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ルカ・マーフィーは夜魔法の継承者  作者: 如月


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実施試験開始

翌日――。


ルカが寮へ戻ってきたその次の日、1年1組の生徒たちは学園内の実技演習場に集められていた。


広々とした石造りの演習場には、すでに独特の緊張感が漂っている。


ある者は持参した魔導具の調整をし、ある者は軽く体を動かしている。

また別の者は目を閉じ、魔力の流れを確かめるように集中していた。


「入学して次の日からテストかよ……」

「ほんとそれ…きっついよなー」


小さなざわめきがあちこちで広がる。


そんな中――


重い足音と共に、担任のアルク・フェゴールが姿を現した。


一瞬で空気が引き締まる。


アルクは周囲を一瞥し、短く告げた。


「今日は実技テストを行う」


その一言で、生徒たちの背筋が伸びる。


「ルールは簡単だ。1人ずつ前に出ろ。各自の固有魔法を――全力で俺にぶつけるただそれだけだ。」


ざわ…っと空気が揺れる。


「手加減はいらねぇ。俺も加減はするが、甘く見るなよ」


ニヤリと笑ったその顔に、何人かが息を呑んだ。


「まずは――ルーク・デイビッド」


名を呼ばれ、眼鏡の少年が一歩前に出る。


学級委員に選ばれたばかりのルークは、静かに杖を構えた。


「……いきます」


魔力が収束する。


次の瞬間――


「ウォーターアロー!」


鋭く圧縮された水の矢が一直線にアルクへと放たれた。


だが。


キィン!!


乾いた音が響く。


アルクはその場から一歩も動かず、魔剣を軽く振るっただけで、水の矢を弾き飛ばしていた。


「……軽いな」


その一言に、周囲がざわつく。


「今の、普通に強くなかったか?」

「先生、やばくね……?」


ルークは悔しそうに唇を噛みながら下がった。




「次。エドワード・ダグラス」


呼ばれた瞬間、空気がわずかに変わる。


ふてぶてしい態度で前に出たエドワードの傍には、いつの間にか執事が控えていた。


無言で差し出される、過剰な装飾の施された杖。


「フン……見ていろ」


エドワードはそれを受け取ると、大きく振りかざした。


「ファイアーボール!」


次々と炎の球が生み出される。


一発、二発――いや、連続。


しかもエドワードはその巨体に似合わず素早く動き回り、多方向から同時に攻撃を仕掛けていく。


「ほう、数で来るか」


アルクはわずかに目を細めた。


しかし――


ヒュン、ヒュン、ヒュン!


魔剣が閃くたびに、すべての炎が弾かれていく。


そして、そのうちの一発が軌道を変え――


「ぐぇっ!?」


エドワードの腹に直撃した。


そのまま地面を転がる。


「これくらい躱せねぇと話になんねーぞ」


アルクは冷たく言い放つ。


執事がすぐに駆け寄り、治癒魔法を施し始めた。


「クソが……!」


エドワードは悪態をつきながらも、その場で観戦を続ける。




「次――アクア」


ざわめきが大きくなる。


「ブラックか……」

「どんな魔法なんだ?」


アクアは静かに前へ出た。


手には杖はない。


代わりに、胸元の十字のネックレスに手を添える。


「……いきます」


魔力が流れ込む。


次の瞬間、周囲の空気が歪んだ。


「グラビティ」


地面に散らばっていた瓦礫や岩が、ふわりと宙に浮かび上がる。


それらが一斉にアルクへと襲いかかった。


「重力操作か」


アルクは軽く身をひねり、すべてを躱す。


さらに、魔剣で弾き返す。


だがアクアもすぐに対応した。


「グラビティフォールド!」


周囲に防御の重力場を展開し、反撃を受け止める。


攻防が続く。


見応えのある戦いに、生徒たちは息を呑んで見守っていた。


そして――


「ブラックフォール!」


空間そのものが歪むような重圧が発生する。


だが次の瞬間。


「――遅い」


アルクの姿が消えた。


気づいたときには、アクアの背後。


首元に剣が突きつけられていた。


「……参りました」


静かに、アクアは降参した。



緊張が一気に解ける。

アクアの戦いを見て周囲の面々もブラックの評価を考え改めているようだ。



「次――ルカ」


その名が呼ばれた瞬間。


ルカの心臓が強く跳ねた。


(……俺はまだ……)


夜魔法は、未完成。発動も2日前にしたばかりで


制御も不安定。


それでも――


杖を握る手に力がこもる。


視線の先では、アクアが不安そうにこちらを見ていた。


その目に、ほんの少しだけ背中を押される。


ルカはゆっくりと一歩、前へ出た。


――逃げるわけにはいかない。


静まり返った演習場で、彼は小さく息を吸った。


「……いきます」


その声は、かすかに震えていた。


だが確かに、前を向いていた。



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