表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルカ・マーフィーは夜魔法の継承者  作者: 如月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/97

戦闘開始

午後になると、学園祭の空気はさらに熱を帯びていた。


大講堂のステージでは、各クラスによる演劇やダンス、楽器演奏が次々と披露され、歓声と拍手が絶え間なく響いている。照明がきらびやかに舞台を照らし、生徒たちはそれぞれの出し物に夢中になっていた。


そしてトリを飾るのは――ブラッククラスのバンド。


そのため、ルカたちは今、大講堂の観客席に集まっていた。


だが、周囲の盛り上がりとは裏腹に、ルカの表情はどこか硬い。


(……嫌な感じがする)


胸の奥に引っかかるような違和感。


学園祭の賑やかな空気に紛れているが、確かに何かがおかしい。誰かの悪意のようなものが、薄く空気に滲んでいる気がした。


ルカはそっと隣に座るレオへ視線を向ける。


「……レオ先輩」


「どうした」


低く落ち着いた声。


ルカは周囲に聞こえないよう声を潜めた。


「俺、さっきから妙な気配を感じるんです。魔力感知で探ることも考えたんですけど……俺の魔法、目立つから」


夜魔法は隠密向きではある。


だが、ルカほどの魔力量になると逆に存在感が強すぎる。下手に動けば相手を刺激しかねない。


レオは静かに目を細めた。


「……やっぱりお前も感じてたか」


その一言で、ルカの背筋に緊張が走る。


レオも同じ違和感を察知していたのだ。


観客席のざわめきの中、レオはすぐさま冷静に指示を飛ばした。


「ハジメ」


「はい。」


「この大講堂全体に薄く結界を張れ。悟られない程度でいい。周囲の防御を優先しろ」


ハジメは眼鏡を押し上げながら頷いた。


「了解。かなり広いけど……やるだけやってみます。」


彼は足元へ魔法陣を薄く展開し、観客たちに気づかれないよう静かに結界を広げ始める。


「アリス」


「ええ」


「この場の指揮を頼む。混乱が起きた時は観客の避難を優先しろ」


「任せて」


アリスは真剣な表情で周囲を見渡した。


「マリア」


「はい〜」


「感知能力を使え。怪しい気配を探れ」


マリアはふわりと微笑みながらも、その瞳だけは鋭い。


「もう探ってるよぉ。……確かに少し変な感じするねぇ」


その瞬間、場の空気がさらに重くなる。


レオは立ち上がった。


「俺は学園長に話を通してくる」


そして次に視線を向けた。


「エディ」


「おう」


「オーランド、ビル、ソジュン、サラを呼んで来い。何かあれば即戦闘だ」


エディはニヤリと笑う。


「了解。久々に暴れられそうだな」


「暴れる前提で動くな」


レオの冷たいツッコミに、エディは肩を竦めながら走っていった。


続けてレオはルカとアクアを見る。


「アクア、ルカ。お前らはすぐ動けるよう準備しておけ」


「はい!」


アクアは緊張した様子で杖を抱きしめる。


ルカも静かに頷いた。


「わかりました」


その頃には、ハジメの結界が大講堂全体を薄く包み込んでいた。


誰にも気づかれないほど自然に。


だが確かに、ブラック寮の面々は戦闘態勢へ移行していた。


レオはそのまま学園長席へ向かう。


豪華な席に座っていた第四十八代学園長――ゲイリー・エンシミオは、レオが近づくと静かに目を細めた。


「……レオか。お主も感じたか」


「はい。妙な悪意があります」


レオが低く告げると、学園長は重々しく頷いた。


「あぁ……わかっておる。」


その言葉に、レオの表情が険しくなる。


学園長は杖を握り直した。


「わしも薄々感じ取っておった。既に教師たちには地下の扉周辺の警戒を命じている」


真実の扉。


学園最深部に存在する禁忌の領域。


その奥には、世界中の魔法を制御すると言われる巨大な魔法石が眠っている。


もしそれを狙う者が現れれば――。


学園どころか、世界そのものが危険に晒される。


学園長は静かに立ち上がった。


「とりあえず、お前たちは大講堂で待機しておれ。下手に動けば相手を刺激するやもしれん。何かあったらここはお前らに任せるぞ。儂は扉へ行く。」


「……了解です」


レオは短く返事をすると、大講堂を見渡した。


舞台では今も明るい音楽が流れ、生徒たちは楽しそうに笑っている。


だが、その裏側では。


確実に“何か”が動き始めていた。


レオが戻ると、アリスが真っ先に口を開く。


「どうだった?」


「学園長も異変を察知してた。真実の扉周辺には既に教師を配置してる」


その言葉に、皆の表情がさらに険しくなった。


ハジメは薄く張った結界を維持しながら呟く。


「……嫌な魔力反応が増えてる」


マリアも静かに目を閉じたまま頷いた。


「複数いるねぇ……しかも強い」


その時。


観客席後方から、一人の青年が歩いてきた。


黒髪の生徒会長の腕章をつけた青年。


落ち着いた雰囲気。


生徒会長――セドリック・マーフィーだった。


「レオ、何かあったのか?」


レオは周囲を確認し、小声で答える。


「真実の扉を狙ってる可能性が高い」


セドリックの表情が一瞬で変わった。


「……なるほど」


普段は穏やかな彼の瞳に鋭さが宿る。


「なら、生徒会を動かす。一般生徒の避難誘導はこちらで担当する」


「助かる」


セドリックはすぐ近くにいた役員たちへ指示を飛ばした。


「各出入口を確認。混乱を起こさせるな。異変が起きた場合は冷静に誘導しろ」


「了解!」


生徒会メンバーが一斉に散っていく。


アリスも立ち上がった。


「私も避難誘導側に回るわ」


ハジメは苦笑しながら結界維持を続ける。


「俺はこのまま結界と後方支援担当かな」


自然と役割分担が完成していった。


さらにセドリック率いる生徒会が、大講堂の統制を担う。


その時だった。


――ピシッ。


微かな亀裂音。


ルカが顔を上げる。


「……来る」


直後。


バチィィン!!


ハジメの結界が激しく揺れた。


「ッ!?」


ハジメが目を見開く。


「結界に干渉された!」


次の瞬間。


ドゴォォォン!!!


大講堂地下から轟音が響いた。


床が激しく揺れる。


観客席から悲鳴が上がった。


「きゃあああ!?」


「な、何!?」


「地震!?」


ステージ上の演奏も止まり、生徒たちが混乱し始める。


しかし、その時。


「全員落ち着け!!」


セドリックの声が大講堂に響き渡った。


圧倒的な統率力。


その一声だけで空気が変わる。


「生徒会は各列を誘導! 押し合うな! 順番に避難させろ!」


「はい!」


役員たちが即座に動き出す。


アリスも魔法で声を広げる。


「慌てないでください! 必ず全員避難できます!」


混乱しかけた観客席が、少しずつ落ち着きを取り戻していく。


ハジメは歯を食いしばった。


「チッ……かなりデカい魔力だぞこれ……!」


その時。


マリアが勢いよく目を開く。


「地下通路!! 真実の扉方面に反応!!」


レオが静かに前へ出た。


すると。


彼の足元から黒い霧が溢れ始める。


ゾワリと冷たい空気が広がった。


床に浮かび上がる巨大な死霊魔法陣。


その中から、ぼんやりと無数の亡霊の影が現れ始める。


観客には見えないほど薄いが、強い魔力を持つ者にはわかる。


死霊使い。


それがレオの本来の力だった。


「……地下か」


低く呟いた瞬間、背後の亡霊たちが静かに唸る。


エディがいつの間にか戻っていて言う。


「久々に本気のレオさんが見れそうだな」


「無駄口叩く暇があるなら動け」


そこへ、大講堂入口から一人の男が現れた。


金髪に赤いメッシュ。


赤黒い魔力を纏う青年。


「レオさん!呼ばれて来たぜ!戦闘か!」


彼の周囲には血魔法特有の禍々しい魔力が漂っている。


完全に戦闘態勢だった。


レオは全員を見渡す。


「オーランド、エディ、アクア、ルカ行くぞ。」


ルカは胸元に手を当てた。皆声を揃えて言う。


「「「了解」」」


緊張しながらも、その瞳には覚悟が宿っていた。


「ハジメはここを頼む。アリスは生徒会と共にこの場の統制を頼む」


セドリックは静かに頷く。


「任せろ」


その瞬間。


ズォォォ……。


地下通路側から、禍々しい黒紫の魔力が溢れ出した。


空気が重くなる。


まるで深淵そのものが這い出してくるような感覚。


ルカの夜魔法が無意識に反応し、足元に黒い影が揺れた。


レオの背後では、亡霊たちが静かに蠢いている。


そしてレオが低く呟いた。


「……行くぞ」


ブラック寮最強戦力たちは、大講堂地下――真実の扉へ続く暗い通路へ駆け出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ