16新たなる王の誕生
結界陣が落ち着きを取り戻しアリサ達は地上に出た。
街の至る所には被害の跡が痛ましく残っている。
でも、みんなの顔には安堵の色が広がっていた。
ライトナー辺境伯が神殿の表に出ると大声を張り上げた。
「皆さん〜もう大丈夫です!今回の地震は聖女様の祈りで危機を乗り越えました。地震はもう収まりました。怪我人は治療院に、家の倒壊の恐れがある場所には立ち入らないで下さい。何かあったら騎士団が街を巡回しますので報告をお願いします」
「「「良かった〜!」」」
「「「聖女様ありがとうございます」」」
安堵の声と聖女へのお礼の声が響いた。
アリサはそのまま神殿の治療院で怪我人の治癒にあたった。騎士団は街を巡回して怪我人の収容や倒壊した建物から人々を救出した。
王都の騎士団も一緒になって救助にあたった。一部の貴族は屋敷の食糧庫を開放して食べ物を差し入れたり、寝具や薬草を届ける貴族もいた。
残っていた神官達や貴族や街で動ける人たちが一緒に協力をした。
街の広場では食べ物を持ち寄り炊き出しを行った。
その日王都の人々は貴族も平民も関係無かった。
*〜*〜*
数日で王都は何とか取り敢えず平常に戻った。建物はまだまだ元に戻るには時間が掛かるが被害にあった人々は神殿や騎士団の宿舎や王宮の一部も開放されたり近くの領地の人々も受け入れを始めた。
数日後、貴族議会が招集された。アリサも証人として同席を求められ出席した。
すでにシャルマート大神官とフォンビュート公爵は捕えられていた。
国王が最初に挨拶をした。
「今回の事は非常に残念な事だった。だが、国民は皆助け合い聖女殿は力を尽くしてくれたお陰で事態を何とか収める事が出来た。改めて聖女殿にはお礼を言う」
隣にいたレオンハーク殿下も一緒に頭を下げる。
「アリサ、私が間違っていた。あのようなまやかしに惑わされ君を偽物だと言った事は悪かった。ロージェンナと君二人を婚約者にして悪かった。婚約者は君一人とする。これなら受け入れてくれるか?」
「そんな勝手を許していいのか皆さんはどう思われる?」
立ち上がって皆に意見を求めたのはローランド公爵だった。
「そうです。私はこのような事になる前に国王には報告をしていました。宰相と大神官の癒着。聖女への対応についても問題があると申し上げていたのです。それなのに国王は聖女と公爵家のどちらの血も次代に引き継がせるとはっきり言われた。その結果があのような甚大な被害を起こしたのです!」
カイルが声を荒げた。
「我がローランド公爵家は国王の引退を要求します。並びにレオンハーク殿下の王太子としての資質にも問題があるとはっきり申し上げる!」
「「「「ローランド公爵に賛成!」」」」
貴族達は一斉に立ち上がりローランド公爵を支持すると言った。
そしてこの場で国王引退とレオンハークの王太子剥奪が決定した。
「次の国王にはアンドリュー殿下を指名したい。皆さんいかがでしょう?」
「その前に一つだけ伺っても?アンドリュー殿下は聖女様との婚姻をどうお考えでしょうか?」
カイルは尋ねる。
「いや、皆さん。ローランド公爵。いくら何でも無理です、俺が国王なんて」
「じゃあどうする?聖女とは結婚しないのか?」
アンドリューは国王になど興味は無かったが、アリサとの結婚は譲れなかった。
「アリサとの結婚は譲る気はない!」
「だったら決まりですな。アンドリュー殿下は国王になられる事に了承されました」
「「「アンドリュー国王バンザイ!!」」」
「ちょ!そんな。俺に国王は無理だって!」
もはやこの流れを止められる者はここにはいなかった。
満場一致でアンドリューが次の国王に決まった。
アリサはアンドリューが自分と結婚する気なのではと思ったが、まだ告白もされてもいないし、ましてやプロポーズを受けてもいないのだから喜ぶのは早いと気持ちを引き締めた。
アンドリューと目が合った時には思わず目を逸らしてしまった。
国王セルゲイは王位を退くと王妃と一緒に南の離宮に引っ越した。レオンハークは王宮を出て神殿に入り神官として新たな人生をスタートさせた。
アンドリューは渋々ながらも国王となる事を承諾した。もちろんアリサとの結婚を条件に。
だが、あの議会の後忙しくてアリサときちんとと話も出来ていなかった。
アンドリューは二日後やっとアリサの所に行った。
アリサは豪華な部屋のソファに座ってはいたが服は聖女服のままだったし、素顔でアクセサリーもつけていなかった。
「アリサ、なかなか時間が取れなくて遅くなってすまない。俺はこの国の国王になった。でも、俺が国王としてやって行くにはアリサがどうしても必要なんだ。だから…」
「ねぇアンドリュー。それって私が聖女だからなんでしょう?この国の王子は聖女を結婚する事になっているからなんでしょう?」
「って、アリサどうしてそんな事を言うんだ?」
「どうしてって、ここに来てすぐにそう言われたじゃない。でも、アンドリューが嫌なら無理しなくてしなくていいんだよ」
「違う!アリサ、そんな風に思ってたのか?なぁ、聞いてくれ。俺はあの後すぐにアリサに結婚を申し込むつもりだった。でも、あれから色々あってチャンスを逃したんだ。アリサだってわかってるだろう。あの後そんな暇がなかった事くらい」
アンドリューが不貞腐れたように唇を尖らせる。
アリサはそんなアンドリューに言った。
「そんな事わかってる。アンドリューは国王になった。忙しいに決まってるし今まで通りには行かないって事も」
「俺の気持ち知ってるだろう?アリサが好きだ。心から愛してるんだ。俺はアリサを牢から連れ出した時からもう覚悟は決まっていたんだ。例え平民になろうとアリサに結婚を申し込もうって。今も気持ちは変わってない。アリサ結婚してくれ」
アンドリューのエメラルド色の瞳が真っ直ぐにアリサを見た。
「私、プロポーズはロマンチックにして欲しいってずっと思ってたの。だって女にとって結婚は特別なんだもの…」
アリサはすごく嬉しかった。でも、いきなりアンドリューが直球で来たので思わず戸惑っただけだった。
アンドリューはアリサの言いたい事を理解した。
「すまん。アリサ、今夜一緒に夜景でも見ないか?」
「ええ、いいわね」
「じゃ、レストランを予約する。その後、シロニカの森にでも出掛けないか?」
「いいけど…」
約束通りアンドリューはアリサを夕食に誘い王都のレストランで一緒に食事をした。
それから丘の上にあるシロニカの森で二人で夜景を見た。満点の星空の下、アンドリューがアリサの前に跪いた。
「アリサ、出会った時から君を好きになっていた。君をこの国に召喚してごめん。でも、この先の人生、絶対に後悔させない。俺と結婚して欲しい」
アンドリューは小さな小箱の蓋を開けた。そこには中心に大きなエメラルドが嵌め込まれて周りを琥珀が取り囲んでいる指輪があった。
「アンドリュー、私、この国に来た事後悔してない。あなたがいてくれたから。これからもずっと私のそばにいてね。愛してるアンドリュー」
アンドリューは震える指で指輪をアリサの薬指にはめると二人の顔は自然と近づき唇が重なった。何度も何度もキスをして抱きしめあい星空を二人で眺めた。
戴冠式の日。アンドリューの隣にはアリサが婚約者として一緒にいた。玉座に座るその隣、王妃の座にはアリサが座りにっこり微笑んだ。
「アリサ、これからの人生ずっとずっと一緒に歩んで行こう。君が居てくれれば俺は最高に幸せだから、国王になっても君への想いは永遠に変わらないと誓うよ」
「アンドリュー、私もこの世界にあなたが居てくれて本当に良かったわ。これからもずっと私のそばにいて。絶対に。あなたを愛してる」
「俺も愛してる」
アンドリューが国王になったガルシア国は聖女アリサのおかげもあって作物は大豊作となり他国との交易も発展した。
アリサの知識で色々なものの改良が進み技術も進んだ。それは収穫、医療、印刷技術、布製品、塗料、紙などあらゆる所に貢献した。
人々はこの次代をガルシアの黄金期を呼び、その功績は何代にも渡って語り継がれて行く事になる。
最後まで読んでいただきありがとうございました。次回作も頑張るのでよろしくお願いします。




