
「返して・・・・あたしを・・・・」
再び赤羽の腹を踏みつける白羽。
「あなたはあなたじゃない・・・・。
あなたなんてどこにもいない・・・・。
あなたは誰でもない・・・・。あなたはあたしじゃない・・・・。
あなたに意味なんてない・・・・失敗作。」
白羽は容赦なく赤羽の腹を踏みつけていく。
「そんなことはない!!」
「・・・・・」
白羽がこちらを向く。
「たとえクローンだろうと人は人だ。そいつ以外の何物でもない。
赤羽も君も、君たちしかいないんだ。」
「それでもあたしはほかに10人はいる・・・・。」
「そんなの関係ない!
それぞれすべてに意味はある。失敗作などあり得ないんだ!」
「・・・・そう・・・です!」
赤羽が白羽の足をつかんでどかす。
「私は私です!赤羽美咲です!白羽睦月ではありません!
あなたはあなたです!白羽睦月です!赤羽美咲ではありません!
そして、これが私が生きた証・・・私の命の炎の証です!」
赤羽は再び朱雀を使用する。
そして変調を利用して白羽に拳を打ち込んでいく。
「・・・・体が熱い・・・・どうして・・・・・」
「まさか、一発一発に分割して送熱を!?」
拳がふれた瞬間にだけ送熱をする・・・・。
けどそれは体への負担が大きすぎる・・・・!
「朱雀・・・・炎翔!!」
最後に赤羽のスピードをかけた拳が白羽の胸に叩き込まれた。
「・・・ありえない・・・・パーフェクトサイボーグなのに・・・」
「同じ人間です。いくらでも可能性はあります。」
「・・・・けれどあなたのその炎はもうじき絶える。
あなたの可能性はもう燃え尽きる・・・・。」
「・・・それでも私は全力を尽くすだけです。」
「・・・・・・そう、」
白羽が倒れ、KOと判定された。
「赤羽!」
グロッキーな赤羽を支える。
「・・・甲斐さん、ありがとうございます・・・。」
「気にするな。だが、無理はするな。」
「・・・・はい・・・・」
しかし既に彼女に意識はなかった。
彼女の体は爆発しそうなくらいに熱かった。
「久遠、水を持ってきてくれ!」
「わかった!」
赤羽を控室まで運び、久遠には水を持ってきてもらう。
「・・・美咲ちゃん、大丈夫なの?」
「・・・・・わからない。」
体温は40度を超えている。
昏睡状態と言ってもいいかもしれない。
次の試合までに目が覚めなかったら甲斐機関へ搬送しよう。
だが、
「・・・・大丈夫、です。」
無情にも彼女は目を覚ましてしまった。




