ルカの考え
地下通路に響く轟音。
影が這い、星光が弾ける。
ルカは絶え間なく動き続けていた。
「っ――!」
床の影から飛び出した黒い刃を回避する。
直後、壁の影から鎖。
さらに天井から黒槍。
息をつく暇すらない。
ルカは回避しながら杖を強く握り締めた。
杖の先端。
星核石へ、ゆっくり魔力を送り込む。
ジジジ……と星光が灯り始める。
「逃げてばっかじゃん!」
黒布の男が笑う。
影の中を滑るように移動しながら、次々と攻撃を放ってくる。
だがルカは反撃しない。
いや――できなかった。
(まだ足りない……)
星の光。
もっと強く。
もっと濃く。
影魔法を消し飛ばせるほどの光が必要だった。
ルカは走りながら空を見上げる。
地下通路の崩壊で天井が一部砕け、夜空が覗いていた。
無数の星々。
静かに輝いている。
(あの星全部の光を……)
一点へ集められれば。
影魔法すら押し潰せる。
だが問題があった。
(光を集束させるには……)
ただ魔力を練るだけじゃ足りない。
星光は拡散する。
一点へ導かなければならない。
その時だった。
ルカの脳裏に、以前読んだ古代魔法書の一節が浮かぶ。
――“光は鏡によって導かれる”。
「……鏡」
ルカが小さく呟く。
四方へ鏡を置き、星光を反射させる。
それなら一点へ光を集束できるかもしれない。
だが。
「……無理だ」
ルカには鏡を生成する能力がない。
土魔法も。
錬成魔法も使えない。
その瞬間。
影の槍が目前へ迫った。
「っ!!」
ルカは咄嗟に身体を捻る。
槍が頬を掠め、後方の壁を貫いた。
「考え事してると死ぬよー?」
黒布の男がケラケラ笑う。
ルカは歯を食いしばりながら走る。
崩れた通路。
瓦礫。
地下水。
その時。
床に広がる水溜まりが視界へ映った。
「――あ」
一瞬。
ルカの瞳が見開かれる。
水面。
そこへ夜空の星が映り込んでいた。
「……そうか」
鏡じゃなくていい。
反射できれば。
光を映せれば。
「水面……!」
ルカの脳裏で、一気に術式が繋がる。
星光を空から集める。
それを水面へ反射。
さらに多重反射で一点へ収束。
夜魔法なら可能かもしれない。
黒布の男が再び影を放つ。
ズズズズズッ!!
黒い腕がルカを捕まえようと迫る。
ルカはギリギリで跳躍。
水溜まりを蹴りながら通路を駆け抜ける。
(必要なのは位置……!)
星が見える場所。
十分な水面。
そして敵を誘導できる空間。
ルカは攻撃を回避し続けながら、必死に周囲を見渡した。
背後では黒布の男が楽しそうに笑っている。
「逃げ回ってばっかだけどさぁ――」
影が地下空間を埋め尽くす。
「何企んでるの?」




