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2話(改)

「剣様っ…今日もカッコいい…。」

「……………。」

入学して1週間…クラスだけに収まらず、学校中が彼女の虜になっていた。

彼女の名前は凰間(おうま) (あきら)、入学初日紅葩がぶつかってしまった女子、15歳とは思えない容姿に男子の影は霞むばかりだ。

そして、最大の人気の理由が″生徒会″に選ばれたこと。

生徒会と言ってもただの生徒会ではない、

理事長直々の推薦の元で内容にもよるが、先生よりも権限が高くなることから″選ばれた者″と呼ばれている。

剣の他に生徒会は5人。

2年双子の桔梗(ききょう) 蒼葵(そうき)紫葵(しき)

同じく2年の桜花(おうか) 咲良(さくら)、3年生徒会長の(しろがね) 璃莉(りり)…そしてもう1人いるらしいが他の4人と違って情報が謎だ。

「ねぇ…ねぇっ、椿さんっ…剣様がこっちに来てるわよっ。」

前の席の女子生徒が興奮するあまり肩を叩かれるが地味に痛い…紅葩は前を向くと剣が紅葩を見下ろしていた。

釣り目の赤い瞳と漆黒の瞳が交わる。

「椿 紅葩、この後時間はあるか?少し着いて来て欲しい所があるんだ。」

女子生徒達の悲鳴が響く。

「…悪いんだけど、夕飯の買い物があるから放課後はあまり残りたくないんだよね。」

「………そうか。」

「それじゃ。」

剣の横をすり抜け教室を出る紅葩…だが。

「やぁ。」

「また会ったね、紅葩ちゃん。」

蒼葵と紫葵が道を塞ぐように廊下に立っていた。

「どいてくれません?先輩。」

「イヤ〜剣からのお誘いを断る女子がいるなんてね〜。」

「ヤーイ、剣振られてる〜。」

双子のヤジに剣は無視…その横を通ろうとしたら先を読んだかのように璃莉が紅葩の道を三度塞いだ。

「「……………。」」

「あ~もうっ、みんなイジメすぎだよっ、紅葩ちゃんが困ってるでしょっ?」

璃莉と睨み合っていた(?)背後から喋ったことのない咲良に跳びつかれ抱き締められる。(咲良の方がちょっと小さい。)

「…咲良。」

後を追いかけてきた剣は咲良の名前を牽制するように静かに呼んだ。

「な〜に?剣。」

「くっ…苦しいっ。」

後ろから抱き付き力を入れて抱き締めているため、紅葩の首が締まっていた…咲良はすぐに紅葩から離れた。

「ごっ、ゴメンねっ紅葩ちゃんっ。」

「はぁ、はぁっ、揃いも揃って何?人の名前勝手に呼んでるし…。」

「ちょ~~~っと確認したいことがあって。」

「ココじゃなんだから場所替えようか?」

2人がエスコートしようと肩や腰に触ってくるが回避した。

「悪いようにはしない。」

「……………分かった。」

剣の言葉に紅葩は頷き4人について行く…着いた場所は生徒会室。

そこは学校の敷地内とは思えないほど、豪華な部屋だった。

「…で?連れてきたけど呼び出した本人は〜?」

「隣の部屋にいなかったよ〜またぶらりお出かけしてるんじゃないの〜?」

「はぁ?人のこと使っといて本当にあのおばさんは〜。」

どうやら彼らが首謀者では無いらしい…紅葩は帰りたくて仕方が無い。

扉付近に立っている3人に、紅葩の向かいのソファーに座る璃莉、剣は紅葩の目の前に紅茶を置き、紅葩の横のソファーの背もたれの上に腰かけた。

「ごめんなさいね?呼び出しておいて待たせる形にしてしまって…。」

「別に。」

「紅葩ちゃ〜ん“ボス”が来るまでボク達と話してようよ、紅葩ちゃんの子供の時の話とかさ〜。」

「………………。」

生徒会の空気に呑まれないよう気を張っていた紅葩だが、紫葵の言葉に肩が跳ねる。

「紅葩ちゃんって…神様って信じてる~?」

「………っ。」

畳み掛けられる咲良の言葉に過剰に反応してしまう紅葩、目に見えて動揺している。

「わたっ、しは…痛っ。」

頭が割れるように痛い。

別に紅葩は神がいようが、幽霊がいようが自分と関わらなければどうでも良いと思っている。

(頭が…痛いっ。)

―――『……………の玩具よ………ろしあうが…い。』

暗い闇のような、脳に直接響いてくる不気味な声。―――

(今のはっ…何?)

途切れ途切れの映像…洋風の屋敷、白いワンピースを着た幼い少女。

(私の記憶…なの?)

実は紅葩には幼い頃の記憶が無い。

紅葩の最初の記憶は道端で倒れていた所を今の祖父母に拾われ養子になった事。

「…嫌だ。」

自分の身体を必死に抱き締める紅葩…その肩は震えていた。

(思い出したくない…怖い。)

怖いもの知らずの紅葩だが過去に関しては脳が、身体が全てを拒絶していた。

そんな紅葩を見て剣は肩に触れ声を掛けようとした…が。

「………っ、離れろっ。」

剣が叫ぶと同時に、紅葩は剣に引き寄せられ無理やり移動させられる。

急に抱きしめられ剣に抵抗しようとした紅葩の耳に爆発音が木霊した。

(………爆発?)

テレビでしか聞いたことが無い、日常に無い音に頭の痛みに堪えながら窓側を見る。

生徒会室の窓の壁が一部壊れ、砂煙からは2つの人影。

「……………。」

まるで映画のワンシーンのような光景…がコレは現実の出来事。

呆然とする紅葩の目にきらりと光るナイフが映る。

瞬きも出来ないまま、ナイフは金属音を発し弾かれた…剣の手によって。

「……………は?」

剣の手には剣の瞳に負けず劣らずの綺麗な赤い日本刀が握られていた。

他にも蒼葵と紫葵はお互いの色を強調した紫色と蒼色の鉄扇、

咲良は名前の読みと一緒の桜色の鎖、璃莉は透明に近い透き通っている銀の鞭をそれぞれ手にしていた。

普通の学生が持っているはずの無い武器を彼らは所持していた…。

「……………。」

次々と非現実な光景に頭が追いつかない…そんな中砂煙が晴れ、2つの影が姿を見せる。

1人はスーツを着たサラリーマンの男、そしてもう1人は。

「………っ。」

紅葩の心臓がさっきまでとは違う意味で跳ねた。

「………蓮。」

「また生徒会壊しちゃって~。」

「「おばさんに怒られるよ~。」」

「わたしたちを巻き込むの…やめてほしいです、1人で怒られてくださいね。」

「うるせぇよ、人目に付く方が厄介だろうが。」

無造作に伸びている、炎を連想させる紅蓮色の髪に黒いバンダナが巻かれ男の美形の良さが目立つ。

そして血の様な、黒の混じった赤い瞳を持った青年はこの学園の制服を纏っていた。

「……………。」

紅葩は目が離せなかった…まるで吸い込まれるかのように剣から離れ青年に近づく。

青年も近づく紅葩に気づき目が合う…お互い見つめ合い2人は時間が止まったように動かなかった。

「「…………。」」

「隙有りっ。」

サラリーマンの男は好機だと思い、青年と紅葩に目掛けてナイフを投げた。

「………っ。」

青年は我に返り紅葩を抱え壊れた窓から飛び降りた。

(………え?)

生徒会は3階だ…そこから飛び降りる等自殺行為に等しい…が青年は紅葩を抱え無事に着地すると紅葩を連れたまま学園から出て行った。

「…クソッ。」

サラリーマンの男は顔を歪めつつ、後ろからの鞭の攻撃を避けた。

周りには武器を構え殺気立つメンバーがいた…。

場所が変わり人気の無い路地裏、青年はそこで身を隠していた。

「……………。」

「ん~~~っ。」

青年の胸をドンドンと叩く紅葩…青年は気配を消すために紅葩の口(顔)を自分の胸に押さえつけて息を止めさせていた。

青年はすっかりそのことを忘れていた…。

「あぁ…悪かったな。」

「ぷはぁ~………はぁっ。」

酸欠直前だったらしく肩で一生懸命呼吸する紅葩。

涙目で青年を睨み文句を言おうと顔を上げると…青年は肩を押さえ冷や汗をかいていた。

「………アンタ、その傷っ。」

青年の肩から血が流れていた…紅葩は触れようとするが青年に拒まれた。

「手当てしないとっ「こんな傷すぐ治る。」何言っ…っ。」

紅葩は目を疑った…青年の傷は軽いものではなかった、がだんだん治りかけていた。

普通の人間ではありえない回復力。

「・・・人間じゃねぇ、って言いてぇのか?」

鋭い瞳が紅葩を見つめる。

「違っ「俺や…アイツらだって望んでこんな身体になったわけじゃねぇ。」話をっ「全部、全部アイツがっ。」ちょっとっ。」

人の話を聞かない青年の頭を渾身の力で叩く紅葩。

いきなりの出来事と、紅葩の力は怪力の部類に入るほど強い…今度は青年が涙目になった。

「何1人で盛り上がってんのよっ、アンタを人間じゃ無いなんて思ってないわよ…勝手に人の心決めないでくれる?」

「………お前。」

紅葩の真っ直ぐな目が青年を見る。

「ちょっと人より傷の治りが速くて、武器を持ってて…だから何?

アンタや凰間たちだって…私を助けてくれた、それで充分じゃない。」

「お前…変な奴だな。」

さっきとは違う優しい声・・・青年の顔は口角を上げ微笑んでいた。

「………っ。」

その顔を見て頬に熱が灯る…青年はそれに気づくこと無く、肩が治ったのか腕を回していた。

「………どうした?」

「…っ、アンタの方がよっぽど変だって思っただけよ。」

「お前、さっきと言ってること違うぞ?」

「はっ、アンタの耳は節穴?私は人間じゃないって言っただけよっ。」

「似たようなもんだろうがっ…バカかお前は。」

「お前お前って言うなっ。」

「名前知らねぇんだからお前としか呼べねぇだろうがっ。」

「……………あ。」

隠れているはずなのに叫びに近い大声での言い争いが止まった…。

出逢いが出逢いだけに衝撃的過ぎたが2人は全くの初対面、名前など知るはずもない。

(名前も知らない相手に何をムキになってんだ俺は…。)

頭を掻いて冷静になろうとする青年、何故だかこの少女の前では調子が狂ってしまう。

「私は紅葩…椿 紅葩。」

青年の手が止まり、目を見開いて紅葩を凝視する。

「つばき?椿 紅葩だと?」

「な、何よ………。」

青年の脳内に浮かぶのは1軒の豪邸、そこに住む1人の幼い少女。

「…あのババァ。」

「ねぇ、アンタの名前は?」

小さく言った言葉は紅葩に届かず、その言葉に青年は現実に戻された。

緋真(ひさな) (れん)だ、お前「名前。」…椿「名前っ。」何だよ。」

「椿っていう苗字が嫌いなのよ。」

記憶喪失の紅葩が唯一覚えていたのが苗字のみ。

紅葩はこの苗字が嫌いだった…さらにどうしてか青年、蓮には絶対に呼ばれたくなかった…。

「…紅葩、これで満足か?」

名を呼び、覆いかぶさるように自身の大きな手で紅葩の頭を乱暴に撫でた。

紅葩はその大きな手に何故だか安心してしまう。

「…ねぇ蓮、どこに武器を持ってたの?

凰間たちもあの男も…蓮達なんて壁は破壊するし、生徒会室は3階なのに窓から侵入してたし。」

「…俺達は…ある神によって、身体を弄られた。」

怪我をしてもすぐ治るように、3階でも軽々と跳べる程の身体能力を…。

「スサノオ…素戔嗚尊(すさのおのみこと)の手によって、俺達の人生は狂わされた。」

「スサ………ノオ?」

蓮は右手を前に翳すと光が生まれる…光は消え、蓮の手には銃が握られていた。

「俺達の武器は………自分の“命“だ。」

「え…………?」

「バトル・ロワイヤル…勝ち残った1人だけが人間に戻ることが出来るデスゲームだ。」

なんて残酷なゲームだろう…紅葩は顔を青ざめる。

5年前、消えたその街に住んでいた人間は、かつて一緒に暮らしていた人と殺し合っている…今もどこかで。

「武器(命)を壊せば俺達は消滅する…俺達はスサノオの暇つぶしのための玩具、今もアイツはどこかでゲームを楽しんでいるんだろうよ。」

血が出そうな程唇を噛み締めている蓮に紅葩は何を思ったのか蓮の銃に触れた。

(………っ。)

身体中に電気が走ったような感覚、全身が心臓になったかのように身体が脈打つ。

(何かが…こっちに来る?)

「紅葩っ。」

紅葩の腕を引くのと同時、爆音が響き蓮は紅葩を爆風から庇うように抱きしめた。

そこにはボロボロになったサラリーマンとピンピンしている生徒会メンバー。

「蓮〜見つけたっっっ。」

戦闘中にも関わらず蓮を指差した咲良…どうやらご機嫌斜めらしい。

「オレたちが闘ってる中お前はっ。」

「何紅葩ちゃんとイチャついてんだよっ。」

「誰と誰がイチャついてるって?ふざけんな双子。」

その漫才(?)を制するように璃莉の鞭がしなった。

「蓮さん、あなたのせいで″天照″さんに叱られたんですから…後で覚悟しておいてくださいね。」

「………天照?」

天照とはもしや…。

「蓮、椿 紅葩を頼む。」

「あぁ。」

「ちょっ、蓮っ。」

紅葩を引き寄せ、目と耳を塞ぐように胸に押さえつける蓮。(今回はちゃんと呼吸ができるように配慮してある。)

それを見た剣は刀を構え、男に向かって駆ける。

ナイフを投げてくるがすべて弾き、一つも傷つくこと無く距離を縮めそして…。

「終わりだ。」

剣の刀は男の喉元を捉えていた。

「ウチのエースに睨まれたらな~。」

「おじさんドンマイ~。」

軽く言う双子に男はイラつきナイフを投げた…が。

2人は瞬時に鉄扇を具現化させ蒼葵はナイフを弾き、紫葵は真っ二つにした。

咲良と璃莉にも投げたが、咲良は笑みを崩すことなく鎖で受け止め璃莉は軽やかな身のこなしで1本、もう1本投げてきたので鞭で難なく弾く。

「………くっ。」

男は懲りずに再びナイフを具現化させ…。

「往生際が悪すぎるぜ?諦めろ。」

1発の銃声、正確に男の手を貫いていた。

紅葩を片手で抱え、もう片方の手で銃を握っていた。

「……………。」

諦めた男は静かに目を閉じた。

「先程の言葉をもう1度言う…アタシ達を信じて闘いを辞めてくれないか?」

「はっ、誰がそんな戯言を信じる奴がいる?殺るなら早く殺せ。」

「……………。」

剣は静かに刀を上げた。

(…静かになった?)

蓮に目と耳を塞がれていても辛うじてだか音は聞こえていた…がそれも止んでしまった。

蓮の腕は緩んでいた…紅葩は蓮の腕をどかした。

「おいっ。」

「・・・っ。」

振り向いた先には剣が男に向かって刀を振り下ろしているところだった。

誰も止めようとせず、じっとその光景を見ていた…男は仰向けに倒れた。

「………「見てろ。」………蓮。」

駆け寄ろうとする紅葩を蓮が止めた。

「アレが俺達の現実だ…。」

斬れたスーツの下にあったナイフが儚い音をたてて壊れた…男の身体は光に包まれそして消えた。

紅葩は何も言わずその光景を見つめていた、骨も残らず消えた男…コレがスサノオの、神の玩具になったモノたちの最期。

「……………。」

メンバーを見ると何事もなかったように武器を消していた。

紅葩の視界の端では、璃莉の鞭によってぐるぐる巻きにされ引きずられている蓮の姿があった。

「…椿 紅葩。」

「助けてくれてありがとう。」

微笑む紅葩に剣も微笑んだ。

「おいっ璃莉、いい加減にっ「黙ってください蓮さん」…。」

璃莉の黒い笑みに流石の蓮も黙るしかなかった。

「剣、そろそろ行きましょうか…椿さんを天照さんの所に連れて行かないといけないですし。」

声色が変わらない璃莉の声と言葉に緊張してしまう紅葩。

紅葩の知識が正しければ、これから会うのは…。

みんなとその場を後にし、黒天学園に戻る。

「………嘘。」

半壊していた生徒会室は…何と綺麗に修復されていた。

「何で………。」

「それを説明する前に、ボクらのボスと「ご対面~。」」

生徒会の隣室…理事長室の扉がゆっくりと開かれた…。

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