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ルカ・マーフィーは夜魔法の継承者  作者: 如月


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エディとソジュン

ソジュンは止まらなかった。


闇魔法によって生み出された黒い刃が次々と放たれる。


ドォォォォン!!


壁が砕ける。


床が抉れる。


レオが咄嗟に闇の障壁を展開する。


「くっ……!」


アリスも氷壁で仲間を守る。


ビルが炎の大剣で弾き飛ばす。


だが誰一人として反撃しない。


できなかった。


目の前にいるのは敵ではない。


共に学び。


共に笑い。


共に過ごした仲間。


ブラック寮の仲間だった。


「ソジュン先輩!」


アクアが叫ぶ。


しかし返事はない。


ルカも苦しそうな表情で杖を握る。


「お願いだ……」


それでもソジュンは止まらない。


まるで操り人形。


心を失ったかのようだった。


そんな中――


一人が前へ出た。


エディだった。


「エディ?」


レオが驚く。


エディは静かに首を横へ振る。


「俺に任せてください。」


その声は震えていた。


だが決意があった。


ソジュンが再び闇の魔法陣を展開する。


エディは逃げなかった。


真っ直ぐ歩く。


ソジュンへ向かって。


「おい。」


返事はない。


「なぁ、ソジュン。」


ゆっくりと語りかける。


「俺らさ。」


「学年で唯一のブラックだったよな。」


ソジュンの手が僅かに止まる。


エディは続けた。


「周りから煙たがられてさ。」


「ブラックだからってだけで避けられたり。」


「変な噂流されたり。」


苦笑する。


「あの頃は本当に馴染めなかったよな。」


仲間たちも黙って聞いていた。


エディは視線を落とす。


「俺も隣の国から来たばっかりでさ。」


「知り合いなんて一人もいなかった。」


少しだけ笑った。


「だから勝手に思ってたんだ。」


「お前のこと兄弟みたいなもんだって。」


ソジュンの瞳が微かに揺れる。


エディは気付かない。


ただ思いを伝える。


「勉強も教えてくれた。」


「訓練も付き合ってくれた。」


「俺が落ち込んでる時も声かけてくれた。」


エディの声が震える。


「本当にさ。」


「お前がいたから俺はここまで来れたんだ。」


沈黙。


そして。


エディの目から涙がこぼれた。


「本当に感謝してる。」


その言葉は本心だった。


誰も口を挟まない。


エディは拳を握る。


「でもさ……。」


涙が床へ落ちる。


「俺は何も知らなかった。」


ソジュンの瞳を見つめる。


「お前の過去。」


「何があったのか。」


「何を抱えてたのか。」


「何一つ知らなかった。」


声が詰まる。


「俺だけが分かり合えてると思ってた。」


自嘲するように笑う。


「本当にクソだよな。」


「ごめんな。」


また涙が溢れる。


「もっと聞けばよかった。」


「もっと話せばよかった。」


「お前のことなんにも知らなかった。」


「本当に……ごめんな。」


その瞬間。


エディが杖を握る。


木魔法陣が展開される。


『ワールド・ルーツ』


無数の蔦が地面から伸びた。


だが攻撃ではない。


優しく。


壊れないように。


ソジュンの身体を包み込む。


拘束する。


ソジュンは暴れようとする。


だが。


その時だった。


蔦を通じて。


エディの感情が流れ込む。


後悔。


感謝。


悲しみ。


友情。


すべてが。


まるで心に直接届くように。


ソジュンの瞳が揺れた。


初めて。


ほんの少しだけ。


人間らしい感情が戻る。


「……。」


立ち止まる。


闇魔法も消え始める。


エディは涙を流しながら笑う。


「帰ろうぜ。」


「みんな待ってる。」


ソジュンの指が震える。


何かを思い出そうとしている。


その時だった。


玉座の前から低い声が響く。


「情けない。」


全員が振り向く。


ゼノスだった。


冷たい瞳でソジュンを見下ろしている。


「お前の悔しさは。」


「お前の怒りは。」


「そんなものだったのか?」


ソジュンの身体が震える。


ゼノスはさらに言葉を重ねる。


「忘れたのか?」


「お前が受けた仕打ちを。」


「お前を見捨てた者たちを。」


「お前が味わった絶望を。」


黒い魔力がソジュンの周囲に集まり始める。


揺らいでいた瞳が再び濁る。


エディの顔色が変わった。


「やめろ……!」


だがゼノスは笑う。


まるで獲物を追い詰めるように。


「思い出せ。」


「パク・ソジュン。」


「お前の本当の絶望を――。」

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