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第65話「シグレの冒険者登録3」

第65話「シグレの冒険者登録3」


 すると、受付嬢がベリウスの肩をポンと叩く。その視線はいくらか同情的だった。


「っス、まあ、あんま気にしないことっス。これからっスよ、これから」

「……それはどうでもいいが、スクロールはくれないのか?」


 本来の目的を思い出し、ベリウスは問う。


 スクロール、正式名称はマジックスクロール。

 これは、冒険者登録した際に、一人一つ受け取ることができるアイテムだ。


 任意の魔法、または、闘氣術をこの中にストックし、任意のタイミングで発動することができるという便利アイテムだ。ストックする際の魔法及び闘氣術は、それが使えるものに使用して貰う必要があるが、手軽さから貴重なものとなっている。


 このスクロールは、初心者の死亡率の高さから、冒険者協会が講じた対策の一つだった。

 スクロールを受け取った初級冒険者は、同ギルドのベテラン冒険者からストックを貰い、いざという時に使用するのだ。


 実際、スクロールが普及してから、初級冒険者の死亡率はグンと下がったという話を聞く。


「ああ、すまんっス。忘れてたっス」


 受付嬢は、ベリウスとシグレの二人分のスクロールを渡してくれる。

 ベリウスはそれをストレージの中にしまった。


「悪いな、シグレ。お前の分も預かっておくぞ」

「へぅ、い、いえ、悪いなんて……ふえへ……」

「用事は済んだ。行くぞ」


 そう言って歩き出すが、シグレが付いてくる気配がなかった。

 不思議に思って振り返ると、シグレが、気まずそうに視線を逸らした。


「あ、あにょ! ……そ、その、ふぇへ、シグレちょっとやり残したことがあって。よかったら、先に行って貰えたらなあとか思うのですが……」


 指先をつんつんとしながら、こちらの顔色を伺うシグレ。

 彼女がベリウスに何かを申し出るというのは珍しいことだった。だが、別に彼女の自由意志を否定したいわけではない。


「わかった。宿までの道のりは覚えているか?」

「い、いえ、本当にすぐ終わらせますので! 全然時間は掛かりませんので!」

「……まあ、いいだろう。外で待っているぞ」


    ◇


 シグレはベリウスがギルドを後にしたのを確認すると、ふうと息を吐く。


「もしかして、僕のパーティーに入る気になってくれたのかな?」


 すると、都合がいいと言わんばかりにヴェントが寄ってきた。

 本当に鬱陶しい人族である。


「うるさい。そこで大人しく待っていてください」


 言うと、シグレはギルド内に視線を飛ばす。幸いなことに、まだ、自分に注意が集まっていた。シグレはその中から、目的の人物に声を掛ける。


「えっと……二本のナイフを装備した金髪の少年。青い盾を持った黒髪の男。三本の剣を下げた金髪の中年。赤いローブを纏った茶髪の女。こちらに来てください」


 すると、呼ばれた彼らは素直にこちらに歩み寄ってきた。

 何を勘違いしているのか、落ち着きのない様子だ。


「俺たちと一緒に組みたいとか?」なんて聞こえてくる。わけのわからない勘違いに怒りが込み上げてくる。やはり彼らは浄化すべき存在かもしれない。


「ふえっへ……その、あの、死ぬか、神様を信仰するか選んでください」

「……は?」

「か、神様を悪くい、言いました。それは許されざることです。でも、神様は寛大なお方です。心を入れ替え、神様に尽くすというのであれば、きっとあなたたちにも祝福をくださるでしょう」


 問答無用で殺すべきなのかもしれないが、過ちは誰にでもある。それに、彼らのような弱き者を導くことこそ、シグレの役目なのだと思った。


「は、はあ? わけわかんねえっすわ……もしかして、さっき一緒にいた雑魚のこと言ってます? 神様て……洗脳でもされてんすか?」


 しかし、金髪の少年は眉を顰めて言った。

 洗脳? 雑魚? 一度ならず二度までも……。


「あ、当たり前です。……この人、頭おかしいよぉ」

「いや、おかしいのはどう考えてもそっちすよ! 神様? 尽くす? しかも、初級職の駆け出し相手にとか意味不明でしょ」

「い、イカレてる……じょ、常識がないんだ。じ、浄化しないと……ふえへ」


 どうも話が通じない。


 ベリウスの姿を一目でも見たのだ。

 それでも何も感じなかったというのか。

 そんなことが有り得るだろうか。


 それとも、やはり何か悪いものに憑かれているのだろうか。

 どちらにせよ、ここまで神様を侮辱されては、生かしておくのもよくないだろう。


「我は風を詠む踊り子。疾く駆けよ。嵐の刃にて、敵を引き裂け――」


 シグレは杖を構え、詠唱を始める。


「――【ウィンド・ブラスト】」


 燐光が弾け、魔力は幾重にも重なった風の刃として繰り出される。

 一直線に突き進んだそれは、金髪の少年に直撃。

 少年の悲鳴が上がり、風の刃に切り裂かれた体が鮮血を散らす。


「……ふえへ、か、可哀想……神様を感じられないと、こうなるんだ」


 少年は血だまりに伏し、ピクリとも動かない。

 神様を信仰していれば、きっと今の攻撃にも耐えられただろうに。


「おまっ、ギルド内で何やってやがる!」

「あなたはどうですか? 心を入れ替えますか? 神様のことを信仰しますか? 信じられますか? 全てを捧げて、一緒に幸せになりましょうね?」


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