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ルカ・マーフィーは夜魔法の継承者  作者: 如月


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夜魔法の相性

 爆発によって崩れた地下通路。


 砕けた瓦礫の中で、ルカは荒く息をしていた。


「はぁ……っ……」


 対する黒布の男は、まるで楽しむように笑っている。


「いいねぇ、今の」


「でもさ――」


 男の身体がゆらりと影へ沈む。


「俺には当たらない」


 ゾワッ――。


 次の瞬間。


 ルカの真後ろから黒い影が飛び出した。


「っ!!」


 咄嗟に回避。


 鋭い影の刃がルカの頬に傷をつけ、壁を切り裂く。


 男は影の中を自由自在に移動していた。


 まるで地下空間全体が奴の身体そのもののようだった。


「くっ……!」


 相性が悪い。


 夜魔法は広範囲殲滅と高火力。


 だが相手は“影そのもの”。


 攻撃しても影へ潜られれば決定打にならない。


 しかも。


 影からの奇襲が異常に速い。


「どこ見てんの?」


 声。


 左。


 ルカが反応した瞬間、床の影から黒い腕が飛び出した。


「――っ!」


 足首を掴まれる。


 直後。


 影の槍が目前まで迫っていた。


「《星壁結界》!!」


 ドォン!!


 星壁に激しくぶつかる。

衝撃でルカの身体が吹き飛んだ。


 床を転がりながら距離を取る。


「ははっ! 反応いいじゃん!」


 男は楽しそうに笑う。


 完全に遊ばれていた。


 ルカは歯を食いしばる。


「なら……!」


 右手を振り上げる。


 夜空に星光が浮かび上がった。


「《星座連弾》!!」


 四つの星座が同時展開される。


 夏の大三角形。


 冬の大三角形。


 北斗七星。


 オリオン座の矢。


 星々が一斉に輝いた。


「撃てぇぇ!!」


 無数の星光弾が地下通路を埋め尽くす。


 流星群のような連撃。


 逃げ場を消すほどの広域攻撃。


 だが。


 黒布の男は笑った。


「甘いって」


 シュンッ――。


 男の身体が影へ沈む。


 星光弾は壁や床を穿つだけだった。


 爆発。


 轟音。


 地下空間がさらに崩壊していく。


 しかし敵は捕まらない。


 次の瞬間。


 ルカの真下の影が膨れ上がった。


「っ!?」


 大量の黒い鎖が飛び出す。


「うわっ――!」


 ルカは後方へ跳躍。


 だが完全には避けきれない。


 鎖が腕を掠める。


 冷たい感触。


 嫌な魔力。


 動きが一瞬鈍る。


「捕まえた」


 背後。


 黒布の男が既に立っていた。


「《シャドウ・グラブ》」


 ズズズズズッ!!


 無数の影がルカへ殺到する。


「くっ……!!」


 ルカは星光を無数の影に爆発させ無理やり振り払う。


 しかし。


 その隙にまた男は影へ消える。


「はははっ!!」


 笑い声だけが響く。


「いいねぇ、夜魔法!」


「でもさぁ――」


 声が四方八方から聞こえる。


「お前、俺みたいなタイプ苦手でしょ?」


「……っ」


 図星だった。


 広範囲攻撃は当たらない。


 捕縛しても影化で抜けられる。


 しかも敵は地下全域の影を利用できる。


 ルカは徐々に追い込まれていた。


 魔力消費も激しい。


 呼吸が荒くなる。


 それでもルカは杖を握り締めた。


 負けられない。


 アクアも。


 リアムも。


 命を懸けて戦っている。


 自分だけ止まるわけにはいかなかった。


 ルカの周囲に再び星光が集まり始める。


 それを見た黒布の男が、楽しそうに笑った。


「いいよ」


「もっと見せてよ、夜魔法――」


 崩れた地下通路。


 星光と影が激しくぶつかり合う中、ルカは荒く息をしていた。


「はぁ……っ……」


 敵は強い。


 いや、それ以上に相性が悪かった。


 星光弾も。


 星座連弾も。


 星導結界すら、影へ潜られれば決定打にならない。


 黒布の男は笑いながら影の中を移動し続ける。


「どうしたのー?」


「さっきの勢いなくなってるよ?」


 次の瞬間。


 影の槍が床から突き上がった。


「っ!!」


 ルカは咄嗟に後方へ跳ぶ。


 だが避けた先にも影。


 壁の影から黒い刃が飛び出す。


「くっ……!」


回避したが

 床に転がり、痛みでルカは歯を食いしばる。


(どうする……)


 影魔法。


 闇に潜り、闇から攻撃する魔法。


 夜魔法と近い。


 だからこそ厄介だった。


 夜そのものが敵の味方になっている。


(影魔法は……普通なら光に弱い)


 だが。


 ルカには光魔法が使えない。


 夜魔法だけ。


 星と夜を扱う禁忌魔法。


 黒布の男が再び影から現れる。


「考え事?」


 影の鎖が迫る。


 ルカは回避しながら星光弾を放つ。


 だがまた影へ逃げられる。


(星の光……)


 ルカの脳裏に、星導結界の光景が浮かぶ。


 六芒星。


 収束。


 爆発。


 あの瞬間だけ、敵の影が僅かに揺らいでいた。


(……星の光をもっと凝縮できれば)


 星は光だ。


 夜魔法は闇だけじゃない。


 星光もまた夜魔法の本質。


(強い光として使えれば……)


 影を抑え込めるかもしれない。


 ルカの瞳が鋭くなる。


「なら……試す」


「ん?」


 黒布の男が首を傾げた瞬間。


 ルカは大量の星光弾を展開した。


「《星光弾》!!」


 無数の光弾。


 だが今回は違う。


 放たれた星光弾が空中で停止する。


「お?」


 男が笑う。


 次の瞬間。


 ルカは両手を握り込んだ。


「収束――!」


 ギュゥゥゥゥッ!!


 星光が一点へ圧縮される。


 通常より遥かに濃い星の光。


 地下空間が青白く輝き始めた。


 黒布の男の影が僅かに揺らぐ。


「……へぇ?」


 ルカはそのまま光を放つ。


「《星閃》!!」


 ドォォォン!!


 極太の星光が地下通路を貫いた。


 影が吹き飛ぶ。


 黒布の男も咄嗟に影へ潜る。


 だが。


「っ……!」


 初めて男の声に焦りが混じった。


 影の移動速度が一瞬鈍る。


(やっぱり……!)


 効いている。


 完全ではない。


 だが強い星光は影を削れる。


 ルカはさらに魔力を練る。


 しかし。


 バチッ――!!


「っ!?」


 凝縮しすぎた星光が暴走した。


 ルカの手の中で小爆発が起きる。


 魔力制御が追いつかない。


「危なっ!」


 その隙を黒布の男は逃さない。


 影がルカの背後から迫る。


「《シャドウ・ファング》」


「っ!!」


 ルカは咄嗟に星光を散らし、防御へ転換。


 衝撃で再び吹き飛ばされた。


 壁へ激突。


 肺から息が漏れる。


「まだ未完成かぁ」


 男が笑う。


「でも今の面白いね」


 ルカは立ち上がる。


 息は荒い。


 魔力消費も激しい。


 だが瞳はまだ死んでいなかった。


(まだ足りない)


(もっと星を――)


(もっと強く……)


 ルカの周囲へ、再び無数の星光が集まり始める。


 地下空間が青白く輝く中、黒布の男は楽しそうに笑った。


「ははっ……!」


「いいよ、その顔」


「もっと本気で来いよ、夜魔法使い」




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