七百二十九話 ルーインズウエポンお披露目会様
「ぶっっっ……はははははは~! うっそ、さっきそんな面白いことが起きてたの~? しまった~、寝過ごすとかラビコさん一生の不覚……昨日宴会だからって珍しくお酒飲んで失敗した~。あっはは~」
水着魔女ラビコが涙を流しながら笑い、俺の背中をバンバン叩いてくる。
……いや、お前はいつもお酒飲んでから寝て、昼過ぎに起きる、が定番だろう。
何が珍しくお酒飲んで、だ。こんな早朝に起きていること自体珍しいんだよ。
冒険者の国でサーズ姫様のルーインズウエポンを手に入れ、俺たちはペルセフォス王都に帰還。
お城前にあるカフェジゼリィ=アゼリィでお祝いの宴会をし、深夜お城に帰ろうとするも、階段を登るのがタルかったので、門の横にあるラビィコール研究所で全員泥のように就寝。
翌朝、サーズ姫様の朝のトレーニングに俺も健康的に参加しようとしたら、なぜかサーズ姫様が自分にも裸で迫ってこい、と謎のワードを放ちご立腹。
は、裸で迫ってこい……? それってどういう……。
なんだか宿の娘ロゼリィも「裸で側に来たから期待してたら逃げられた」とか言って泣いてるし……。
な、紳士諸君、意味が分からないだろう?
まぁさすが異世界ってとこか、たぶん日本で平和に暮らしていた俺には通じない常識があるのだろう。
ちなみに俺、朝目覚めてすぐにサーズ姫様のぬくもりと甘い香りが残る布団に裸で潜り込もうとした。
あ、いや、ちょっと待ってくれ紳士諸君、確かに俺は自慢のオレンジジャージを速やかに脱ぎ、裸にはなった。
だが横で寝ていた宿の娘ロゼリィの寝返りで我に返り、すぐにジャージを着て外に出たんだ。
ほら、なんの問題もない。
ゆっくりとその握りこぶしを降ろして欲しい。
俺は裸でロゼリィを襲ってないし、いないことを良いことにサーズ姫様の布団に裸で潜り込んでもいない。
全部未遂。
そう、満場一致の無罪である。
「あ~おもろ~。目覚めてすぐに寝ているロゼリィの真横で裸になって、使用済みの変態姫の布団に裸で潜り込むとか……ぶっっっっふぅ~……! 横で『抱いてもいいよ』サイン出してるロゼリィど無視で誰もいないカラの布団にご執心とか……ぶっはははは~! あのさ、社長って色々選択肢間違え過ぎなんだよね~。あ~、やっぱ社長って最高に面白いわ~」
外での俺たちの騒ぎに気付いたのか、水着魔女ラビコやバニー娘アプティ、騎士ハイラにフォウティア様が起きてきた。
そうしたら、猫耳フードのクロが今起きたことを迷わず全部詳細に話してしまい、ラビコが腹を抱えて大爆笑。
いや、俺ロゼリィとかが起きていたとか知らなかったし、あとサーズ姫様の布団に裸で潜り込んではいないから。未遂。
「ううう……先生のすぐ横で寝ていたのに、私の布団には裸で潜り込んで来てくれなかったです……」
「……マスター、私もいました……」
騎士ハイラとバニー娘アプティが悲しそうな顔で言ってくるが、だから俺は誰の布団にも入ってないってば。
「私のところにも来てくれませんでした……ってうふふ、冗談です。そういうのはうちのサーズにしてあげて下さいね」
フ、フォウティア様……?
さすがにペルセフォス王国の現国王様であるフォウティア様の布団に裸で潜り込む勇気は無いです……。
「ベッス……」
愛犬ベスも悲しそうに吼えてきたが、いや、俺この中で唯一ベスさんを抱いて寝てましたよ。
とりあえず全員起きてきたので、バニー娘アプティに紅茶を入れてもらうことに。
現在朝六時過ぎ、一応お城の食堂も開いているのだが、アプティがソルートンから持ってきている紅茶葉で作ったほうが美味しいんだよね……。
「うむ、美味しいな。そうか、アプティ殿を見ていると、お湯の温度だったり、入れる速さを茶葉に合わせて変えたりしているのだな。とても勉強になる」
サーズ姫様が紅茶を一口飲み、アプティの紅茶を褒める。
「あら本当……この茶葉、私も買いましたが、アプティさんの入れた紅茶のほうがとても美味しいです」
おお、ペルセフォス王国の現国王であられるフォウティア様までもがアプティの紅茶を絶賛か。
まぁアプティは、紅茶に関してはとんでもないこだわりを持っていますから。
俺なんてアプティの入れる紅茶が美味すぎて、ほぼ毎日紅茶のリクエストをしているからなぁ。
「ふぅ、さてもう少し剣を振るか。早くこの剣の感覚の全てを身体に叩き込まなければな」
サーズ姫様が紅茶を飲んで一息吐き、再び青い刀身の剣を握る。
「地下迷宮で手に入れたルーインズウエポン『光牙剣ブラウファング』でしたっけ、やはり普通の剣とは違いますか?」
「ふふ、もちろん、もう持っただけで違うぞ」
サーズ姫様が手に入れた新たな武器、ルーインズウエポンの感想を聞いてみる。
持っただけで違う、か。
武器を使いこなせない俺では、さっぱり分からない感覚だなぁ。
「そうだな、試してみようか……これは私が普段の訓練用に使っている鉄の剣だ。訓練用と言っても、ペルセフォスの騎士が使っている剣と質は同じ物だ。これをなるべく高く、放ってみてくれないか」
「わ、分かりました」
サーズ姫様がニッコニコ笑顔で鉄の剣を俺に渡してくるが、おっふ、鉄の剣って結構重いんだな……。
まぁいくら『街の人』である俺でも、剣を上空に放るぐらいは出来る。
「では行きますよ……そぉれ!」
俺はサーズ姫様とみんなから少し離れ、鉄の剣を上空高く放り投げる。
「……投げたら少し離れてくれよ……さぁ皆にお披露目だ『光牙剣ブラウファング』……!」
俺が空高く放り投げた鉄の剣にサーズ姫様が狙いを定め、軽く魔力を込め、一閃。
サーズ姫様の魔力に呼応し剣の刀身が青く輝き、かまいたちのような青い衝撃波がとんでもない速さで飛び、鉄の剣を切り裂く。
え……鉄の剣の刀身が上下真っ二つ……ってマジかよ……!
あのルーインズウエポンは、持ち主の魔力に呼応して切れ味が増す系だろうか。
あと、放った衝撃波が鉄の剣を追うように不自然に軌道が変化したので、目標への多少の追尾効果アリ、だろうか。
サーズ姫様が込めた魔力は微量、それなのにあの威力……追尾効果で命中率アップ、さらに火力高いとか、結構とんでもない武器なのでは……。
まぁあれ、ケルベロスが補充用、とか言って自分の住処に置いていた物だしな……。
つまり、本来ならケルベロス地下迷宮を踏破、地下1000階にいるケルベロスを倒さないと手に入らない系……。
「よし……! 素晴らしい……これは本当に素晴らしい剣だぞ……!」
サーズ姫様が満足気に微笑み、青く光る剣を空へ掲げる。
「すっご~。さっすが、地下迷宮の主、ケルベロス本人から直接もらっただけはあるね~。リンデルの剣の上位版って感じかな~?」
水着魔女ラビコがサーズ姫様に近付き、剣をマジマジと眺める。
リンデル? ああ、ルナリアの勇者さんのことか。
そういやリンデル=ライトさんもルーインズウエポン持ちだったっけ。
「す、すごい……ペルセフォスの騎士が持つ、鉄の剣が簡単に真っ二つです……」
フォウティア様も目を見開いて驚いているな。
「サーズ姫様、それ、込めた魔力に応じて威力が変化すると思います。見た感じ、そのふり幅は桁違いで、相当の魔力量まで耐えられますし、おそらく人間が出せる魔力なら上限は突破出来ないほど、かと。あと、目標と定めた物をロックオンして、以降目標が動こうが、ある程度までなら自動追尾可能です」
軽く俺の『目』で計ってみるが、あの剣、かなりのポテンシャルを秘めているぞ。
「に、人間が出せる魔力では突破出来ない上限……。それに自動追尾……だ、と……? 確かにやけにすんなり目標に当たるな、とは思っていたが……まさか放った斬撃の軌道が変化して目標を追っていたとは……。って、この剣、本当にヤバイ代物じゃないか……い、いいのか、私なんかが持っていて……」
その剣の魔力の呼応出来る限界は、おそらく水の国オーズレイクで出会ったラビコのお師匠、エルフのエルメイシア=マリゴールドさんクラスまで。
エルメイシアさんの放つ魔力はマジでやばかったからな……あれは絶対に人間が出せるレベルの魔力じゃあない。
サーズ姫様が俺の言葉を聞いて不安になり始めたが、大丈夫ですよ。
それはあの地下迷宮の主、ケルベロスがサーズ姫様に相応しい剣、として渡した物。
必ずやあなたの力になってくれるはずです。
「異世界転生したら愛犬ベスのほうが強かったんだが」
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影木とふ




