悲しみの戦闘
地下通路が震えていた。
レオの死霊魔法。
ソジュンの闇魔法。
二つの禍々しい魔力が激突し、空気そのものが軋んでいる。
ゴォォォォ……。
黒霧が広がる。
レオの背後に無数の亡霊が浮かび上がった。
人型。
獣型。
巨大な異形の霊体までもが、低いうなり声を漏らしている。
対するソジュンの周囲には、底の見えない闇が渦巻いていた。
まるで光そのものを呑み込むような黒。
ソジュンは静かに杖を構える。
「……行きます」
次の瞬間。
ズドォォォン!!
闇の奔流が一直線に放たれた。
通路を埋め尽くすほどの規模。
しかし。
レオは一歩も動かない。
「喰え」
亡霊達が一斉に前へ飛び出した。
ギャァァァァッ!!
無数の霊体が闇へ食らいつく。
闇と死霊が激突した瞬間、凄まじい衝撃波が地下通路を吹き抜けた。
壁に亀裂が走る。
床が砕ける。
だが。
互角。
どちらも押し切れない。
ソジュンが目を細めた。
「相変わらず規格外ですね、レオ先輩」
レオは低く笑う。
「お前こそな」
次の瞬間。
レオが片手を振り上げた。
ゴォォォッ!!
亡霊達が一斉に襲いかかる。
黒い霧の中から飛び出す無数の影。
死霊の群れ。
ソジュンは杖を地面へ突き立てた。
「ダーク・ウォール」
闇の壁が展開される。
しかし。
バキバキバキッ!!
亡霊達が壁へ噛みつき、侵食し始めた。
「ッ……!」
ソジュンが後退する。
レオは逃がさない。
「終わりだ」
巨大な死霊が姿を現した。
地下通路の天井近くまで届く異形。
空洞の眼窩がソジュンを見下ろす。
その巨大な腕が振り下ろされた。
ドゴォォォン!!!
ソジュンは咄嗟に闇魔法で回避。
衝撃で通路が崩れ、瓦礫が飛び散る。
「はぁ……っ」
ソジュンの呼吸が乱れ始める。
だが。
その瞳はまだ折れていない。
「僕も……負けるわけにはいかないんです!!」
闇魔法が爆発的に膨れ上がった。
地下通路の灯りが全て消える。
完全な暗闇。
その中で。
無数の黒い腕が浮かび上がった。
闇そのものが生きているように蠢く。
レオが舌打ちする。
「チッ……!」
次の瞬間。
ヒュンッ!!
闇の腕が四方八方から襲いかかった。
亡霊達が次々と引き裂かれていく。
「ぐっ……!」
レオも咄嗟に後退する。
頬が裂け、血が流れた。
ソジュンは苦しそうに息をしながらも魔法を維持する。
「僕は……止まれない……!」
闇がさらに膨れ上がる。
レオも魔力を解放した。
ゴォォォォォッ!!!
大量の死霊が一斉に出現する。
通路全体が黒霧で埋め尽くされた。
亡霊達の叫び声。
闇のうねり。
二つの魔法が正面からぶつかり合う。
ドゴォォォォン!!!
衝撃波が地下を揺らした。
互角。
完全な一進一退。
どちらも譲らない。
レオは苦しげに笑った。
「……強くなったじゃねぇか」
ソジュンも悲しそうに笑う。
「貴方達がいたからですよ」
その言葉に。
レオの表情が僅かに歪む。
次の瞬間。
ソジュンが闇の中から飛び出した。
杖へ膨大な闇魔力を収束させている。
「ダーク・ランス!!」
巨大な闇槍が放たれた。
レオは亡霊を盾に防御。
しかし。
ズガァァァン!!
死霊ごと吹き飛ばされる。
「ッ……!」
レオが壁へ叩きつけられた。
ソジュンもすぐに追撃へ入る。
だが。
レオの口元が僅かに吊り上がった。
「……引っかかったな」
その瞬間。
ソジュンの足元から黒霧が噴き出した。
「なっ――!?」
亡霊の腕。
いつの間にか床下へ潜ませていた死霊達が、一斉にソジュンを拘束した。
ガシィッ!!
「くっ……!」
ソジュンが闇魔法で振り払おうとする。
だが。
レオは既に目の前まで来ていた。
死霊魔法を右手へ集中させる。
禍々しい黒霧が渦巻いた。
「終わりだ、ソジュン」
ソジュンは拘束されたまま、静かにレオを見つめる。
悲しそうに。
それでもどこか安心したように。
そして。
闇魔法と死霊魔法が、最後の激突を迎えようとしていた。




