レオの実力
ゼノスの姿が消えた。
次の瞬間には、すでにセドリックの目の前。
漆黒の槍――アビスディザーが振り下ろされる。
「っ――!」
セドリックが目を見開く。
避けられない。
そう判断した瞬間だった。
「調子に乗るなよ。」
ドォォォォォン!!
漆黒の魔力が横から割り込んだ。
巨大な闇の壁が出現し、ゼノスの槍を弾き返す。
「レオ!」
セドリックが叫ぶ。
レオはセドリックの前へ立っていた。
紫色の瞳には、いつもの余裕はない。
死霊杖であるネクロノスを強く握りしめている。
「お前は指揮役だろ。」
「死ぬな。」
レオは静かに言った。
その背中を見たセドリックは思わず息を呑む。
レオは一歩前へ出る。
ゼノスは興味深そうに目を細めた。
「ほう。」
「死霊魔法使いか。」
その言葉に、レオの脳裏へ昔の記憶が蘇る。
――悪魔の生まれ変わり。
――呪われた子供。
――あいつに近づくな。
幼い頃。
レオは村の誰からも恐れられていた。
死霊魔法。
闇魔法。
その二つの属性を持って生まれたせいだった。
父親は物心つく前に姿を消した。
残されたのは母親だけ。
二人きりの小さな家。
母は必死に働いた。
どれだけ村人から冷たい目を向けられても。
どれだけ陰口を叩かれても。
レオを守り続けた。
『レオは優しい子よ。』
『誰よりも頑張れる子よ。』
そう言って抱きしめてくれた。
だからこそ。
レオは誓った。
いつか偉大な魔法使いになる。
この力を認めさせる。
自分を馬鹿にした連中を見返してやる。
そして――
母を幸せにする。
そのために学園へ来た。
ブラッククラスに入った。
偏見もあった。
恐れられたこともあった。
それでも努力を続けた。
仲間ができた。
今ではブラック寮も昔よりずっと明るい。
皆が笑っている。
だから。
こんな場所で終わるわけにはいかない。
レオは杖を掲げた。
膨大な魔力が大広間を揺らす。
「俺は――」
闇が広がる。
死霊たちの叫びが響く。
「こんなところで死ぬわけにいかねぇんだよ!!」
ドゴォォォォォォン!!
《上位魔法・レギオン・オブ・デス》
無数の骸骨兵が地面から現れる。
何百。
何千。
まるで死者の軍勢。
続けて。
《上位魔法・アビス・イクリプス》
巨大な闇の球体が形成される。
光を飲み込み。
空間そのものを歪ませる。
さらに。
《シャドウ・ネクロマンス》
闇と死霊を融合させた複合魔法。
骸骨兵たちの身体に黒い炎が宿る。
「母さんに恩返しもしてねー!!」
「まだ夢も叶ってねぇ!!」
「俺は――負けねぇんだよ!!」
レオの叫びと共に。
死者の軍勢が一斉にゼノスへ襲い掛かった。
闇の鎖。
死霊の呪詛。
黒炎の斬撃。
四方八方から迫る猛攻。
セドリックも思わず息を呑む。
アルクですら目を見開いた。
「すごい……。」
エディも呟く。
「これがブラック寮長の実力か。」
しかし。
ゼノスは笑った。
まるで待っていたかのように。
「面白い。」
その瞳が妖しく輝く。
足元に巨大な黒紫色の魔法陣が浮かび上がった。
「ならば見せてやろう。」
「第一の地獄。」
地面が震える。
空気が軋む。
死霊たちが悲鳴を上げた。
そしてゼノスは槍を掲げる。
「――等活。」
ゴォォォォォォォォォッ!!
無数の黒槍を持った亡きものたちが魔法陣から生み出された。
一本や二本ではない。
数百。
数千。
まるで地獄そのものが牙を剥いたように。
槍の軍勢がレオの死霊軍団へ向かって降り注いだ――。




