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ルカ・マーフィーは夜魔法の継承者  作者: 如月


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34/94

図書室にて

 アーサーは机の上へ魔力測定用の水晶球を置くと、顎髭を撫でながらルカを見た。


「さて……まずは現在のお主の魔力量を確認するとしよう」


 ルカは頷き、水晶球へ手をかざす。


 黒い魔力が静かに流れ込んだ瞬間――。


 水晶球の内部に、夜空のような光が広がった。


 淡い星々が浮かび上がり、ゆっくりと回転を始める。


 アーサーの眉がぴくりと動く。


「……また増えておるな」


「え?」


「以前測定した時より、明らかに総魔力量が増加しておる」


 アーサーは興味深そうに水晶球を覗き込む。


「しかも質まで変化しておるな。魔力の密度が濃い」


 ルカ自身も、最近は以前より魔力が自然に身体へ馴染む感覚があった。


 夜魔法を使用した後の疲労感も、少しずつ減っている。


 アーサーは紙へ数値を書き込みながら頷いた。


「……よし。今日は魔力量増量トレーニングだけにしておくか」


「え、魔法の検証はしないんですか?」


「お主、今日は対人訓練もあったじゃろう」


 アーサーは呆れたように言う。


「無茶して魔力回路を痛めたら元も子もない」


 そう言いながら、大型のフラスコのような魔道具へ手を伸ばした。


 透明な瓶の内部には淡い光が漂っている。


「今日は循環強化じゃ。魔力を身体中へ巡らせながら、この瓶へ流し込め」


「はい」


「限界ギリギリを維持しろ。夜魔法持ちは特に魔力総量が重要になる」


 ルカは深呼吸し、魔力循環を開始する。


 黒い魔力が身体中を巡り、ゆっくりとフラスコへ流れ込んでいく。


 途端に身体が熱を帯び始めた。


 魔力回路が軋むような感覚。


 だが以前より、確実に耐えられている。


 アーサーは満足そうに頷く。


「よしよし。その調子じゃ」


 そしてふと、例の魔法書へ目を向けた。


「魔法書については……ハジメにも協力してもらうか」


「奴は古代魔術理論に異常なほど詳しいからな」


 アーサーは苦笑する。


「寝食忘れて研究する変人じゃが、こういう時は頼りになる」


 ルカは少し安心した。


 アーサーだけでなく、ハジメまで協力してくれる。


 それだけ、この魔法書が特別なのだろう。


 しばらくしてトレーニングを終える頃には、ルカは肩で息をしていた。


「はぁ……っ……」


「今日はここまでじゃ」


 アーサーは頷く。


「無理はするなよ」


「はい」


 ルカは魔法書を抱え直し、研究室を後にした。


 廊下へ出ると、窓の外は夕暮れ色へ染まり始めていた。


 オレンジ色の光が石造りの廊下を照らしている。


(……図書館、行ってみるか)


 アリスの言葉。


 古代文字。


 解読のためのピース。


 少しでも手掛かりが欲しかった。


 ルカはそのまま学園図書館へ向かう。


 巨大な時計塔の隣に建てられた図書館は、夕方にも関わらず静かな活気に包まれていた。


 重厚な扉を開けると、古い紙とインクの匂いが漂う。


 天井まで届く本棚。


 無数の文献。


 静かに本を読む生徒たち。


 その光景を見ながら、ルカは小さく息を吐いた。


(古代文字に関する本……)


 そう簡単には見つからないかもしれない。


 それでも。


 この魔法書の秘密へ近づくためなら、どれだけ時間がかかっても構わない。


 ルカは静かに本棚の奥へ歩き始めた――。

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