9話
5月下旬・・・少し早い″梅雨″が訪れようとしている・・・。
生徒会室。
「やっほ~・・・って。」
「何か・・・デジャヴだね。」
双子が生徒会室に入るとそこにはお菓子の山・・・ではなく黒ずんだ空気が漂っていた・・・これのどこかデジャヴなのか。
窓の近くに避難するとそこにはすでに生徒会のメンバーが。
「・・・えっとこれってやっぱり・・・。」
「・・・・・。」
メンバーが1人足りない・・・これはあの双子も気づいだだろう、元凶は紅葩である。
紅葩はソファーに寝転がって、この世の終わりといった風に現在進行形で落ち込んでいた。
「・・・何だ?この空気は。」
そこに蓮が入ってきた。
「蓮・・・紅葩が落ち込んでいてな、この有り様だ・・・。」
「・・・あぁ、この時期だなテストが返ってくるの。」
「テスト・・・・・。」
部屋の空気がさらに重くなった・・・十中八九テストのせいで落ち込んでいる。
「落ち込む必要なんてないよ紅葩、オレなんて英語20点台だぜ?」
「ボクも~。」
「・・・そうだったの。」
「「ヒッ・・・りっ、璃莉姉さんっ。」」
双子の背後では鞭を持ってにこやかに笑う璃莉の姿・・・目が開眼している。
「・・・そういえば咲良は今回全教科赤点だったそうだな。」
「ギクギクッ。」
「・・・口で言ってんじゃねぇよ。」
蓮がすかさずツッコミを入れるが咲良はそれどころではない。
「咲良もいらっしゃい。」
「「「ヒィ~~~~~。」」」
涙目で抱き合う3人・・・と璃莉の間に突然生えたキノコ。
「・・・・・?」
「ふふっ、英語?英語なんて・・・日本人に必要?」
落ち込んでいるというよりは病み始めている紅葩・・・周りはキノコに覆われている。
「くっ、紅葩?」
「キノコまで出し始めたな・・・。」
「どんだけ落ち込んでるんだよっ。」
「・・・驚いている暇も呆れている暇もないみたいよ。」
璃莉たちがいる窓際にまで生えてくるキノコ。
「あの人たちにどんな顔して会えって言うの?
もう顔向けできない・・・もうイヤ、死にたい・・・。」
負のオーラがさらに強くなる。
「紅葩ちゃんっ、落ち込む必要なんてないよっ。」
「「そうそうっ。」」
「・・・・・。」
落ちこぼれ軍団の励まし・・・。
「テストなんて次頑張ればいいさ。」
「・・・なんて?」
「紅葩なら次は良い点数取れるわ。」
「良い・・・点数?」
成績優秀者の2人から励まされたが、逆に紅葩の胸に矢が刺さった。
「おいっ、紅葩がさらに落ち込んでるぞっ。」
「あの2人を止めろっ。」
3人で2人を妨害しようと試みるが・・・別の人物が止めを刺してしまった。
「今無理なら頑張ったって一生無理だろ。」
「・・・・・。」
蓮の言葉に紅葩の頭に数10tの錘が降ってきた。
キノコは咲良たちの足元にまで生えてきた・・・。
「「「もうおしまいだぁーーー。」」」
何がおしまいなのか・・・3人が叫ぶ中扉は開かれた。
「あら?このキノコは何かしら?」
「「「天照っ。」」」
入ってきたのは天照。
「天照助けてよ~。」
「このままじゃ、キノコに埋もれるか、この空気に窒息しちゃうよ~。」
「・・・紅葩ね、プライドが高い子だから相当ショックだったのね。」
天照は目をハンカチで覆った・・・当然嘘泣きである。
「御託はいい、さっさと用件を言えババァ身動きが取れん。」
「・・・本当、可愛げのないガキね。
紅葩よく聞きなさい、紅葩の英語の答案にミスがあったのよ。」
「・・・ミス?」
今日初めて顔を上げた紅葩・・・その顔は大惨事だった。
「採点した先生のミスなんだけど、記号問題は全問正解だったらしいのよ。」
「本当っ?」
急に起き上がり元気になった紅葩、生徒会室の空気が一気に軽くなった。
「本当よ、コレ答案ね。」
紅葩に答案を渡し指を鳴らした天照、一瞬で部屋を埋め尽くしていたキノコが消えた。
「梅雨だものね・・・キノコ位生えるわよね~。」
「「生えねぇよ。」」
「どうして?キノコはカビの仲間なのよ?」
「菌の仲間だ。」
天照の間違った知識は置いといて・・・咲良は紅葩に近寄った。
「紅葩ちゃん何点だったの?」
「あれほどの落ち込みだったら10点か20点じゃね?」
「まさかの1桁かもね~。」
咲良と双子が答案を見ると・・・固まってしまった。
「・・・・・?」
固まった咲良の手から答案を取る璃莉。
「79点?」
訂正前の点数は49点と書かれていた。
「確か、今回の英語の平均点はちょうど50点だったな。」
「・・・元々英語は嫌いで・・・それでも平均は取ってたからさ・・・。」
苦笑する紅葩に固まる一同・・・平均より1点低いだけでキノコを出していたというのか・・・。
「おばあ様たちに慰められたくないんだよね・・・。」
「・・・大切なんだな。」
「うん、私の命の恩人で・・・家族だもの。」
嬉しそうにはにかむ紅葩、の携帯が鳴った。
「おばあ様から?ディナー・・・か。」
「あらいいわね・・・あたし達も今度みんなで行きましょ、ね?紅葩。」
紅葩は頷いた後生徒会室を出て行った。
「・・・さてっ紅葩のことも解決したし~。」
「ボク等は寮に戻ろうか~。」
「うちお風呂入る~。」
「待ちなさい。」
「「「うわぁっ。」」」
出て行こうとする3人を捕まえるのは璃莉の鞭。
「あなたたちはわたしの部屋ね。」
「「「えぇ~~~。」」」
「璃莉、アタシも付き合おう。」
「「「そんなぁーーー。」」」
5人は部屋から出る(内3人は引きずられている)・・・残ったのは蓮と天照。
「・・・天照。」
「蓮がまともに呼ぶなんて珍しいわね~何かしら?」
その顔は蓮が何を言いたいか分かっている顔・・・そして、その上で何も喋らないという顔だった。
「・・・なんでもない。」
蓮も部屋を出て行く・・・残ったのは天照1人。
「・・・あたしはダメな神ね・・・。
スサノオ、あんたはどれだけの人間の人生を狂わせたのかしら?」
(本当ならあの2人は今頃・・・。)
目を閉じる天照・・・いったい何を考えているのやら・・・。
その頃1番最初に生徒会室を出た紅葩はその足で祖父母が経営する病院に向かっていた。
「やぁ紅葩ちゃん。」
「先生、お久しぶりです。」
病院に入りまず会ったのがイケメンで腕も良い若い医者。
「医院長たちなら部屋で貴方のことを待っていますよ。」
「ありがとうございます先生。」
紅葩は迷わず奥のエレベーターに向かった。
「・・・先輩、彼女は一体?」
「あぁ、最近ココには来なかったからお前は知らないのか。
彼女は医院長の孫娘さんだ・・・近くの家に1人暮らししている。」
「え?でも医院長の奥様は子どもは・・・。」
先生は悲しく笑う・・・奥様、つまり紅葩の祖母は病気で子供を産むことは叶わなかったのだ。
「紅葩ちゃんは養子なんだよ・・・医院長たちの大切な宝物さ。」
「へぇ~医院長っていっつも尖ってて怖そうですけど・・・。」
「そんなことないさ、とても仲睦まじい家族だよ。」
医者の時の2人は確かに寡黙で怖そうに見えるが孫の紅葩の前では・・・。
「おじい様、おばあ様っ。」
「紅葩、メール見てくれたのね。」
「もちろんです、お2人からの連絡は何が何でも出ますから。」
幸せそうな家族団らん。
「今日は紅葩のお話たくさん聞きたいわ。」
「はいっ。」
その後3人はレストランに向かい料理を食べながら紅葩は生徒会のメンバーのことを嬉しそうに、幸せそうに話していた・・・。




