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ルカ・マーフィーは夜魔法の継承者  作者: 如月


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三人の覚悟

ブラックの寮――談話室。


夜は深まり、窓の外には静かな星明かりが広がっていた。

暖かな灯りの中、ソファに座るルカとアクアは、どこか落ち着かない様子で扉の方を見ている。


やがて――


扉がゆっくりと開いた。


「……サラ」


ルカが小さく声をかける。


戻ってきたサラは、どこか俯きがちで、普段の静かな雰囲気とは違っていた。


アクアもすぐに立ち上がる。


「大丈夫だったか?」


その一言に、サラの肩がわずかに震えた。


「……ごめん」


ぽつり、と零れる声。


「本当に……ごめんなさい……」


一度言葉が出ると、もう止まらなかった。


「また……また、やっちゃった……」


視線は床に落ちたまま。


「私、いつもそうなの。コントロールがうまくいかなくて……周りに迷惑ばかりかけて……」


声が震える。


「だから……怖くなって……人と関わるのが……」


静かな談話室に、サラの声だけが響く。


「ここなら……誰も知らない場所なら……やり直せると思ったのに……」


ぎゅっと手を握りしめる。


「結局、同じことの繰り返し……」


沈黙。


ルカはゆっくりと目を伏せた。


――思い出す。


自分も、同じだった。


夜魔法が発動できず、周囲から距離を取り、殻に閉じこもっていた日々。


誰とも関わらず、ただ一人で抱え込んでいた時間。


(……俺も、同じだ)


静かに息を吐く。


(でも――)


顔を上げる。


(変われた)


それは、自分一人の力じゃない。


支えてくれた人がいたからだ。


アクアがいた。

家族がいた。

周りの人々がいた。


ルカは一歩、サラに近づいた。


「サラ」


その声は、優しかった。


「一人で抱えなくていい」


サラがわずかに顔を上げる。


ルカはまっすぐに続けた。


「俺も……昔は同じだった」


アクアが少し驚いたようにルカを見る。


「魔法がうまく使えなくて……誰とも関わらなかった」


小さく笑う。


「でも、変われたんだ」


視線をアクアへ向ける。


「みんながいたから」


その言葉に、アクアの表情が揺れた。


そして――


アクアもゆっくりと口を開く。


「……俺もだ」


サラが息を呑む。


「俺は昔、魔力が制御できなくて……暴走した」


その目には、過去の影が宿っていた。


「両親を失った時だ」


静かな告白。


「……ルカの家族にも、迷惑をかけた」


ルカは何も言わず、ただ聞いている。


「でも――」


アクアはルカを見る。


「ルカがいたから、今の俺がある」


強く言い切った。


「もし……ルカがいなくなったら」


一瞬、言葉が詰まる。


「俺もまた、暴走するかもしれない」


サラの瞳が揺れる。


「周りに……取り返しのつかないことをするかもしれない」


静寂。

重たい空気が流れる。



アクアは顔を上げた。


その目には、迷いはなかった。


「だから決めた」


ルカも頷く。


「俺たちでやる」


二人の視線が、サラに向けられる。


「サラのサポート、全部引き受ける」


「何があっても――」


ルカが言葉を継ぐ。


「暴走したって、止める」


アクアが続ける。


「絶対に、一人にはしない」


サラの瞳に、涙が滲む。


「……なんで」


かすれる声。


「なんで、そこまで……」


ルカは少しだけ困ったように笑った。


「同じだからだよ」


アクアも肩をすくめる。


「放っておけるわけないだろ」


サラは唇を噛みしめた。


そして――


ゆっくりと、顔を上げる。


涙で濡れた瞳の奥に、確かな光が宿る。


「……ありがとう」


その言葉は、小さいけれど確かだった。


ルカが手を差し出す。


「一緒にやろう」


アクアもその隣に立つ。


「三人で」


サラは一瞬ためらい――


やがて、その手を取った。


その瞬間。


三人の間に、確かな繋がりが生まれる。


言葉にしなくても分かる。


もう、一人じゃない。


ルカが静かに言う。


「これからも、よろしく」


アクアが笑う。


「逃げるなよ?」


サラも、小さく笑った。


「……うん」


そして――


ブラッククラス1年1組の三人は、互いに。

どんな力でも、どんな過去でも。

支え合い、乗り越えていくと。


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