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拾った猫と転移したら聖女になりましたが  作者: はるくうきなこ


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15王都を救う


 王都は予想以上に酷かった。道路には亀裂が入り、貴族の屋敷は大丈夫だったが、平民が暮らす街の建物は倒壊したり傾いたりした物があった。

 何度も地震が起きて人々は逃げ惑い怪我人が道路にまで溢れていた。

 「助けて〜」足から血を流している人が。

 「子供が、誰か医者を呼んで!」母親がぐったりした子供を抱き抱えて路頭に彷徨っている。

 「酷い!すぐに手当しなきゃ、アンドリュー馬を止めて」

 アリサは一緒に乗っているアンドリューに言った。

 「アリサ、今は神殿に急ごう。一番の原因を修復するのが先だ!」

 アリサは苦しげに顔を歪ませながら「ごめんなさい。すぐに戻って手当します。もう少し頑張って下さい」

 そんな声を掛けながら神殿に急ぐ。先頭をライトナー辺境伯が走りその後を追うようにアリサ達の乗った馬、辺境伯騎士団が続いた。

 神殿は地震で大きな柱にヒビが入っていたり、木が倒れていたりしていたが何とか神殿の中に入る事は出来た。

 馬から降りると神官がはしr寄って来た。

 「聖女様!」

 「結界陣はどこ?」

 「神殿の地下です!」

 「こっちだ!」ライトナー辺境伯が叫ぶ。

 アリサはアンドリューと一緒に神殿の地下に向かう階段を降りる。

 その間も地震が起きて天井から小さな石ころが落ちた。

 「アリサ危ない!」

 アンドリューが咄嗟にアリサの上に覆い被さるようになってアリサを守る。

 「アンドリュー?」

 アンドリューの上に落ちた岩はかなり大きく背中を直撃したらしい。

 うぅっ!

 「アンドリュー…」

 「こんなの何でもない。さあ急ごう」

 グッ!

 呻き声を上げるアンドリュー。

 「アンドリュー?怪我したんじゃない?」

 「これくらい平気だって、それより結界陣が心配だ。急ごう」

 アンドリューはアリサから避けると立ちあがろうとしてよろけた。

 「アンドリュー!」

 「平気だから」

 彼は血の気の引いた顔で微笑んだ。

 「平気な訳ないでしょう?見せて」

 アリサは彼のマントを無理やり取る。 

 騎士の服の背中が縦に裂けていて背中には大きな傷がある。

 「もう!すぐに治すからじっとしてて」

 「なんか、カッコ悪ぃな俺」

 「カッコ悪くなんか!私を庇って怪我したのよ。アンドリューがいなかったら私が大怪我をしていたわ」

 アリサはアンドリューの背中に治癒魔法をかけながら話す。

 「でも」

 「いいから黙って、じっとしてて」

 アリサはもし今の岩がアンドリューの頭を直撃していたらと思うと胸の奥がスッと冷えた。

 (この世界に来てアンドリューはいつも自分に寄り添ってくれた。まあ、日本での記憶があるから捨て猫だった時助けたお礼もあるかも知れないけど。でも、命を賭けてまで守ろうとしてくれるなんてもう、ほんと。アンドリューったら)

 「はい、これで傷は閉じたから。でもゆっくり立ち上がって、出血もしてるんだから」

 「ああ、ありがとうアリサ」

 アンドリューは照れくさそうに髪をボリボリかく。

 「アンドリューに何かあったら私生きていけないからね」

 つい、そんな言葉が溢れた。

 「ありさ?それって」

 「本心だから、もう、今度私を庇って怪我なんかしたら許さない!」

 「ば、バカ。アリサが危ないのを助けるのは当然じゃないか。そんな約束出来っこ…」

 アリサは思わずアンドリューの手をぎゅっと握る。いつだってこの手の温もりがアリサに安心をくれた。

 「アンドリュー、これからも…これからもずっと一緒にいてくれる?」

 「当たり前だ。俺はアリサのそばを離れない。ずっとだ」

 「うん、約束」

 「ああ、約束」

 アリサはやっと気持ちが落ち着いてまた地下に降り始めた。アンドリューはずっとアリサの手を握ったままだ。


 神殿の地下深くに降りて行くとそこには大きな泉があった。その泉の地下に大きな結界陣が描かれていた。

 泉の水が波立ち大きく揺れると同時に地面が揺れた。

 どうやら泉の底に描かれた結界陣がうねると地下の岩盤にずれが生じて地震が起きているらしい。

 「どうすれば結界陣の歪みを修正出来るの?」

 アリサは大声を上げた。

 「それは私にも分かりません!」

 「では、どうすれば‥」

 その時突然耳の奥に声が聞こえた。

 『アリサ、結界陣の周りにある結界石に嵌め込まれていた核と言われる水晶が無くなっているからよ。その石はロージェンナが持っている。その石を回収して元の場所に置いて』

 「あなたは誰?」

 『私は女神アフロデア。あなたをここに召喚したもの。さあ、急いで』

 「分かった。アンドリュー、女神が結界石が必要だって言ってる。石はロージェンナが持っているって!」

 「分かった。すぐに」

 そこからはライトナー辺境伯と騎士団が動いてくれた。

 「俺も行く!」

 アンドリューもライトナーに続こうとしたがライトナー辺境伯に止められた。

 「アンドリュー殿下は聖女を守ってくれ」

 「分かった、頼んだぞ!」

 「命に変えても必ず!」

 ライトナー辺境伯達は急いで来た道を戻って行った。


 地上に出ると神官達がシャルマート大神官とロージェンナは騎士団に連れて行かれたと言った。

 二人は騎士団の牢の中だった。ライトナー辺境伯が駆けつけるとロージェンナは首に下げていた結界石に抑え込まれるように力を奪われ動けなくなったらしく意識を失っていた。

 ライトナー辺境伯がロージェンナの結界石の核である水晶に触れると不思議な事に結界石の光がすぅっと収まった。するりと首から結界石を取り上げライトナーは地下に走った。

 「聖女殿、これが結界石の核だ!」

 「それを結界石の窪みの部分に戻して下さい」

 「わかった!」

 騎士団も一緒にいくつか失われた水晶を結界石の上の窪みに戻して行く。

 「女神様この後はどうすればいいんでしょう?」

 アリサは声を張り上げる。

 『後はアリサが、みんなが祈りなさい。この国の人々を助けたいって祈って』

 女神の声は今度はみんなの耳にもはっきりと届いた。

 「分かりました。皆さん祈りましょう!!」

 アリサの声は地下の岩盤に反響して外にまで響き渡った。


 王都中の人々が祈った。

 国王もレオンハークも騎士も祭壇で息も絶え絶えになっていたロージェンナやシャルマートもパン屋のおかみさんも肉屋の主人も子供も老人も王都中の人々が祈った。


 「お願い。この国を壊さないで!結界陣を元通りにして!みんなを助けて!お願いします!!」

 アリサは心を込めて祈った。

 身体中の力を振り絞るように祈りを結界陣に注いだ。

 アリサの身体に向かって放射状に光が注ぎ込まれる。その光は地上からそこにいたアンドリューや騎士達からも注がれれた。

 アリサの身体は眩い光に包まれると、今度はその光が大きく畝って泉の中の結界陣に注ぎ込まれて行った。

 光は七色に変わり泉の中に溶け込むように消えて行く。

 その度に結界陣が大きく蠢き泉の水面が揺れた。

 何度か地面が揺れて結界石の中心に置かれた水晶が発光を始めた。光が泉の周りを取り囲むように大きな光の輪が出来ると一度大きな縦揺れがあった。

 「きゃあ!」

 「アリサ!」

 アリサがよろけてアンドリューがその身体を支えた。アリサはアンドリューにしがみついた。

 「ごめん」

 「大丈夫か?」

 泉が凪いだように静かになり底にある結界陣の揺らめきが収まって行く。

 「成功したの?」

 みんなが一斉に泉の底を覗き込む。

 大きな結界陣が描かれている。歪みは無くなっている。

 『結界陣は事に戻ったわ。成功よアリサ。あなたのおかげありがとう』

 アリサの耳元をそよ風のように優しい声がかすめた。

 「成功です!女神様が今はっきりおっしゃいました!」

 「「「「ウオォォォォォ〜」」」」

 一斉に雄叫びが上がった。







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