ついに最深部へ
地下深く——。
崩れた回廊を抜けた先。
ルカ、ノア、サラの三人は、ようやく巨大な空間へ辿り着いていた。
「……ここ……」
ルカが息を呑む。
そこはまるで神殿のような大広間だった。
天井は遥か高く、古代文字が刻まれた巨大な柱が並んでいる。
淡い青白い魔力光が空間全体を照らし、静寂の中には重々しい魔力の気配が漂っていた。
そして。
その奥にあったものを見た瞬間——
ルカの瞳が大きく揺れる。
「……真実の扉……!」
巨大な扉。
入学試験の時に通った、あの扉だった。
神秘的な紋様。
空間を歪ませるほど濃密な魔力。
間違いない。
この学園の最深部。
核心だった。
だが。
その扉の前で横たわる人物を見た瞬間、ルカの表情が変わる。
「——お祖父様!!」
駆け出す。
倒れていたのは学園長、エドワード・エンシミオだった。
ローブは破れ、身体中に傷が走っている。
ルカは膝をつき、その肩を強く揺すった。
「お祖父様!!」
返事はない。
「しっかりして……!」
震える声。
だが。
胸へ手を当てたノアは、僅かに息を吐く。
「……息はある」
生きている。
だが意識がない。
サラも慌てて駆け寄る。
「酷い怪我……」
ノアは周囲を警戒しながら低く言った。
「ここは危険だ」
静かな声だったが、強い緊張が滲んでいた。
「早くお祖父様を連れて戻るぞ」
ノアは即座に魔法陣を展開する。
地面が揺れ。
巨大な土ゴーレムが姿を現した。
「運べ」
命令と同時に、ゴーレムが優しく学園長を抱え上げる。
ルカは何度も祖父を振り返りながら立ち上がった。
「急ごう……!」
三人は早足でその場を離れようとする。
だが——
その瞬間だった。
「……どこへ行く?」
低い声。
背筋が凍る。
三人の足が止まった。
前方。
大広間の出口付近。
いつの間にか、一人の男が立っていた。
「っ……!」
ノアの表情が険しくなる。
異常だった。
身長は高い。
痩せ細った身体。
黒いローブ。
深く被ったフードのせいで顔は見えない。
だが。
そこに“立っているだけ”で空気が歪んでいる。
圧倒的な魔力。
まるで空間そのものが男を拒絶しているかのようだった。
サラが息を呑む。
「……なに、この魔力……」
肌が粟立つ。
呼吸が重い。
立っているだけなのに、本能が警鐘を鳴らしていた。
——危険。
今までの敵とは次元が違う。
ルカも無意識に後退る。
心臓が嫌な音を立てていた。
男はゆっくりと顔を上げる。
フードの奥。
闇の中で、僅かに紅い瞳だけが光った。
その瞬間。
空気が震えるほどの魔力が広間全体へ広がった。




