激突
「終わりだ、ソジュン」
レオの右手へ収束した死霊魔法が、禍々しい黒霧となって渦巻く。
ソジュンは拘束されたまま静かに目を閉じた。
そして次の瞬間――。
ドゴォォォォンッ!!!
死霊魔法と闇魔法が真正面から激突した。
凄まじい衝撃波。
地下通路が大きく揺れる。
壁が砕け、瓦礫が降り注いだ。
黒霧と闇が暴風のように吹き荒れる。
「ぐっ……!」
レオが腕で顔を庇う。
やがて。
徐々に魔力の奔流が晴れていく。
静寂。
そこに立っていたのは――レオだけだった。
ソジュンは壁際へ吹き飛ばされ、崩れるように倒れている。
「……はぁ……っ」
レオは荒い呼吸を漏らしながら近づいた。
ソジュンの身体は血だらけだった。
闇魔法も消えかけている。
明らかに瀕死。
ソジュンは薄く目を開けた。
「……やはり、強いですね……レオ先輩」
掠れた声。
レオは苦い表情を浮かべる。
「喋んな」
「……はは」
ソジュンは弱々しく笑った。
「結局……止められてしまいました」
レオは返事をしない。
ただ静かにソジュンを抱え上げた。
「まだ死ぬな」
低い声。
「お前には聞かなきゃならねぇことが山ほどある」
ソジュンはぼんやりとレオを見る。
その目には、どこか安心したような色が浮かんでいた。
だが。
その瞬間だった。
ゾワッ――。
レオの背筋に悪寒が走る。
「ッ!?」
次の瞬間。
ドガァァァァン!!!
突如、地下通路の壁が爆発した。
凄まじい衝撃。
レオは咄嗟にソジュンを庇いながら飛び退く。
粉塵の中。
ゆっくりと、一つの影が現れる。
黒いローブ。
異様な魔力。
その人物は静かにソジュンを見下ろした。
「……失敗したか」
低い声。
ソジュンが目を見開く。
「あなた、は……!」
レオが鋭く睨みつける。
「テメェ……仲間か」
男は答えない。
だが次の瞬間。
ヒュンッ!!
黒い鎖のような魔力が伸びた。
「なっ――!?」
レオが反応するより早く、その鎖がソジュンの身体へ巻きつく。
「待て!!」
レオが死霊魔法を放つ。
亡霊達が一斉に飛びかかった。
しかし。
男は片手を振るった。
ドォォォン!!!
凄まじい黒い衝撃波。
亡霊達が一瞬で吹き飛ばされる。
レオの目が見開かれた。
(この魔力……ッ!!)
今までの敵とは格が違う。
男はそのままソジュンを引き寄せた。
瀕死のソジュンが苦しそうに呻く。
「や、め……」
だが男は容赦なく抱え上げる。
レオが舌打ちした。
「返せ!!」
死霊魔法が爆発的に膨れ上がる。
地下通路全体を亡霊が埋め尽くした。
しかし。
男は静かにレオを見た。
その瞬間。
ゾワリ――。
圧倒的な殺気。
レオの身体が本能的に警鐘を鳴らす。
「……!」
男は低く呟いた。
「お前は危険だ」
次の瞬間。
黒い魔法陣が展開される。
ドゴォォォン!!!
巨大な黒炎が地下通路を埋め尽くした。
「ッ!!」
レオは亡霊で防御。
だが衝撃が重すぎる。
床ごと吹き飛ばされ、壁へ叩きつけられた。
「がっ……!」
肺から空気が抜ける。
強い。
桁違いだった。
男はソジュンを抱えたまま静かに言う。
「ここで死なれては困る」
そして。
再び魔力を解放する。
黒炎が渦を巻き、地下通路を侵食していく。
レオもゆっくり立ち上がった。
額から血が流れる。
だが、その目はまだ死んでいない。
「……逃がすかよ」
亡霊達が再び集まり始める。
男も静かに杖を構えた。




