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ルカ・マーフィーは夜魔法の継承者  作者: 如月


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黒炎の攻略

第五の地獄――大叫喚。


その鉄壁ですら破られた。


ゼノスは崩れ落ちる鉄壁を見つめながら、初めて焦りを感じていた。


今まで数多の魔導士を絶望させてきた。


王国騎士団。


魔法軍。


犯罪組織。


誰一人として第六の地獄に辿り着く前に倒れていった。


だが――。


目の前の学園の生徒たちは違った。


倒れない。


諦めない。


傷ついても立ち上がる。


「……面倒な連中だ。」


ゼノスは静かに呟く。


その瞬間。


漆黒の槍を天へ掲げた。


「ならば。」


巨大な魔法陣が開く。


大広間全体を覆うほどの規模。


「第六の地獄――」


黒紫の炎が揺らめく。


「灼熱。」


ゼノスが静かに呟く。


次の瞬間。


黒炎が爆発した。


ゴォォォォォォォォォォッ!!


黒い炎が大広間を埋め尽くす。


その熱量は今までの地獄とは比較にならなかった。


石壁が溶ける。


鉄が赤熱する。


床がドロドロに溶解していく。


「ぐっ!!」


アルクが咄嗟に風の障壁を展開する。


しかし。


風ごと燃える。


「なっ!?」


アルクの表情が変わった。


普通の炎ではない。


魔力そのものを燃やしている。


ビルも炎の大剣を振るう。


「炎なら炎で押し返す!!」


巨大な火柱を放つ。


しかし。


黒炎は赤い炎を飲み込んだ。


「嘘だろ!?」


ビルが目を見開く。


レオも死霊軍団を展開する。


「行け!!」


数百の死霊が黒炎へ突撃する。


しかし。


触れた瞬間。


消滅。


まるで存在そのものを焼かれたかのようだった。


「死霊まで燃やすのかよ……」


レオの額に汗が流れる。


エディは巨大樹を展開する。


何重もの樹木で仲間たちを守ろうとする。


だが。


バチバチバチッ!!


巨大樹が一瞬で炭になる。


「くっ……!」


エディも歯を食いしばった。


アリスは氷壁を張る。


セドリックは大量の水流を放つ。


だが。


蒸発。


融解。


消滅。


全て押し負ける。


ルカも星壁結界を展開していた。


星の光が皆を守る。


しかし。


パキッ。


パキパキッ。


結界に亀裂が入る。


「まずい……!」


ルカの顔色が変わる。


アクアも重力障壁を展開する。


だが黒炎は重力の壁を押し潰すように広がってくる。


「なんなんだよこれ!!」


オーランドも血魔法で強化した身体で仲間を守ろうとする。


しかし熱波だけで皮膚が焼ける。


雪梅の光魔法も徐々に押され始めていた。


全員が限界だった。


誰も攻撃できない。


ただ耐えるだけ。


それでも少しずつ押し込まれる。


ゼノスはその様子を見ながら言う。


「理解したか。」


「これが地獄だ。」


その言葉に。


誰も反論できなかった。


本当に勝てないかもしれない。


そんな空気が流れ始めた時だった。


入り口から聞き慣れた声が響く。全員が振り向く。


そこには。


ハジメ。


そしてマリアが立っていた。


「ハジメ!」


「マリア!」


レオが目を見開く。


ハジメは眼鏡を押し上げる。


「帰ってくるのが遅すぎるので見に来ました。」


その言葉とは裏腹に。


表情は真剣だった。


黒炎を見つめる。


仲間たちを見る。


ゼノスを見る。


数秒。


そして。


ハジメは状況を理解した。


「なるほど。」


ハジメは黒炎を見つめる。


一度。


二度。


魔法の流れを観察する。


そして。


「そういうことですか。」


眼鏡を押し上げた。


「この炎は燃やしているんじゃない。」


全員が驚く。


「浄化と逆の理屈です。」


「魔力そのものを侵食しながら燃焼している。」


セドリックが理解する。


「だから魔法が効かなかったのか!」


ハジメは頷く。


そして叫んだ。


「アリス先輩!!」


アリスが振り向く。


ハジメは迷いなく言った。


「絶対零度です!!」


アリスの瞳が見開かれる。


そしてすぐに理解した。


「なるほど。」


彼女は微笑む。


「任せて。」


巨大な氷の魔法陣が展開される。


周囲の温度が急降下する。


床が凍る。


空気が凍る。


そして。


黒炎そのものが凍り始めた。


「絶対零度――」


アリスが静かに告げる。


「フローズン・ゼロ。」


キィィィィィィン―――


世界から音が消える。


「マリア!!」


「はーい!先輩ー!」


「雪梅先生!!」


雪梅も即座に反応する。


「ええ!」


神聖魔法陣が輝く。


マリアの精霊魔法。


雪梅の神聖魔法。


二つの力が重なった。


「このまま浄化してください!!」


光が溢れる。


精霊たちが舞う。


神聖な光が絶対零度で侵食を止めた黒炎へ降り注ぐ。


ジュワァァァァァッ!!


黒炎が悲鳴を上げる。


初めて。


第六の地獄が押し返された。


ゼノスの目が見開く。


「なに……?」



その瞬間。


ハジメが叫ぶ。


黒炎が。


地獄の炎が。


完全にただの氷へ変わった。


次の瞬間。


パリンッ―――!!


黒炎が粉々に砕け散った。


全員が息を呑む。


第六の地獄。


灼熱。


完全攻略。


ゼノスの表情が変わった。


初めて。


本当に初めて。


焦りが浮かぶ。


「第六を……破っただと……?」


学園の生徒。


教師。


それだけの戦力で。


地獄を破壊した。


ゼノスは理解した。


このままでは危険だと。


だから。


決断する。


「ならば。」


空間が震える。


「終わらせる。」


今までで最も巨大な魔法陣。


二つ同時に展開された。


大地が悲鳴を上げる。


空気が裂ける。


仲間たちの顔色が変わる。


「まずい……」


レオが呟く。


ゼノスは両腕を広げた。


「第七の地獄――」


黒炎が再び生まれる。


先ほどよりも遥かに濃い。


遥かに熱い。


「大灼熱。」


そして。


もう一つ。


巨大な紫黒の魔法陣。


「第八の地獄――」


世界が歪む。


視界が崩れる。


足場が消える。


落ちる。


どこまでも。


どこまでも。


終わりなく。


「阿鼻。」


全員の視界が暗転した。


気付けば。


誰もが落下していた。


底の見えない奈落。


終わらない落下。


永遠に続く絶望。


それと同時に。


現実世界では。


大灼熱の黒炎が全員へ襲い掛かる。


精神を破壊しながら。


肉体を焼き尽くす。


逃げ場はない。


防ぐ術もない。


ゼノスは静かに見下ろした。


「これで終わりだ。」


学園最強の精鋭たちへ。


最大の絶望が牙を剥いた。

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