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5話(改)

「ふぁ~あ。」

金曜日の週末…紅葩はだらけている。

それは週末に限ったことではないが、紅葩は気分屋で真面目に受けるときもあればサボるときもあるし、今みたいにだらけているときもある。

(暇だな…。)

紅葩はふと視線を黒板から移した。

(剣、どこ行ったんだろう…。)

剣達生徒会メンバーを紅葩は今日1度も見ていない。(蓮は1週間音沙汰なし。)

「椿 紅葩さん、大至急理事長室まで。」

「………はぁ。」

理事長、天照からの呼び出し…授業中に呼び出されるのは何度目かになる。

溜め息を吐いてから紅葩は席を立つ、先生は理事長に逆らえないので何も言わない。

教室を出て理事長室に向かう…来客中だがお構いなしにノックもせずにはいる紅葩、ちなみに日常茶飯事だ。

「紅葩、ちょうど良かったわ〜紅茶、入れて頂戴。」

「………はいはい。」

語尾にハートが付いている天照の言葉に紅葩は大人しく従う。

(自分で呼び出しといてちょうど良かった、じゃないと思うけどね…。)

これも日常茶飯事の事、紅葩は給湯室に向かい準備をする。

天照の呼び出しは9割方紅茶だ…給湯室のどこに何が置いてあるか、天照の好みは何かなど嫌でも覚えてしまった紅葩。

今では自分の家の様に理事長室の中は把握している。

「…で、あなた誰?あたしに何の用事?」

「この学校の校長なのですが…毎回忘れられる儂って…。」

泣いているジジッ…ではなく校長。

天照はこの通り忘れっぽい性格で大事な事以外はすぐ忘れてしまう。

「そうそう校長ね…で、何だったかしら〜?」

「…夏に見学に来る中学生達に何を見せるのか、ということで貴方から呼び出しを「ああ、勝手に決めるから出てもらって良いわよ〜。」………儂の立場って…。」

泣きながら理事長室を出て行く校長、それと入れ替わりに紅茶と洋菓子を持ってきた紅葩。

「あら?洋菓子なんてあったかしら?」

「前に天照が紅茶だけじゃ物足りないって言うから作って持ってきたのよ。」

洋菓子と紅茶を机に置いた紅葩、教室には行かずソファーに座る。

「そういえば剣達は?」

「剣達は街の巡回をお願いしているわ、最近物騒な事件この付近で流行ってるでしょ〜?」

おかげであたしの評判は上がりまくりよ~と上機嫌な天照。

「確かに新聞にこの辺りで暴行事件があったって載ってたね。」

あまり気には留めなかった事件。

紅葩はケンカでは負けなしの実力、不意を突かれなければ叩きのめす自信がある。

「あら以外〜新聞なんて読むのね、おかわり。」

空になったカップを差し出す天照を睨む紅葩…手はちゃんと注いでいる。

「…悪かったわね以外で。」

「冗談よ、紅葩は家事全般こなす主婦だものね。」

微笑む天照に主婦じゃねーよ、とツッコミを入れたいが意味が無いので言わない。

「…そろそろ戻るから。」

「待って、紅葩にしか頼めない大事なことがあるのよ〜。」

「大事な…?」

真剣な顔の天照に紅葩は緊張してしまう…。

「実はね〜。」

次の日―――土曜日にも関わらず紅葩は学校に来ている、その理由は昨日の天照の″大事″な用のためなのだが…。

「………はぁ。」

「「紅葩ちゃ~~~ん。」」

校門には私服の蒼葵と紫葵が待ち構えていた。

「待ってたぜ~。」

「ボクたちがちゃんとエスコートしてあげるからね~。」

蒼葵は手を掴み、紫葵は紅葩の腰に手を回した。

「…どうでもいいんけど、2人ともまた入れ替わってる?」

「していなくてもセクハラだぞ。」

「「イテテテテッ。」」

2人より遅れてやって来た私服の剣に制裁される双子。

「…紅葩も最近分かるようになってきたからつまんねぇな~。」

「本当本当。」

カラコンを外すとお互いの色が現れる。

「紅葩、咲良と璃莉が先に準備している、行こうか。」

「うっ、うんっ。」

少し様子がおかしい紅葩…足早に校舎に入っていく。

「……………。」

剣は何も言わずその後を追った…取り残された双子。

「紫葵、見たか?」

「あの2人…特に紅葩ちゃんの様子がおかしかったよね~蒼葵。」

「「うーん…。」」

手を組み唸る双子…だが、この(バカ)2人が考えても分かる訳が無く。

「「ま、いっか。」」

諦めた2人は紅葩たちが向かった家庭科室に足を進めた。

「「………………。」」

その頃無言で歩いている紅葩と剣。

(気まずい…顔合わせづらい。)

前回のことを思い出して頬に熱が溜まる紅葩。

「紅葩…まだ根に持っているのか?」

「えっ?根には持ってないよっ。」

「なら、照れているのか?」

「…っ、またそういうこと言うっ。」

予想通りの反応をする紅葩に微笑む剣。

家庭科室の扉を開ける剣、中にはたくさんの食材とエプロンをつけた私服の璃莉と咲良。

2人からエプロンを渡され着用した2人。

紅葩はいつものポニーテール、剣は髪の毛を下ろさないように頭に布を巻き、咲良は前髪をピンでとめ、璃莉もいつも通りのマフラーに団子。

「料理なんて初めてだからドキドキしてきた~。えーとっ、まずは材料を切って「まずは洗ってから、でしょ。」そうだよね〜。」

包丁から持とうとする咲良に紅葩はやる前から不安を覚えた。

(全員寮生活だから少しは覚悟してたけど…。)

予想を上回る素人…全員包丁を持った事さえないと言い出したものだ。

「…でも花見に行くから弁当作れ、なんて天照って本当よく分からない。」

真剣な表情で何を言うのかと思えば花見をしたいのよね〜とは、呆れて何も言えなかった紅葩。

「5年一緒のうち等もあの人のこと分かんないもんね~。」

「………私は野菜を洗うだけで全身びしょ濡れにしてる咲良の方が今は分かんないかな…。」

びしょ濡れになった咲良を着替えさせ今度こそ料理に取り掛かる。

「わ~紅葩ちゃん手先器用~。」

手慣れた素早い動作で野菜を切っていく紅葩。

「早く切ろうとか思わなくていいからね、ちゃんと猫の手にする事と皮を剥く野菜はちゃんと皮剥き器で剥くこと。」

咲良に作業を任せ紅葩は味付けに取り掛かった。

量が多いので味を変えないよう慎重に味付けをしていく。

「紅葩、これでいいのか?」

「…剣、料理初めてじゃなかったの?」

始まる前は″初めての人のための料理の仕方″という本を見ていた剣に桜と同じ不安感を覚えたものだが、剣の前には均等に切られている野菜や肉や魚。

魚に関してはちゃんと捌かれ、骨抜きもされていた。

「本と紅葩の見様見真似でやってみたんだが。」

さすが剣と言う事だろうか、咲良の方を見れば教えたことを忠実にやっていた…それ以外は全滅していたが…。

(………まぁ、想定内かな?後は…。)

「璃っ“シュッ“…っ。」

璃莉の方に顔を向けようとしたら目の前を横切る何か…。

恐る恐る後ろを振り向くと…壁に包丁が刺さっていた。

「ヒッ…璃莉っ、何しっ…。」

璃莉の方を勢いよく振り向く…思わず唖然とする紅葩。

「紅葩それが思うように切れなくてつい力が入っちゃって…。」

「嫌っ、もう野菜の原型無いし、まな板ごと切ってるっ。」

飛んできた包丁の刃は見たら欠けていた。

璃莉の周りには野菜なのか、まな板なのか分からない物体が散乱していた………地獄絵図とはこのことなのだろうか。

さらに紅葩はあるものを発見し、さらに絶句した。

「………璃莉…もしかして″コレ″…使った?」

「?うん、洗うって言ったら″洗剤″でしょ?」

「「……………っ。」」

その言葉には紅葩だけじゃなく、剣と咲良も固まった。

「璃莉っ、野菜は水でいいんだよっ、うちだって知ってる。」

「え?そうなの…?」

「…璃莉にも苦手なものがあったのか。」

璃莉は成績優秀の他に、のんびりした雰囲気の持ち主だが身体能力が高い。(神具を抜きにしても)

可愛く首を傾げる璃莉だが、あれだけの惨事にも関わらず、汚れひとつ付いていない璃莉の身体に恐怖を覚える紅葩だった。

それから璃莉は見学させ、3人で料理を作っていく。

「本格的な重箱弁当だな〜。」

「おいしそう~。」

「蒼葵、紫葵。」

入ってきた蒼葵と紫葵の2人。

「アレ?璃莉姉さん見学?」

「姉さんは完璧に見えて手先は不器用だからね~。」

「……………。」

無言で睨む璃莉…銀色の瞳に睨まれ黙る双子、まさに蛇に睨まれた蛙。

「出来たっ。」

何段もある重箱弁当が並べられる。

「はい璃莉、試食してみて。」

いくつかの品を皿に乗せて璃莉に渡した。

その際双子が捕ろうとしたが紅葩の箸がそれを防ぐ。

「うん…美味しい。」

「ありがとう…誰にでも得意不得意あるんだし、気にする必要ないよ。」

「紅葩、有難う。」

璃莉は嬉しそうに顔を綻ばせた。

「璃莉~この報告書頼めるかしら?警察に今日中に渡さないといけないの。」

「…天照、分かりました今行きます。」

家庭科室に突如入ってきた天照。

(天照・・・どっから話聞いて。)

紅葩と目が合うとウィンクした天照…天照には筒抜けらしい。

「さぁっ、明日は無礼講よ~~~。」

「「「おぉ~~~。」」」

咲良と双子はノリノリだ…そのテンションのまま日曜日。

天気は快晴、絶好の花見日和である。

「綺麗・・・。」

満開の時期の桜に目を奪われる。

黒天学園は四季の折々を感じる事が出来る、それだけでもこの学園を選んだ甲斐がある。

無礼講という事で天照が皆んなにお酒を飲ませようとしていたが璃莉がそれを止めた。

仮にも学園の理事長が未成年にお酒を勧めるのはどうかと思う…。

弁当を開け早速食べ始めるメンバー、自分の料理を美味しそうに食べている姿を見るだけで紅葩は満足である。

「まぁまぁだな。」

「それは悪うございま……………は?」

隣を見れば1週間音沙汰無しだった蓮の姿。

「何で居るの?っていうか人のお弁当にケチつけないでくれる?文句があるなら食べなくて結構よっ。」

蓮から取り上げようとするが、身長差から取れない。

「俺は腹が減ってるんだ、邪魔するんじゃねぇよ。」

「なら文句言うなっ。」

周りは食べているのに夢中なのか面白がっているのか、止める者はいなかった。

「アンタのために作ったわけじゃないんだから食べないでよっ。」

「なら勝手に食わせてもらう。」

「まぁまぁ2人とも、せっかくの花見なんだからケンカはなっ「紅葩さんっ。」…?」

止めに入る咲良の声を遮る声、紅葩には聞き覚えのある声だ。

「時雨?」

私服姿の時雨とその後ろには私服姿の雫の姿もあった。

「どうしてここに?」

「姉さんと次の試合の下見に来てたんですけど紅葩さんに会えるなんて嬉しいな。」

微笑む時雨…紅葩はその言葉に純粋に喜んだが…。

「ハッ、とんだもの好きがいたもんっ「悪かったわね。」ぐっ。」

余計なことを言う蓮に肘鉄を喰らわす。

「紅葩さんは…お花見ですか?」

後ろにいる雫はメンバーを見て驚く…あの理事長の天照もいるのだから当然の反応だろう。

「紅葩~お酒注いでちょうだっ…あら〜?」

ザルの酒豪の癖に酔っぱらいのように絡んでくる天照、雫と時雨と目が合った。

「わたしは1年生の雪乃 雫です、こっちは弟の時雨です。」

「…来年はアナタの学園に入りたいと思っています、よろしくお願いします。」

「そう〜紅葩、あたしお酒買ってくるわね~。」

アレだけいっぱいあったのにもう飲んでしまったのか…。

「あの人…不思議な人ですね、まるで――――――――。」

「えっ?」

「理事長なんて緊張するよ〜紅葩も緊張した?」

「えっ、あぁ、まぁ…。」

雫の話に紅葩は真剣に応える事ができなかった…何故なら。

(今時雨…″人間じゃないみたいだ″、って言った?)

声で聴いたわけじゃない…でも口がそう動いていた様な気がした。

「そんなわけないよ…ね?時雨と雫も一緒に食べる?」

「紅葩の料理か、久しぶりに食べたいな~ね?時雨。」

「そうですね、行きましょ?紅葩さん。」

「わっ、時雨っ。」

手を引っ張られ座らされたのは時雨と雫の間。

「へぇ~時雨君って弓道部なんだ、カッコいいね~。」

「女子にモテるでしょ?」

「そんなことないですよ。」

すぐに皆と仲良くなった時雨、その会話に入らず黙々と食べている蓮。

「あの、前に紅葩と言い争いしていた人ですよね?」

「あ?あぁ…あの時紅葩と一緒にいた奴か。」

「紅葩と仲が良いんですね………羨ましいな。」

食べていた蓮の手が止まった。

「…お前たちの方が仲良いだろ?

それにアイツと仲が良いだなんて冗談じゃない、アイツとはケンカしてばかりでさっきも肘鉄喰らわされたばかりだぞ。」

「紅葩って優しいんですよ〜わたしたち姉弟には特に…。

だからなんでも言い合っているあなたがわたしは羨ましいんです。」

「………そうか、まぁ俺には関係のないことだがな。」

そう吐き捨てる蓮だが、雫には喜んでいる様に見えた。

「このムッツリ~何女の子独占してんだよ。」

「ボクたちも混ぜて~。」

「近づくなっ、纏わりつくなっ、一緒にするなタラシ共がっ。」

双子に絡まれ顔を歪める蓮。

「雫をナンパするなっ、そこの双子っ。」

「紅葩さん…来週の大会に勝ちあがったら次の大会は黒天学園でやるんです。

僕頑張りますので見に来てくれますか?」

「もちろん。」

時雨の頭を撫でる紅葩。

「そういえばその大会の前日までウチはテストでしたね。」

「……………え゛っ?」

璃莉の呟きに撫でていた紅葩の手が止まる。

「テッ…テストォ~~~?」

紅葩の悲痛な叫びは辺りに響き渡った。

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