表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルカ・マーフィーは夜魔法の継承者  作者: 如月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/98

分断

轟音が絶え間なく空間へ響き渡る。


暴風が吹き荒れ、水刃が空を裂き、土壁が砕け散る。


闇が揺らぎ、幻影が幾重にも広がる中、双剣の斬撃だけが鋭く閃いていた。


セドリックが風魔法で敵の動きを制限する。


「ウィンド・プレッシャー!」


暴風が敵を押し潰すように吹き荒れる。


その隙を狙い、ジョシュアが地面を砕きながら突撃した。


「アース・インパクト!!」


強化された土拳が振り下ろされる。


だが敵は双剣を交差させ、その衝撃を真正面から受け止めた。


凄まじい衝撃波が広がる。


床が割れ、壁に亀裂が走る。


「……っ!」


ジョシュアが顔をしかめる。


重い。


受け止めた感触が、まるで鋼鉄の塊だった。


その瞬間、敵の背後に無数の幻影が現れる。


キラだった。


「ダーク・ミラージュ」


紫の瞳が妖しく光る。


敵の視界に偽の景色を映し出し、一瞬だけ認識を狂わせる。


「そこだ!」


セドリックが水槍を放つ。


幾重にも圧縮された高密度の水刃が一直線に飛ぶ。


敵は咄嗟に回避するが、完全には避けきれない。


肩口を浅く切り裂かれ、血ではなく黒い魔力粒子が散った。


「……チッ」


初めて敵が舌打ちした。


だが、生徒会側も決して余裕ではなかった。


セドリックの呼吸は徐々に荒くなっている。


ジョシュアの拳には細かな震えが出始めていた。


キラも幻影維持による精神消耗で額に汗を浮かべている。


決定打がない。


どれだけ攻撃を重ねても、あと一歩届かない。


敵もまた疲弊していた。


三対一。


しかもここまでの連戦。


流石の敵も体力消耗は隠しきれていない。


肩で息をしながら、男は周囲を一瞥する。


「……あいつら、戻ってこないな」


低く呟く。


ルカと戦っていた影魔法使い。


アクアと交戦していた槍使い。


誰一人戻ってこない。


「……やられたか」


フードの奥で目を細める。


想定より状況が悪い。


このまま長引けば、自分も消耗し切る。


そして何より――。


“ボス”の元へ向かわなければならない。


真実の扉。


魔石。


今回の作戦の核心。


ここで足止めを受け続ければ、計画そのものが破綻しかねなかった。


「なら――」


敵の魔力が膨れ上がる。


双剣を地面へ突き刺した。


「錬金術――ストーン・ラビリンス」


ゴゴゴゴゴゴ――ッ!!


地面が激しく揺れる。


次の瞬間。


巨大な石壁が次々と隆起した。


「なっ……!?」


ジョシュアが目を見開く。


壁は迷路のように空間を分断し、生徒会の三人を強制的に引き離していく。


セドリックの前に石壁。


キラの横にも石壁。


ジョシュアの退路すら閉ざされる。


完全な分断。


「セドリック!!」


キラの声が響く。


だが壁は分厚く、魔力まで遮断していた。


敵の狙いは明白だった。


三対一では勝ち切れない。


ならば――。


一人ずつ潰す。


フードの男は静かに笑う。


「さて……まずは誰から殺るか」


轟音と共に隆起した石壁は、生徒会の三人を完全に分断した。


迷路のように入り組んだ石の通路。


天井すら見えない閉鎖空間。


魔力の流れまで遮断されているのか、仲間の気配すら感じ取れない。


「ジョシュア! キラ!」


セドリックが声を張る。


だが返事はない。


静寂だけが返ってきた。


「……厄介な」


セドリックは冷静に周囲を見渡した。


感情的に動けば敵の思う壺。


まずは状況把握。


それが生徒会長としての判断だった。


彼は静かに杖を掲げる。


「ウォーター・ストリーム」


足元に小さな水流が生まれる。


その水を通路へ少しずつ流し始めた。


水は緩やかに床を伝い、分岐へ広がっていく。


「……これでいい」


水は通った道へ薄く跡を残す。


来た道へ戻らないための目印。


さらに、水流の動きで空間の傾斜や行き止まりも把握できる。


セドリックは慎重に歩き始めた。


だが迷路は異様だった。


曲がったはずの道が別の位置へ繋がっている。


同じ景色が繰り返される。


まるで空間そのものが歪められているかのようだった。


「……錬金術だけじゃないな」


敵は単純な石壁を作ったわけではない。


幻惑や空間干渉まで組み込まれている。


セドリックは眉を寄せた。


一方その頃――。


「ッラァ!!」


轟音が響き渡る。


ジョシュアが巨大な拳を石壁へ叩き込んでいた。


土魔法で強化された拳撃。


普通の壁なら一撃で粉砕できる威力。


しかし。


ドゴォッ!!


衝撃音だけが響き、壁には傷一つつかない。


「硬ぇな……!」


ジョシュアが舌打ちする。


続けざまに土槍を叩き込む。


「アース・ランス!」


岩槍が壁へ激突する。


だが結果は同じだった。


ヒビすら入らない。


「……普通の石じゃねぇな」


ジョシュアは拳を握り締める。


魔力で異常強化された特殊鉱石。


しかも迷路全体へ魔力が循環している。


下手に一点だけ壊しても再生される可能性が高い。


「だったら……」


ジョシュアはゆっくり腰を落とした。


手を床へ当てる。


「地面そのものを砕くしかねぇ」


土魔法が地中へ流れ込む。


迷路全体へ微細な振動を走らせ、地盤構造を探っていく。


迷路ごと崩壊させる。


それが最短だと判断した。


その頃。


キラは静かに立ち止まっていた。


薄暗い石通路。


前方の闇の中から、ゆっくりと足音が響く。


カツ……カツ……。


やがてフードの男が姿を現した。


双剣を肩へ担ぎながら、不気味に笑う。


「まずはお前だ」


キラは静かに杖を構える。


紫の瞳が細められた。


「……わざわざ私を選んだの?」


「幻影魔法は厄介だからな」


男が低く笑う。


「先に潰しておきたい」


空気が張り詰める。


闇と闇がぶつかるような、冷たい殺気。


キラは小さく息を吐いた。


そして静かに魔力を解放する。


「後悔しないでね」


次の瞬間――。


闇が爆発するように広がった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ