指揮官セドリック
ゼノスの背後に浮かぶ九つの地獄魔法陣。
その圧倒的な魔力に誰もが息を呑む。
しかしアルクは一歩前へ出た。
魔導剣を抜き、静かに構える。
レオは杖を掲げる。
エディは杖を床へ突き立てた。
そしてセドリックは全体を見渡していた。
(正面から勝てる相手じゃない……)
(なら、俺の役目はみんなのサポートか)
ゼノスが薄く笑う。
「来ないのか?」
次の瞬間。
姿が消えた。
「アルク先生!!右!!」
セドリックが叫ぶ。
アルクは反射的に剣を振る。
ガギィィィィン!!
黒槍と魔導剣が激突した。
凄まじい衝撃波が走る。
「見えたのか!?」
アルクが驚く。
「見えたんじゃありません!嫌な予感がしただけです!」
セドリックは一流の感知能力の持ち主であった。
敵の魔力の流れ。
空気の揺れ。
殺気。
それらを無意識に感じ取っている。
ゼノスは少し興味深そうに目を細めた。
「ほう。」
その隙を逃さない。
レオが杖を掲げる。
「闇魔法――ダーク・グラスプ。」
無数の闇の腕がゼノスへ伸び、拘束する。
さらに。
「死霊魔法――スケルトン召喚。」
大量の骸骨兵たちが一斉に襲い掛かった。
しかし。
ゼノスは槍を一振り。
闇も死霊もまとめて吹き飛ばされる。
「弱い。」
だがその瞬間。
床が割れた。
「今だよ!」
エディが叫ぶ。
《グランド・アンカー》
巨大な岩柱がゼノスの足元から突き出し、敵の動きを封じる。
さらに。
《ワールド・ルーツ》
無数の大量の根絡みつく。
「動きを止める!」
木と土の魔法が重なり、ゼノスを拘束しようとする。
セドリックはすぐに次の行動へ移る。
「レオ!」
「分かってる。」
《シャドウ・ヴェール》
あたり1面に真っ暗な闇が広がる。
ゼノスの視界を奪う。
その瞬間。
セドリックは杖を振るった。
《ウィンド・ブースト》
強烈な風がアルクを包む。
「先生!」
アルクが笑う。
「助かる!」
身体能力が一気に上昇する。
さらに。
《マリン・エンハンス》
水の補助魔法が重なり、アルクの能力がさらに向上した。
アルクの剣が青く輝いた。
「行くぞ!!」
爆発的な速度で接近。
魔導剣が唸りを上げる。
ドォォォォン!!
ゼノスの槍とぶつかり合った。
その衝撃で大広間が揺れる。
しかし。
ゼノスの表情は変わらない。
むしろ楽しそうだった。
「なるほど。」
「剣士。」
「支援。」
「拘束。」
「妨害。」
「よく考えられている。」
セドリックは嫌な汗を流した。
褒められているわけじゃない。
分析されている。
そう理解したからだ。
そしてゼノスの背後で巨大な魔法陣が輝く。
セドリックは即座に叫んだ。
「レオ先輩!上!」
「エディ先輩!後ろ!」
「アルク先生!前です!!」
全員が反応する。
レオは死霊の壁を展開。
エディは巨大樹を召喚。
アルクは剣を構える。
その姿を見たゼノスは初めて口元を吊り上げた。
「面白い。」
「お前は戦う者ではないな。」
紫色の瞳がセドリックを見据える。
「指揮官か。」
その言葉にセドリックの背筋が凍った。
敵は気付いた。
この場で最も厄介なのが自分だと。
そして次の瞬間――
ゼノスの姿が消えた。
その進行方向は。
真っ直ぐセドリックだった――。




