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この世界では魔力が生き物に大きな影響を与える。その考え方や人がらもある程度魔力が導いてくれる。だからこそ、魔力による影響があまりにも大きすぎて、魔力の行使者がそれに耐えかねるような事態が起こり得る訳だ。それで出来たものが魔獣である。生物が魔力の力で獰猛になり、そこらじゅうの魔力を吸い取るようになる。すると、大気中に魔力が足りなくなり、結局その場所の均衡を崩す原因となってしまう。魔獣は周囲の強い魔力を持つ生物を襲うようになるので、生かしておくと危険な危険生物へとなってしまうのだ。
では、その環境を脅かすような魔獣を生み出したのは何か?人の手が入らなければ自然は壊れないのと同じで、魔獣も自然に発生することはない。それを生み出したのは他でもない、人間、亜人が永らく使い続けている魔法なのだ。
話は、トルンたちの学校が終わったところに戻る。
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「さて、今日の授業は終わりだ。学活だけして帰るぞ。」
「はーい。」
今日も学校が終わる。でも、僕らはちょっと今日は調べたい事があるんだ。
「先生、これが何か知りませんか?」
そう言ってメダルを見せてみる。
「いや、知らねえ。随分きれいなメダルだな。」
「そうですか。」
「調べ物なら図書室に行きな。教師も指導要領と人生経験以外に知識はないわ。」
「分かりました。」
図書室は僕らの教室がある西棟に位置している。扉を開けると、それほど来たことが無いのだが相変わらず大量の本棚が2階にわたって連なっている。
「これは調べるのに骨が折れるね…」
「だね。僕は上の方調べるから、トルンは下の方をお願い。」
「分かった。」
調べるのは、クルセウスの能力とメダルが何か、について。恐らく伝承関連の棚にあるだろう。しかしその種の本だけでも3つの本棚を占領している。取り敢えず、僕らは一番左の本棚から漁り始める。
《恐竜フィルアルドについての難解な文献》タイトルで内容を8割ほど
大体2時間くらい調べ続けた。調べ切ったのは本棚たった半分。
「無理だね。」
「うん。無理だ。これ。」
それなのに、メダルはおろか、英雄クルセウスの能力に関しても掠りもしなかった。
「ただいまー。」
家に帰ってみると、何故かチェイン、ウリルとミリア、セリス、シンシア、トーアが来ていた。
「おかえりー。」
「……?」
「ほら、戸惑ってんじゃねえか。言い出しっぺ。説明しろ。」
「えーっと…来ちゃった☆?」
「ごめん。ミリア。それじゃ全然分からないと思うの。」
「えーっと…ね、私がちょっと勉強会したいなぁって思ったから。トルンの家に押しかけようと思ったの。みんな誘ってね。でもトルンがいなかったから帰ろうとしたらトルンのお母さんに呼び止められて…」
シンシアが申し訳無さそうに言う。
「でもトルン、いつもは真っ直ぐ家に帰るのに今日はどうしたの?」
「ああ、お前寄り道する場所なんてねえだろ。急にどうしたよ。」
「なんか隠してそうですね。リムさん。トルンさん。教えるのです!」
う…相変わらずみんな察しがいいなぁ。
「えーっとね。これ、見てくれるかな。」
メダルをみんなに差し出す。
「ん?なんだこれ。お前んちの家紋じゃねえか。にしても傷一つ付いてねえな。ウリル、これ何で出来てるか分かるか?」
「んー。銀じゃない。金でも無いな。白金か?腐食しないためにえげつない魔法がかけられてるらしいな。ちょっと分かんねえ。」
「土魔法が得意なウリルでも分かんないとなると、ちょっと私達は無理かな。なんだろね。」
「ミリアの言うことももっともだよ。だから僕らは調べてたんだよ。」
「うーむ、なるほど!じゃあ試しに凍らせてみる?」
「え、待って。凍らせて大丈夫?壊れるんじゃないの?」
「それで壊れるなら調べるほどの物でも無かっただけの話!チェイン!やれ〜!」
「了解。」
「ちょっと待って!僕の意志は⁉」
チェインが稀に見る本気で氷魔法を叩き込む。
「どうやらお前の心配は杞憂らしいぞ。」
コインは冷えてはいたものの、冷えて可塑していることはおろか、霜の一つも降りていなかった。
「もっと強い魔法を当てられないものかな。」
「外に出してみたらいいのではないですか?冷やした後に火で炙れば割れるんじゃないですか?」
「ええ…壊す前提?」
外に出て、ある程度広い場所にメダルを置く。
「よし。ミリアは確か火の魔法も使えたよな。」
「うん!5だけどね!」
「十分。じゃあ燃やしてくれ。その後すぐに俺が凍らせる。」
ミリアが炎でコインを燃やす。それほど高温ではないが、十分に熱されたとは言えるだろう。
「ッサァ!」
チェインが全力で冷気を下ろす。ミリアの炎で焼け残った周囲の草が凍って崩れ落ちて割れた。
ダイヤモンドダストがその周りに発生している。
「これで…どうだ!」
チェインが魔力を退ける。白金のコインは何もなかったかのようにそこにあった。




