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28話

スサノオの討伐を新たな目的とした生徒会メンバー・・・現在。

「「天照の鬼~~~。」」

「まだ身体が・・・っ。」

「「「「・・・・・。」」」」

上から蒼葵、紫葵、咲良、璃莉、剣、蓮、紅葩。

 もれなく生徒会室の至る所で突っ伏していた・・・あの璃莉や剣もである。

打倒スサノオを誓ったメンバーは新たに誓いを立てた。

 スサノオを倒すことが現実的になった今、他の仲間と闘うことを止めた。

ここ1ヵ月数人の仲間と闘った後(生徒会側の勝利)説得をした結果、彼らは闘いを放棄し紅葩達の言葉を信じてくれた。

 紅葩達は今迄以上に己を鍛え、昔よりも強くなった・・・つもりだった。

ヤル気を出した天照はとてつもなく鬼教官だったのだ・・・。

 生徒会トップの実力である剣と蓮、急成長した紅葩でさえ足元にも及ばなかった。

正直、天照がここまで強いとは誰も思っていなかった。

 天照の武器は布、イメージとしては天の羽衣。

布というだけあって動きはしなやか、璃莉や咲良の武器を簡単にいなし蓮の銃弾を軽々と弾き、近接の紅葩、剣、蒼葵、紫葵は舞っている布の動きに翻弄され近づくことも出来なかった。

結局全員が息を荒げるまで天照に近づくことは誰一人敵わなかった。

「・・・・・帰る。」

「紅葩?」

時刻は夕方、12月になった外は既に薄暗いものだった。

(・・・神の気、か。)

武器(核)を出した状態の仲間を、仲間同士は感じることが出来る・・・裏を返せば武器を出さなければ仲間と感じることはできないのだ。

 核は″神の気″が最も強く、普段は人間という器に隠されている状態・・・だが紅葩は神の気を感じることが出来る一族。

(最近蓮達から気を感じるようになってきた・・・これなら近い内に。)

スサノオを見つけられるかもしれない・・・だが。

(見つけたとしても勝てる気がしない。)

スサノオと刃を交わした紅葩が一番感じていた。

天照に触れもしなかった自分達はどう転んでもスサノオには勝てないと。

(・・・あの状態なら。)

自分は全く記憶が無いのだが、睡蓮と対峙した時、秋葉に殺られそうになった時に現れた別人格。

 剣曰く椿家の令嬢だった時の、無表情で無感情だった紅葩。

大鎌を振るだけで衝撃波を放ち秋葉を傷付けたという・・・何度試しても無理だった。

(・・・今は自分に出来ることをやろう。)

前向きに考えることにした紅葩は夕飯の献立を考え始めた・・・裏門に差し掛かった時人影が。

今日は土曜で学校は休み、夕方のこの時間は部活で帰る人はいても来る人はいないはず・・・警戒する紅葩と人影の20代後半くらいの男性と目が合う。

「・・・・・あ。」

誰かに似ていた。

「人が通ってくれて良かった~ここ全然人がいなくて。」

「・・・今日は土曜ですし、ここは裏門なので生徒は全然通りませんよ。」

「えっ?ここ裏門なのっ?でかすぎじゃないっっっ?」

騒がしい人だ・・・誰に似ていると思ったのか分からなくなってしまった。

「それで・・・何か御用ですか?」

「あぁごめんね日本の学校ってもっと手狭なイメージだったからびっくりしちゃって。」

「はぁ・・・。」

海外にでもいたのだろうか・・・海外の学校はどんなものかは知らないが、ここ黒天学園は小中高大学一貫で広さは尋常ではない。

「何度も話脱線しちゃってごめん。探している子がここの生徒だって聞いたものだから。」

「先程も言いましたが今日は土曜日ですし、今残っているのは寮生活している人達位しか「紅葩~。」・・・。」

咲良の叫び声・・・何しに来たのか全員いる。

「さく「やぁ、剣。」えっ?」

男性の明るい声・・・確かに剣の名を呼んだ。

 呼ばれた剣は目を見開き、驚きながら男性を見つめていた。

「大きくなったねぇ~それに綺麗になった・・・っていうよりかっこ良くなった?

えっ?写真でも思ったけど僕よりかっこ良くないっっっ?」

紅葩は先程会ったばかりだが・・・本当に騒がしい。

 他の皆も紅葩と同じリアクションだが剣だけは違った。

「・・・っ、兄さんっ。」

剣は皆が見たことのない幼い笑顔を浮かべ男性に抱き着いた。

 その姿にメンバーは唖然、剣の表情も言動も初めてだった。

「剣って兄貴いたんだ・・・。」

暗闇に目が慣れた頃改めて男性を見る。

 背は剣より高いが、髪は剣と同じ夕陽の様な赤・・・だが顔立ちは本人が言う様に剣の方がカッコ良い。

男性は優しげな雰囲気で、どちらかというと。

「紅葩ちゃんにそっくり。」

「・・・確かに。」

どちらかというと剣より紅葩の方が似ていた・・・だが紅葩は。

(・・・昔の蓮に似てる。)

昔よく遊んでいた時の無邪気な蓮に似ていると紅葩は思った。

「兄さん何時日本に?」

「向こうの仕事がひと段落してさっき。学園祭の写真ネットに載ったでしょ?

  それを見た友人が僕と同じ髪色の子がいるって発見して・・・剣無事で良かった。」

「・・・兄さん。」

剣は嬉しそうに顔を緩ませた。

「兄さん、紹介するよアタシの大切な友人だ。」

剣は男性から離れるとひとりずつ紹介した。

「そうか・・・みんなあの街のスラムの子達か。

  剣が良く遊びに行っていて当時は心配していたんだけど杞憂だったみたいだ、剣と遊んでくれてありがとう。」

男性の名前は凰間おうま 朱羅しゅら

 彼は幼い頃から優秀だったにも関わらず誰にでも優しくカリスマのある人で、10年前の事件の前に海外の大手企業に内定が決まっていた。

つまり彼は″仲間″では無い・・・はずなのだが・・・。

(何?この違和感。)

紅葩だけは何かを感じ取っていた・・・朱羅からは何も感じない、はずなのに。

「・・・?紅葩どうした?」

「なんでもない・・・そろそろ帰るね。」

「あぁ気をつけてな。兄さんは今日どこに泊まる予定なんですか?」

「近くのホテルに泊まるつもりだよ。紅葩ちゃん良かったら一緒にどうかな?」

紅葩は顔には出さないが困っていた・・・どうしても違和感を消すことが出来ないのだ。

「生徒会室を使えばいい、天照も今日は居ないしな。」

「良いのかな?僕部外者だけど学校に入って・・・。」

「明日は日曜日だし良いんじゃないですか?家族水入らずで過ごしてください。」

「ありがとう蓮、璃莉、兄さん案内するよ。」

朱羅の腕を引いて学校に入っていく剣・・・本当に嬉しそうだ。

 みんなも剣達の後を追った、これから家に帰る紅葩と1人を置いて。

「アンタは行かないの?蓮。」

「何を隠してる?紅葩。」

上手く隠したつもりだったが蓮には見破られていたらしい。

「・・・ねぇ、剣はどうしてスラムに遊びに行っていたの?」

紅葩達が10年前に住んでいた街は日本では珍しい洋風な街並で貧富の差が激しかった。

 椿家が越して来るまで1番の豪邸の令嬢だった睡蓮、椿家の令嬢だった紅葩程ではないが、剣の家もなかなかの金持ちだった。

 その剣が治安の悪いスラム街に通っていたのか・・・。

「アイツは家じゃ落ちこぼれで居場所がなかったらしい・・・アイツの親は兄にゾッコンだったんだろうな。」

それこそ自分の娘が屋敷を抜け出してスラム街に行っていた事など知らなかっただろうし、興味もなかっただろう。

「・・・・・そう。」

紅葩は両親が多忙で紅葩の事はそっちのけだったが使用人が目を光らせていた・・・抜け出す事など到底出来ないだろう。(遊びに来ていた子供はいたが・・・。)

 居場所の無かった剣はスラム街に、咲良達の元が拠り所だったのだろうか・・・。

「朱羅さん、良い人だったね。私は兄妹がいなかったから少し羨ましいな~。」

「言いたいことはそれだけか?」

この男はどうして話題を必死に逸らそうとしているのに空気を読んでくれないのだ。

「スサノオの事が無かったら・・・剣は今と違って年相応の女の子だったのかなと思ったら余計にスサノオが許せなくなっただけ。」

これは本音である。

「・・・そうか。」

「じゃあ、私今度こそ帰るか「言いたくなったらいつでも言え。」・・・うん。」

次の日・・・紅葩はお昼御飯を持って学校に来ていた。

(探るにしては露骨すぎだかな・・・。)

校門の前に昨日と同じ様に人影が・・・今回は女性だ。

「あの・・・どうかされたんですか?」

「あっ、す、すみませんっ。」

深々と紅葩(年下)に頭を下げる弱弱しい彼女。紅葩自身、周りの女子達も強いだけに新鮮な感じである。

「あのっ、こちらに凰間 朱羅さんがいると聞いたのですが。

その、部外者が勝手に学校内に入るのはどうかと思って・・・朱羅さんに連絡をしたんですけど返事がなくて・・・。」

昨日の朱羅と同じ言い方・・・この人は。

「失礼ですが、どういった御関係ですか?」

「はっ、わたしったら自己紹介もせず用件だけ言って・・・また上司に怒られちゃう。」

「・・・・・。」

「あぁごめんなさいっ、話を脱線させちゃってっわたしいつもこうでっ。」

似た会話も昨日したような気がする。

「わたし、朱羅さんと同じ職場で働いています梅園うめぞの 満月みつきと申します。

仕事の関係で1日朱羅さんと便を変えまして・・・その、朱羅さんとは・・・・・。」

頬を赤く染めどもる女性、満月。

「恋人・・・ですか?」

「・・・っ、はい。僭越ながら努めさせていただいて、ます。」

恥ずかしそうに、でもどこか幸せ一杯の笑顔の満月はとても可愛らしかった。

 言動も纏う雰囲気も似ていてお似合いのカップルだと紅葩は思った。

紅葩は満月を連れて朱羅達の居る生徒会室に向かった。

 皆は紅葩と一緒にいる満月に驚くが朱羅は笑顔で満月に近づいた。

「満月待ってたよ。」

「待ってたよじゃないですよっ、連絡したのに返事が無いし。

紅葩さんが来てくれなかったらわたし中に入れなかったんですよっ、もうっ。」

紅葩との会話とは違い、砕けた喋り方で話す満月に紅葩は微笑ましくなった。

 他の皆もその雰囲気を悟っていた。(双子が活き活きとしていた。)

(・・・・・剣?)

剣はどこか複雑そうな顔をしていた。

「皆紹介するね、僕の彼女の梅園 満月。

  昨日紹介するつもりだったんだけど、剣に会えて嬉しくて忘れちゃってたよ。」

「朱羅さんは本当に妹の剣さんが好きなんですね。」

「可愛い妹だからね。剣、彼女とは結婚も考えていて・・・式の参加も考えてほしくて。」

もちろん皆も、と続ける朱羅に喜ぶ主に双子。(冷やかしが混じる)

「・・・あぁ、考えとくよ兄さん。」

剣は生徒会室から出て行く・・・その様子を見ていた紅葩は後を追った。

 行き先は屋上だ。

剣はフェンスの上に座り空を眺めていた・・・紅葩はフェンスに寄りかかった。

「「・・・・・。」」

お互い何も言わない・・・沈黙が続く。

「・・・何も聞かないのか?」

沈黙を破ったのは剣の方だった。

「聞いていいの?どうして祝福しないのか・・・どうして、浮かない顔をしているのか?って。」

「はっきり聞くな・・・。」

「直球で言った方が良いと思って・・・それに剣も喋りたそうだったから。」

「確かに・・・アタシは誰かに聞いてほしかったのかもな。」

剣らしくない弱弱しい声。

「紅葩は初恋を覚えているか?」

「初恋?・・・・・父、かな・・・。」

「アタシは兄だった。両親は兄ばかりで・・・でも兄だけは、兄さんだけはアタシの事を見てくれた。

  アタシの世界は、兄さんがすべてだった・・・いなくなってもずっと。」

「・・・だから、蓮の所に行ってたの?」

朱羅は昔の蓮に似ていた。

「残念だが蓮は″どこか″の令嬢に夢中だったからな・・・なんとも思っていないから安心していい。」

「べっ、別に気にしてなんかっ。」

「・・・初恋がブラコンに代わっていれば、こんな気持ちにはなっていなかったのに。」

「剣が思うままにしたら良いと思う・・・私は剣の味方だよ。」

「紅葩・・・。」

微笑んだ紅葩、剣はフェンスから降り紅葩の隣に立つ。

「ありがとう、もう少し考えてみるよ。」

「・・・うん、先に戻ってる。」

紅葩は屋上から去る・・・その姿を剣はじっと見ていた。

「・・・アタシが男だったらこんなに悩む必要ないのに・・・兄さんの事″も″・・・。」

剣の呟きは風によって掻き消された・・・。

 場所は変わり生徒会室に戻るため廊下を歩いていた紅葩。

「・・・っ。」

一瞬だけ感じた仲間の気配に紅葩は走った。

(この感じ・・・朱羅さんに感じた。)

場所は生徒会室から1番離れた備品室、普通に考えれば誘われているが・・・。

 紅葩は1人で向かった・・・仲間に余計な不安は与えたくはないし、今の自分達の目的はスサノオの討伐で仲間同士の闘いではない。

「・・・こんな所で何をしているんですか?朱羅さん。」

「やぁ紅葩ちゃん、探検しているんだけどこの学園広くて迷っちゃった。」

備品室にいた朱羅からは殺気を感じられなかった。

「本当に迷ったのなら生徒会室に一緒に行きますが・・・その前に″懐″にあるもの、見せてくれません?」

「ははっ、さすが椿家の令嬢怖いなぁ。」

「・・・その台詞、嫌いなんですけど。」

顔を歪める紅葩、″椿家だから″という台詞は紅葩には禁句なのだ。

「ごめんね?反応が可愛くてつい意地悪したくなっちゃって。」

「・・・・・。」

こういう所は兄妹そっくりだ。

「懐のものだったね・・・″コレ″は小型だから見た目には分からないはずなんだけどな。」

朱羅の懐から蓮の銃よりかなり小さめのコンパクトな銃。

 その銃からは仲間の気配を感じる・・・それが核なのだろう・・・。

(・・・やっぱりおかしい。)

朱羅から″は″何も感じられない、気を感じるのは銃だけ。

「まさかっ・・・ぐっ。」

後ろから殴打の衝撃・・・。

「ごめんね・・・紅葩ちゃん、紅葩ちゃんは後だから今は眠ってて?確実なとこから攻めないとね。」

「あ・・・き、ら。」

紅葩の意識はそこで途切れた・・・。

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