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ルカ・マーフィーは夜魔法の継承者  作者: 如月


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満身創痍

崩壊した地下空間から、生徒会の面々は辛うじて地上へ戻ってきていた。


誰もが満身創痍だった。


制服は裂け、身体には無数の傷。


魔力消耗も激しく、立っているだけでも限界に近い。


特にジョシュアは最後の迷路破壊で膨大な土魔力を使い切っており、呼吸すら重かった。


それでも彼は歯を見せて笑う。


「……はは、さすがに今回はキツかったな」


その背後では、巨大な土魔法のゴーレムたちが黙々と負傷者を運び出していた。


ジョシュアが最後に残った魔力で生み出した搬送用ゴーレム。


崩れた地下から、ヒューゴ先生やアーサー先生を慎重に抱え上げ、保健室へと運んでいく。


その姿を見た教師たちですら息を呑んだ。


そこまでしてなお、生徒たちを優先する。


それが今の生徒会だった。


保健室では雪梅が休む暇もなく治療にあたっていた。


白衣は既に血と魔力光で汚れている。


額には汗。


それでも彼女は一切手を止めない。


「次!早くこっちに寝かせて!」


回復魔法陣が次々と展開される。


淡い翠色の光が傷を塞ぎ、魔力の循環を整えていく。


ブラッククラスの面々も、それぞれ治療を受けながら保健室内で休息していた。


アリスは壁際で静かに目を閉じ。


エディはベッドに横になったまま、珍しく完全に無言だった。


オーランドも全身に包帯を巻かれていた。


そして今。


雪梅はアクアの回復治療を行っていた。


アクアの身体には激しい魔力負荷の痕跡が残っている。


回復魔法を流し込みながら、雪梅は小さく息を吐いた。


「……無茶しすぎよ、本当に」


その少し離れた場所。


リアムは肩を貸されながら歩いていた。


支えているのはセドリックだった。


リアムはまだ完全には回復していない。


光雷魔法の反動が大きすぎたのだ。


「……悪い」


「気にするな」


短いやり取り。


だがセドリックの表情には、いつもの余裕がなかった。


彼は静かに周囲を見渡す。


そして低い声で尋ねた。


「……ノアとルカは?」


その場の空気が少しだけ重くなる。


ジョシュアが顔を上げた。


「いや、まだ来てない」


キラも静かに目を開ける。


「連絡もないね」


セドリックは小さく息を吐いた。


ノアなら無茶はしない。


冷静で、状況判断にも優れている。


だが問題はルカだった。


(……ルカは怪我していないだろうか)


脳裏に浮かぶのは、まだ幼さの残る弟の姿。


強くなろうと必死で。


誰かを守ろうとして。


無茶ばかりする。


セドリックは無意識に拳を握っていた。



(……まだ未完成だ)


あの力は危険すぎる。


制御が不安定なまま暴走すれば、敵味方関係なく被害が出る可能性すらある。


だからこそ。


今、動くべきか。


待つべきか。


セドリックは判断を迫られていた。


ここにいるメンバーの回復を待ち、総動員で突入するか。


警備隊の到着を待つか。


あるいは――。


まだ動ける自分たちだけで先へ進むべきか。


保健室の窓の外では、夜空に不穏な魔力光が揺れている。


敵はまだ終わっていない。


むしろ、これからが本番なのだと。


誰もが感じていた。

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