七百三十話 緊急支援要請グリーンドラゴンを討伐せよ様
「あれ、なんだろう」
朝七時過ぎ、紅茶も飲み終え、お城の食堂で朝食でも食べようと移動中。
なにやらお城の門付近で、騎士たちが慌てている。
朝食、まぁ味だけで選べば、お城前にあるカフェジゼリィ=アゼリィ一択なのだが、全員お腹が空いているので、近いところでいいか、と。
カフェの開店時間が十時で、あと三時間後、全員腹減りで耐えられない。
「どうした、何があった」
「どうしましたか、報告を」
俺の視線の先の騎士たちの動きにサーズ姫様とフォウティア様も気付き、すぐに駆け寄っていく。
「え、あ……サ、サーズ様にフォウティア様……! お、おはようございます! はっ、ご報告させていただきます! 王都より北の街道にて、数台の馬車が飛龍に襲われた、とのことです!」
五人集まっていた騎士の一人が振り返り、目の前にいたサーズ姫様とフォウティア様を見て目を見開いて驚く。
まぁ早朝後ろから話しかけてきた女性が、自分が仕えている『ペルセフォス王族様』だったら驚くわな……しかもサーズ姫様とフォウティア様のお二人同時に。
「飛龍だと……? ちっ、発生時刻に被害状況、正確な場所の報告を」
「は、はい! 逃げてきた馬車の商人によりますと、発生時刻は一時間ほど前、場所は王都から北方向に馬車で一時間、地図ですとこちらになります! 四台の馬車が襲われ、被害者多数、乗りあわせていた冒険者が迎撃、隙を見て一台の馬車が逃げ、王都に支援を求めてきたとのことです!」
五人の騎士が敬礼をし、サーズ姫様とフォウティア様に説明をしている。
「現在、飛車輪部隊で動ける者を手配中であります! 緑色の飛龍とのこと、おそらくグリーンドラゴンかと思われます! 後ほど詳細な報告書を……」
「私が行く。そこなら十分もかからず行ける。救援用の馬車も手配、医者を乗せ、すぐに迎え。ハイライン、行けるな」
「は、はいー!」
サーズ姫様が騎士ハイラを呼び、飛車輪の準備を始めた。
おっと……緊急支援に、王族であるサーズ姫様自らが行くのか。
確かにこの状況、今から飛車輪に乗れる騎士を集めて準備するより、すでに朝の特訓で身体が仕上がっているサーズ姫様が一番早く現場に行けるのだろう。
でも緑色の飛龍、それって蒸気モンスターじゃ……。
ペルセフォス王国の未来を担うサーズ姫様の身に何かあったら大変なことに……ってサーズ姫様がすっごいやる気いっぱいなんだけど……もしかしてルーインズウエポンを試したい、とかいう感情が含まれてないです?
まぁ負傷者もいるみたいだし、早急に助けに行きたい、という強い想いだろう。
そういや初めて王都に行こうとしたとき、黄色い飛龍に襲われたっけ。
もしかしてペルセフォス王都付近って、飛龍の被害が多いのか?
「ラビコ、グリーンドラゴンってどういうモンスターなんだ?」
「え~? ほら、初めて王都に来た時襲われたフラウムドラゴンいたでしょ~。あれよりは小型なんだけど~、動きがすっごい早いやつ~。強力で速度の出る対空手段がないと、かなり危険かな~。まぁそれ以前に蒸気モンスター相手だし~、生き残るには逃げる一択だね~」
水着魔女ラビコに聞いてみるが、やはり飛龍って蒸気モンスターなのか……。
蒸気モンスター相手に、馬車の乗客を守ろうと動いた冒険者さん、すごいな……。
冒険者さんの勇気に応えるためにも、一刻も早く助けに行くべき。
「アプティ、俺とベスを運んでもらえないか」
「……はい、マスター……」
俺は無表情で立っていたバニー娘アプティにお願いをする。
この中で一番速度を出せるのは、直線のみという限定ではあるが騎士ハイラの飛車輪になるだろう。
そしてうちのバニー娘アプティは、ハイラには及ばないが、近い速度を出せる。
俺とベスを運んだとしても、サーズ姫様の飛車輪と同等の速度はいけるはず。
「え、社長行くの~? じゃあ私も~……」
「いや、みんなは王都にいてくれ。アプティと俺とベスだけならサーズ姫様たちに追いつける」
状況的には一刻を争う。
それに蒸気モンスター相手なら、アプティとベスもいたほうがいいだろう。
「ちぇー、アタシたち留守番かよ。こういうとき、ペルセフォスの飛車輪って羨ましいぜ」
猫耳フードのクロも行く気満々だったようだが、速度優先になると、人数は限られてしまうんだ。
「お気をつけて……あなたなら大丈夫だとは思いますが、王都で無事を祈っています」
宿の娘ロゼリィが心配そうな顔で俺の左腕に触ってくる。
「大丈夫、ベスにアプティ、しかもサーズ姫様にハイラもいるんだ。なんの心配もいらないよ」
「ベッス!」
ロゼリィの頭を撫でると、愛犬が勇ましく吼える。
おお、頼りにしてるぞ、ベス。
「ま、変態姫にルーインズウエポンがあれば行けるとは思うけどね~。うちの社長とアプティにベスは過剰戦力~、あっはは~。……サーズを頼むね、社長」
水着魔女ラビコがニヤニヤ笑い、最後俺に耳打ちをしてくる。
なんだかんだ言って、やっぱりサーズ姫様のこと、心配なんだな。
「おお、君も来てくれるのか。なんと心強い。すまないが、支援を頼むよ」
「やった、先生も来てくれるんだー! 先生さえいれば例え火の中水の中……今この瞬間から私は無敵ですぅー!」
俺たちも行くと伝えると、サーズ姫様とハイラが笑顔になる。
「では行ってくる。まぁ今回は彼等が同行してくれるので、何の心配もいらないだろうな。すぐに飛龍を討伐し、負傷者を助ける!」
「お願いしますねサーズ。救援馬車もすぐに手配します」
サーズ姫様とフォウティア様が頷きあう。
フォウティア様が俺にも視線を送ってくるが、大丈夫です。サーズ姫様は俺たちが絶対に守りますので。
「目標はここより北、馬車で一時間の宿場近くの街道だ。飛車輪ならば十分とかからず辿り着けるだろう。負傷者を最優先に保護、そして飛龍を倒す……!」
「いっきまーす……! 先生に良いところ見せて熱い抱擁ゲットですー!」
サーズ姫様が飛車輪で飛び立ち、続いて騎士ハイラの飛車輪が飛び立つ。
ハイラの気合の入りようがすごくて、とんでもない速度でサーズ姫様を抜き去り上空に消えていった。
相変わらず、直線の速度すっご……。
「異世界転生したら愛犬ベスのほうが強かったんだが」
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影木とふ




