8話
―――『我の玩具よ早く目覚めよ・・・そして我を楽しませろ・・・そして・・・殺し合えっ。』―――
「・・・っ、ゆ・・・夢?」
飛び起きる紅葩・・・身体は汗だくで恐怖のあまり目の焦点が合っていない。
「・・・気持ち悪い。」
紅葩はふらつきながらも風呂場へ・・・シャワーで汗を洗い流す。
汗と共に先程の夢も流れ落ちていき、不快感は消えていった・・・。
「スッキリした~。」
部屋に戻ってきた紅葩は携帯が光っていることに気づく、剣からのメールだ。
【生徒会室に12時集合。】
(そっか・・・今日は。)
カレンダーに目を向ける、今日の日付に赤丸がついている。
時計を見ればまだ朝の6時、紅葩はエプロンを身に着け準備に取り掛かる。
作る物はバースデーケーキ・・・今日は咲良の誕生日である。
(それにしても・・・さっきどんな夢見てたんだっけ?)
スポンジから紅葩の手製物・・・作る手は止めないが心ここに在らずだった。
それから2時間スポンジが出来上がりデコレーションに移る。
チョコプレートにはホワイトペンで″Happy Birthday Sakura″と丁寧に書いていく。
箱に包装し、出来上がったのが9時。
「まだ9時か・・・ふぁ~あ。」
再びベットに寝転がる紅葩・・・瞼はすぐに落ちた。
―――(・・・ココ、どこ?)
見慣れない豪邸の敷地・・・広すぎる庭の木の幹にいる2人の子供。
1人はところどころ汚れている服を着た少年、その髪は誰かを連想させる紅蓮色の髪で・・・。
そしてもう1人は純白のワンピースを着た黒い髪の少女。
「だから、こうやって笑うんだよっ。」
「いひゃいっ・・・いひゃ・・・痛いって言ってるじゃないっ。」
「・・・くくっ。」
頬を伸ばされ起こる少女、少年は無邪気に笑っている。
「・・・何がおかしいのよ。」
「頬真っ赤、リンゴみてぇ。」
頬をさすりながら少年を睨む少女。
「誰のせいだとっ・・・。」
「ハハッ。」
まだ笑っている少年に怒る気にもならない・・・それどころか。
「・・・フフ。」
「・・・笑えるじゃねぇか。」
かすかに口角が上がった少女に少年は嬉しそうに笑った・・・少女はそんな少年を見てまた口角を上げた・・・。―――
「・・・んっ。」
目が覚めた紅葩。
「また夢・・・忘れた。」
しかし先程とは違い、不快感ではなく心地良いものだった。
「・・・ヤバッ。」
時計を見れば12時前・・・紅葩は急いで支度をして家を出た。
(あの男の子・・・。)
頭の中にボヤけて映る夢に出てきた少年・・・紅蓮色の髪と無邪気な笑顔だけ覚えている。
「・・・そっか。」
足を止めた紅葩・・・門には柱に寄り掛かってこちらを不機嫌そうに見ている蓮。
(あの子・・・蓮にソックリだった。)
紅葩は蓮と合流し共に生徒会室に向かった・・・。
「何で俺がお前を迎えに使わされなきゃいけねぇんだよ。」
「・・・ねぇ蓮、蓮の子供の頃ってどんなだった?」
いつもならケンカ腰の紅葩だが今日は大人しかった。
「・・・らしくねぇな、どうした?」
「夢の中でね・・・蓮に似た男の子が出てきたの、内容は全く覚えてないんだけど・・・もしかしたら私の記憶と関係がっ「気のせいだろ。」・・・。」
蓮の歩くスピードが上がった・・・その背中はひどく悲しげで紅葩は喋ることが出来なかった。
無言のまま生徒会室に着いた2人、そこには咲良を12時に連れてくる璃莉以外全員集まっていた、飾りつけもばっちり。
「後は咲良を待つだけだなっ。」
12時・・・主役の咲良の手によって扉が開かれ、それと同時にクラッカーを鳴らす。
「「「誕生日おめでとうっ、咲良。」」」
「「おめでとう。」」
「・・・・・。」
「・・・ありがとうっ。」
1瞬驚いていた咲良だが満面の笑みに変わる。
「咲良へのプレゼント。」
「ありがとう璃莉。」
璃莉からのプレゼントは桜色のリップクリーム。
「最近乾燥するって言ってたから。」
「「オレ(ボク)達はコレ~。」」
「可愛い~。」
双子のプレゼントは桜色の置時計、桜のデザインが描かれている。
「咲良は時間にルーズだからな~。」
「これからは自分で起きようね~。」
「う、うん・・・気を付けるよ。」
「アタシからはコレだ。」
剣から手渡されたもの・・・それは。
「咲良は勉強が疎かだからな。」
「・・・・・。」
勉強道具・・・嬉しくない。
「れ~ん?蓮からは何もないの~?」
「あ?あー・・・おめでとう。」
「そうじゃなくてさ~・・・ん?」
文句を言う前に飛んできたのはイチゴ味のポッキー、春限定の商品。
「やったぁぁぁーーー。」
ポッキーごときではしゃぐ咲良に蓮は息を吐いた。
「私からはコレとコレね。」
小さい箱と大きな箱・・・咲良は小さい箱から開ける、
中には桜色の櫛、大きな箱には咲良のために作ったバースデーケーキ。
「どう?・・・って咲良?」
肩を震わせている咲良に紅葩は不安になる。
「・・・咲っ「紅葩ちゃ~んっ。」ぐえっ。」
咲良にきつく抱きしめられた・・・どうやら嬉しさのあまり震えていたらしい。
「紅葩ちゃんっ、大好きっ。」
「・・・っ、ギブッ。」
咲良の背中を叩くが離してくれる気配はない。
「・・・・・。」
「ん?うわぁ紅葩ちゃん・・・誰がこんなことっ。」
紅葩の両肩を掴み揺さぶる咲良・・・。
「「お前だよ。」」
双子のツッコミは咲良には届かない・・・その後みんなは仲良くケーキをいただいたのだった。




