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ルカ・マーフィーは夜魔法の継承者  作者: 如月


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ソジュンの最後

ソジュンは襲い掛かってきた。


だが、その表情は先ほどまでとは違っていた。


まるで人形のように無表情だった顔が、時折苦しそうに歪む。


「ぐっ……!」


頭を押さえる。


しかし次の瞬間には再び闇魔法を放つ。


ドォォォォン!!


巨大な闇の刃がエディへ迫る。


「ソジュン!」


エディは避けない。


木魔法で受け流す。


さらに接近する。


闇の槍。


闇の鎖。


闇の斬撃。


ソジュンは次々と攻撃を放つ。


しかし。


エディは一度も攻撃を返さなかった。


全て見切る。


全て受け流す。


全て防ぐ。


「なぁ。」


エディが笑う。


「俺ら何回一緒に戦ったと思ってんだよ。」


ソジュンの闇槍を横へ流す。


「何回訓練した?」


次の斬撃も避ける。


「お前の戦い方なんて。」


蔦が闇を絡め取る。


「全部お見通しなんだよ。」


ソジュンの瞳が揺れた。


だが。


その瞬間だった。


ゼノスが低く呟く。


「思い出せ。」


ソジュンの身体が震える。


「お前を見捨てた連中を。」


「お前の絶望を。」


「お前の怒りを。」


ドクン――


ソジュンの魔力が暴走する。


瞳から光が消える。


完全に操り人形へ戻ってしまった。


「ソジュン!」


エディが叫ぶ。


だがソジュンは止まらない。


身体中の傷など関係ない。


魔力量の消耗など考えない。


ただ破壊するためだけに突っ込んでくる。


ドォォォォン!!


闇魔法が炸裂する。


腕が裂ける。


血が流れる。


それでもソジュンは止まらない。


まるで自分の命すらどうでもいいかのように。


「やめろ!!」


エディの声が響く。


「そんなのお前じゃねぇだろ!!」


ソジュンは答えない。


ただ襲い掛かる。


そして。


エディは決断した。


杖を掲げる。


膨大な魔力が溢れ出した。


「木魔法――」


大地が震える。


巨大な魔法陣が広がる。


「ワールド・ツリー。」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!


戦場の中央から巨大樹が出現した。


天井に届くほどの大樹。


無数の蔦が伸びる。


ソジュンへ向かって。


「ソジュン!!」


蔦が身体を包む。


腕を。


足を。


身体を。


完全に拘束する。


ソジュンは暴れる。


闇魔法を放つ。


それでも蔦は離さない。


エディの想いそのものだった。


「思い出せ!!」


さらに蔦が絡みつく。


巨大樹へ埋め込まれていく。


「お前はブラックのソジュンだろ!!」


ソジュンの瞳が揺れる。


「敵の一味なんかじゃねぇ!!」


さらに揺れる。


「戻ってこい!!」


その言葉だった。


ソジュンの瞳から闇が消えた。


ゆっくり。


本当にゆっくり。


元の茶色い瞳が戻る。


エディが息を呑む。


ソジュンが見た。


目の前の親友を。


そして。


小さく笑った。


昔と同じ笑顔だった。


「エディ……」


エディの目から涙が溢れる。


「ソジュン!」


ソジュンは力なく微笑んだ。


「ごめんね……」


その言葉を最後に。


急に表情が苦しみに変わる。


「がっ……!!」


目を見開く。


そして――


ゴフッ!!


大量の血を吐いた。


「ソジュン!!」


エディが駆け寄る。


巨大樹から解放されたソジュンの身体が崩れ落ちる。


慌てて抱き留める。


「おい!!」


「ソジュン!!」


肩を揺する。


反応がない。


目を閉じたままだ。


だが意識が戻らない。


エディの顔から血の気が引く。


その様子を見ながら。


ゼノスは小さくため息をついた。


「やっぱり駄目か。」


まるで壊れた道具を見るような目だった。


「惜しかったな。」


エディが睨み付ける。


「てめぇ……!!」


だが。


ゼノスは気にも留めない。


ゆっくりと槍を掲げる。


黒紫の魔力が溢れ出す。


戦場全体が震えた。


「もう終わりだ。」


もう一つの巨大な魔法陣。


「第七の地獄――大灼熱。」


黒炎と青炎が融合する。


地獄そのもののような炎。


誰もが息を呑む。


なるほど!それならソジュンが倒れた後は第六地獄はもう終わっているので、ゼノスはすぐに**第七地獄《大灼熱》と第八地獄《阿鼻》**を展開する流れだね。



ソジュンの身体が力なく崩れ落ちる。


エディは慌てて駆け寄った。


「ソジュン!!」


肩を抱き寄せる。


「おい!しっかりしろ!!」


反応はない。


呼吸はある。


だが意識は戻らなかった。


アリスも駆け寄る。


「ソジュン!」


レオは拳を握り締める。


オーランドは歯を食いしばった。


ようやく。


ようやく戻ってきたと思ったのに。


その時だった。


「やっぱり駄目か。」


低い声が響く。


全員が振り返る。


ゼノスだった。


まるで壊れた道具を見るような目でソジュンを見ている。


「惜しかったな。」


「もう少しだったんだが。」


エディが立ち上がる。


怒りで全身が震えていた。


「お前……!」


「ソジュンを何だと思ってる!!」


ゼノスは興味なさそうに視線を向ける。


「利用価値のある駒だ。」


その言葉に。


ブラックの面々の怒りが爆発した。


レオの闇魔力が揺らぐ。


オーランドの血魔法が暴れ始める。


アリスの周囲に冷気が漂う。


エディも巨大樹を軋ませる。


しかし。


ゼノスは笑った。


「感情的になるな。」


ゆっくりと槍を掲げる。


その瞬間。


空間そのものが悲鳴を上げた。


全員の表情が変わる。


先ほどまでとは比べ物にならない魔力量。


セドリックが叫ぶ。


「全員警戒しろ!!」


アルクも剣を構える。


「来るぞ!!」


ゼノスの背後に二つの巨大な魔法陣が展開される。


一つは黒炎。


一つは紫黒の奈落。


「第七の地獄――」


黒炎が噴き上がる。


先ほどの灼熱を遥かに上回る熱量。


空間が歪む。


石が溶ける。


魔力そのものが燃えているようだった。


「大灼熱。」


ゴォォォォォォォォォォォッ!!!


黒炎と青炎が混ざり合う。


禍々しい黒紫の炎。


それは触れた物だけではなく。


体内からも焼き尽くそうとする地獄の業火だった。


「まだだ。」


ゼノスはさらに槍を掲げる。


二つ目の魔法陣が輝く。


「第八の地獄――」


視界が歪む。


空間が捻じ曲がる。


「阿鼻。」


ドクン――


全員の意識が揺らいだ。


次の瞬間。


景色が消える。


足元が消える。


重力が消える。


「なっ!?」


アクアが目を見開く。


ルカも息を呑む。


気付けば。


全員が落ちていた。


底の見えない奈落へ。


どこまでも。


どこまでも。


終わることなく。


永遠に。


落ち続ける。


「何だこれは!?」


ビルが叫ぶ。


レオも歯を食いしばる。


「幻覚か……!?」


だがわかっていても抜け出せない。


精神そのものへ干渉する地獄。


恐怖。


絶望。


孤独。


全てを引きずり出す。


そして現実では――


第七地獄《大灼熱》の黒炎が仲間たちを包み込もうとしていた。


精神を砕きながら。


肉体を焼き尽くす。


二つの地獄の同時発動。


今までの地獄とは比較にならない。


ゼノスは静かに全員を見下ろした。


「終わりだ。」


その声だけが。


奈落へ落ち続ける仲間たちの耳に響いていた――。


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