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ルカ・マーフィーは夜魔法の継承者  作者: 如月


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戦闘の結末

紫黒の魔力が迷路の石壁に反射し、不気味な残響を響かせていた。


キラ・エトワールは静かに息を吐き、紫色の瞳を細める。


「……厄介だね」


目の前に立つ敵は、かなりの速さ、強さを誇る相手だ。


次の瞬間、敵の姿が消えた。


「っ――!」


キラは即座に後方へ跳ぶ。


直後、先ほどまで立っていた場所を双剣の斬撃が抉り取った。


石畳が砕け、紫電のような火花が散る。


キラは指先を軽く動かした。


「――ミラージュ・ファントム」


無数の幻影が周囲へ展開される。


同じ姿、同じ気配。


敵は一瞬だけ動きを止めた。


その隙を逃さず、キラは闇魔法を放つ。


「ダーク・グラスプ!」


漆黒の腕が床から伸び、敵の脚へ絡みつく。


さらに追撃。


「シャドウ・ラビリンス」


足元から幾何学模様の魔法陣が広がり、視界そのものが歪んでいく。


敵の周囲に無数の通路と偽の景色が生まれた。


上下感覚すら狂わせる高位幻影魔法。


敵は舌打ちする。


「幻術か……!」


その瞬間、キラは背後へ回り込んでいた。


「遅いよ」


闇を纏った短剣が敵の肩を切り裂く。


血が舞う。


だが敵は強引に双剣から魔力を爆発させ、幻影空間そのものを破壊した。


衝撃波がキラを吹き飛ばす。


「くっ……!」


壁へ叩きつけられる。


だが、キラは着地と同時に再び魔法を展開した。


「イリュージョン・ヴェール」


自身の姿が霧のように消える。


敵の視界には何十人ものキラが映り込んでいた。


右から。


左から。


天井から。


無数の闇弾が襲い掛かる。


「ダーク・スフィア!」


紫黒の魔力球を連続で炸裂させ、爆発させ、


爆煙が広がる。


しかし。


煙の中から敵が飛び出した。


「甘いッ!!」


漆黒の槍がキラの脇腹を貫く。


「っ……ぁ……!」


血が飛び散る。


キラの身体が大きく揺れた。


それでも彼は笑う。


「……ふふ、痛いなぁ」


敵が眉をひそめる。


その瞬間だった。


敵の足元に浮かび上がる紫色の紋章。


「――メモリー・イリュージョン」


キラが密かに仕掛けていた幻影魔法。


敵の脳へ直接干渉し、一瞬だけ認識を狂わせる。


敵の視界に、存在しないセドリックとジョシュアの姿が映る。


敵が反応した、その僅かな隙。


キラは闇魔法を最大出力で叩き込んだ。


「ナイトメア・インパクト!!」


轟音。


紫黒の衝撃が敵を吹き飛ばす。


石壁を何枚も突き破り、迷路全体が揺れた。


キラは荒く息を吐く。


腕は震え、魔力も限界に近かった。


「……化け物だね、本当に」


だが敵は、なお立ち上がる。


全身を闇に包みながら、ゆっくりと笑った。


「貴様も十分異常だ」


直後。


敵の魔力が爆発的に膨れ上がる。


黒い奔流が迷路を侵食し始めた。


キラは咄嗟に幻影障壁を展開する。


しかし防ぎきれない。


黒い衝撃波が直撃した。


「がっ……!」


床を転がる。


制服は裂け、腕から血が流れていた。


呼吸が苦しい。


視界も滲む。


それでもキラは倒れない。


「……まだ、時間稼ぎくらいはしないとね」


立ち上がった、その時だった。


――ゴゴゴゴゴゴッ!!!


迷路全体が激しく震えた。


敵が目を見開く。


「なに……?」


次の瞬間。


轟音と共に地面が爆散した。


巨大な亀裂が走り、石壁が次々と崩壊していく。


「うおおおおおおおおっ!!」


響いたのは、ジョシュアの咆哮だった。


土魔法によって砕かれた地盤が迷路そのものを崩壊させていく。


岩壁が吹き飛び、土煙の向こうからジョシュアが現れる。


「キラ!無事か!」


「……ギリギリね」


その直後、別方向から水流が駆け抜けた。


「二人とも下がれ!」


セドリック・マーフィー。


彼の周囲を、水と風の魔力が渦巻いていた。


三人が、ようやく合流した。


三人が合流した瞬間。


迷路だった空間は、半壊した巨大な地下広間へと姿を変えていた。


崩れた石壁。


舞い上がる粉塵。


裂けた地面からは魔力光が漏れ、不気味な紫色に脈動している。


その中心で、敵はゆっくりと立ち上がった。


「……なるほど。これが生徒会か」


肩から血を流しながらも、その魔力は衰えていない。


むしろ、さらに濃くなっていた。


双剣に魔力が込められ、周囲の空間にすら広がる魔力


空気が重い。


息を吸うだけで肺が焼けるようだった。


ジョシュアが前へ出る。


「セドリック。作戦は?」


セドリックは敵を見据えたまま答える。


「正面から押し切るのは危険だ。キラ、敵の感覚を乱せるか?」


「……数秒なら」


「十分だ」


キラは小さく笑う。


「了解、生徒会長」


次の瞬間。


ジョシュアが地面を蹴り砕いた。


「行くぞォ!!」


爆発的な脚力。


土魔法による身体強化。


巨体とは思えない速度で敵へ突っ込む。


敵も迎え撃つように黒槍を生成した。


激突。


轟音。


ジョシュアの拳と黒槍が真正面からぶつかる。


衝撃波で地面が陥没した。


「ぐっ……!」


ジョシュアが押し返される。


だが、その瞬間。


「――イリュージョン・ヴェール」


キラの幻影魔法が発動。


敵の視界が歪む。


ジョシュアが三人に増えた。


左右から同時に拳が迫る。


敵は一瞬だけ反応を迷う。


そこへ。


「アクア・リストレイン」


水流が敵の足へ巻き付いた。


さらに。


「ウィンド・ブレード」


風刃が死角から襲い掛かる。


セドリックの魔法連携。


敵は舌打ちしながら黒い石壁を展開した。


だが。


「今だ!」


ジョシュアが拳を叩き込む。


「グラウンド・ストライク!!」


大地が爆ぜる。


土石の衝撃が敵を吹き飛ばした。


敵の身体が壁へ激突する。


広間全体が揺れた。


しかし。


「まだだァァ!!」


敵が咆哮する。


敵の魔力が周囲を飲み込む。


セドリックが即座に前へ出る。


「キラ、ジョシュア!」


「分かってる!」


三人が同時に魔力を展開した。


水。


風。


土。


闇。


幻影。


五属性の魔力が激突する。


空間そのものが悲鳴を上げていた。


キラは歯を食いしばる。


限界が近い。


視界も霞む。


それでも魔法を止めない。


「……まだ、倒れるわけにはいかないんだよ」


幻影を重ねる。


敵の感覚を狂わせる。


上下左右。


距離感。


魔力感知。


全てを少しずつズラしていく。


その隙にセドリックが動いた。


敵をある方向へ誘導するように。


水流で退路を制限し。


風で視線を逸らす。


ジョシュアは正面から圧力をかけ続ける。


敵は気づかない。


崩れた瓦礫の陰。


そこに、倒れていたはずのリアムがいることを。


セドリックだけは感じていた。


静かに。


鋭く。


研ぎ澄まされていく魔力を。


「――そろそろだ」


敵がセドリックへ突撃する。


黒槍が振り下ろされる。


セドリックは紙一重で回避。


さらに一歩後退した。


敵は追う。


その瞬間。


瓦礫の奥で。


ゆっくりと、リアムが目を開けた。


紫電が走る。


雷が空気を裂いた。


「――ライトニングッスピア!」


低い声と同時に。


雷の槍による雷撃が一直線に敵を貫いた。


「なっ――!?」


完全な死角。


完全な油断。


敵の胸部が雷槍によって貫通される。


内部から破壊された魔力回路が暴走し、全身へ亀裂が走った。


敵は大きく目を見開く。


そのまま膝をついた。


ジョシュアが息を呑む。


「リアム……!」


キラは小さく笑った。


「……最後だけ全部持っていくんだから」


リアムは荒い呼吸のまま壁にもたれかかる。


「……うるせぇ」


セドリックだけは静かに敵を見下ろしていた。


倒れた敵は血を吐きながら、不気味に笑う。


「お前たち……きっと後悔するぞ……」


その言葉を最後に。


敵の身体は崩れ落ち、動かなくなった。


静寂。


だが。


誰一人として油断していなかった。


この敵は、“前座”に過ぎない。


本当に危険なのは――。


まだ、この学園の奥にいる。


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