6話(改)
花見が終わり桜が散り始める5月。
時雨は見事宣言通り優勝し、今月の黒天学園で行われる大会に向けて頑張っている。
そして黒天学園では今学期初の中間テスト。
「こんちは~って何コレ?」
「お菓子の山………?」
授業が終わり生徒会室に入ってきたのは双子、
そこには比喩等ではなく、本当にお菓子の山が積まれていた…。
「やっほ~。」
「「咲良、どうしたのコレ?」」
お菓子をハムスターのように頬ぼっているのは咲良。
「見て分からないんですか?お菓子の山ですよ。」
「璃莉姉さん。」
お菓子の山の後ろのソファーに座り優雅に紅茶を飲んでいる璃莉。
「全然気づかなかった…。」
「うん…。」
「「小さすぎて。」」
璃莉は紅茶を口につけたままお菓子(堅そうな物)を投げた。
避ける双子にタイミング良く開かれる扉、
開けた人物はいきなり視界に入る物に驚くが、難なく受け止めた。
「「……………。」」
入ってきたのは剣と蓮、お菓子を受け止めたのは剣だった。
「…何だこの甘ったるい匂いは?」
甘い物が苦手な2人は不快そうに顔を歪めた。
「…咲良、お前の仕業か?」
「ひひゃうよ~ふれふぁひゃんやよ~。」(訳:違うよ~紅葩ちゃんだよ~。)
食べながら喋る咲良に璃莉はお菓子を投げて黙らせた。
「…で?コイツは何をしているんだ?」
お菓子の山の奥のテーブルとソファーにいる元凶を指差す蓮…そこには。
「すぅ………すー。」
勉強道具、課題を広げお菓子片手に眠っている紅葩の姿が。
ちなみにテストは明日からだ。
「わたしと咲良が来たときは勉強していたんだけど…。」
「紅葩ちゃん、朝から課題の山で寝てないんだって~。」
「………それで何でお菓子の山が出来るんだ?」
「糖分取らないと集中出来ないって天照に言ったら。」
「この状況ということか。」
「すー。」
未だに眠り続けている紅葩。
「…紅葩はともかくお前たちはどうなんだ?」
「「「うっ。」」」
剣の槍の様に鋭い言葉が頭に刺さった双子と咲良。
剣と璃莉は学年トップだが、咲良は全教科赤点orギリギリ、
蒼葵と紫葵は自分の得意科目(蒼:数学、紫:国語)は満点に近いのだがそれ以外は赤点という成績。
よくそれで進級できたな、という感じだがすべて天照様様なのである。
「オレたちは生徒会だからさ~。」
「天照万歳って感じっ。」
「うちもうちもっ。」
ヤル気のない双子と咲良に剣と璃莉は溜め息。
「将来が思い遣られるな…。」
「本当に…蓮さんは今回″も″受けないんですか?」
「あ?受けるつもりはねぇよ。」
留年しているとはいえ蓮も学生、本来なら受けなければならないのだが。
「蓮は″何故か″頭が良いからな。」
蓮は何故か(2回目)頭が良い、テストを受ければ全教科満点も出来る実力の持ち主…全く不思議な事に。
「ふぁ~あ、今何時………?」
やっと目覚める紅葩…寝ぼけ眼で時計を見る…。
「まだ5時………って、えぇ~~~寝すぎたっ。」
慌てだす紅葩に呆れるメンバー。
「何故溜めていたんだ?」
「…普段は家で問題無くやれるんだけど………。」
「…けど?」
言い淀む紅葩…頭の中を見透かすように蓮が…。
「お菓子なんて作ってる暇があったら課題やれば良かっただろうが。」
「うっ………。」
縮こまる紅葩…だがその原因を作ったのは…。
「天照のせいじゃんっ。」
「紅葩ちゃんっ、天照に言えば課題なんて出さなくても良いんだよっうち等みたいにっ、テストだってっ。」
決して威張って言うことではない。
「…ズルしてるみたいで私が嫌なの、課題やらないとテストの結果に反映されないし…。」
紅葩は授業をサボるときがあるが、それはどうでもいい授業の時だけ。
基本はちゃんと出来ているし、応用もできる頭は一応持っている。
「紅葩は真面目なのね…それならこのまま泊まっていく?」
「………そうする、元々一夜漬けタイプだから今日中に詰め込めば問題無いはず。」
「じゃあ蓮の部屋使えば?」
「は?」
紫葵の急な発言に驚く蓮…何故そこに自分の部屋が出てくる。
「だって蓮滅多に自分の部屋使わないじゃん~。」
「部屋が甘ったるくなるのは却下だ。」
「良いよ紫葵、ココでやるし。」
笑う紅葩に紫葵は蒼葵と一緒に蓮を責めたてる。
「だいたいこの学園で真面目に勉強しているのはお前位だぞ、補習さえ受けてれば進学できるんだからな。」
そこまで知っているのになぜ蓮は留年するのか…誰も聞かないのでその理由は明らかになっていない。
「私祖父母が両方医者なの…だからって別に強制とかされてるわけじゃないんだけど何となく、ね。」
見ず知らずの自分を孫のように可愛がってくれた祖父母のため。
将来のことを考えてちゃんと地に足をつけたいのだ。
「………はっ。」
蓮は不愛想に部屋から出て行った。
「夕食持ってくるからな、それまで頑張れ。」
「ありがとう剣。」
剣は紅葩の頭を撫でてから出て行く…連れて皆も出て行った。
「…よしっ。」
それからの紅葩の集中は凄かった…みんなが様子を見に来ても全く気づかなかった。
深夜を過ぎた頃ーーー。
「んっ…ヤバッ、また寝てたっ。」
また眠ってしまっていた紅葩…勢いよく起き上がるとパサリと落ちた何か。
「毛布…?」
いつの間にか自分にかけられていた毛布。
「一体誰が………ん?」
広げられた課題の上に1枚の紙切れ。
″こんなのも分かんねぇのかよバーカ。″という失礼極まりない内容だったが…。
その下の課題には問題1つ1つに解き方が分かりやすく書いてあった。
「……………バーカ。」
紅葩の顔には笑顔が生まれ、再び課題に取り組んだ。
そして5日間のテスト終わりを迎えた最終日。
「皆久しぶり。」
生徒会メンバーとは剣以外5日ぶりである。
「「オレ(ボク)達に会えなくて寂し「くなかったから。」…つれない~。」」
抱き付いてくる双子に器用にかわす紅葩。
咲良は頭を使い果たしソファーにぐったりしている。
「…紅葩、その袋は何だ?」
「皆に迷惑かけちゃったからそのお礼のクッキー。」
「本当っ、紅葩ちゃんっ。」
急に元気になり紅葩に飛びつく咲良、他の皆にも渡していく。
「じゃあ今日は用事があるから帰るね。」
「用事?」
「時雨と雫を家に招いて夕飯をごちそうする約束なの、お先。」
紅葩が扉を開ける前に扉が開かれる。
「何だ、もう帰るのか?」
「蓮。」
入ってきたのは蓮。
「バカで悪かったわねっ。」
クッキーを投げるように蓮に渡し帰っていった紅葩。
「……………。」
袋に入っていたのはクッキーだけでなかった。
″数学は誰かさんのおかげで点数良さそうです。″と書かれた紙切れ。
「…フッ。」
蓮は口角を上げクッキーを食べ始める…それは甘い物が苦手な蓮でも食べやすい味付けだった。
「蓮さん何笑ってるんですか?気持ち悪い。」ボソッ
「聞こえてんだよ…紅葩は何で帰った?」
「この間のお花見であったあの姉弟にごちそうするんだって~。」
オレも紅葩のごちそう食べたい~と駄々をこねる蒼葵は無視。
「んぅ〜〜〜?。」
「咲良?」
何か考え事している咲良………明日は雪だろうか。
「よく分かんないけど、時雨に一瞬うち等と似たようなモン感じたんだよね〜。」
「…咲良の勘?」
「咲良の勘は良く当たるからな…だとしたら弓道の大会の時は念の為警戒しておいた方がいいか。」
街が消滅して5年…かつての住人はどこで何をしているのか天照でさえ把握していない。
「もし咲良の勘が当たっていたら………紅葩は、どう思うのかしら?」
「「「「「……………。」」」」」
璃莉の言葉に言葉が出ないメンバー…紅葩がどう思うのか、答えを出すまでもないのだから。




