25話
紅葩の母がいなくなってすぐ皆は紅葩を保健室へ運んだ。
「クソッ。」
紅葩が眠る中全員の空気は暗かった。
蓮は自分の非力さに壁を殴る・・・あの場に天照がいなかったら今頃自分たちはどうなっていたことか。
「・・・今までにない強敵だね。」
「あの人わたし達より相当な場数を踏んでる。」
「あぁアタシ達が束になっても勝てるかどうか・・・。」
それ程あの女性は強かった・・・紅葩の大鎌が切断されたとき、どうやって切断されたのか全く分からなかった。
恐らく紅葩本人も分からなかったと思う。
「「「・・・・・。」」」
「・・・アイツは・・・私が倒す。」
「紅葩。」
自信の胸を抑えながら上体を起こした紅葩。
「無茶だよっ紅葩ちゃんっ。」
「咲良の言う通り1人じゃ無理だってっ。」
「武器だって切られて死ぬ寸前っだった「・・・・・。」・・・。」
正論を言われ悔しげに顔を歪めながら紫葵を睨みつける。
「コイツ等の言う通りだ。」
「・・・蓮。」
先程の悔しげな表情のまま紅葩に近づく蓮。
「1人で戦ってどうこうできる相手じゃない。
あの女が本気じゃなかったのは闘ったお前が1番分かってんだろ、このまま戦えば確実に死ぬぜ?お前。」
「蓮っ、そんな言い方っ「待て咲良。」剣。」
咲良を剣が止める・・・他のメンバーも何も言わなかった。
「頭を冷やせ・・・んで身体を治して全員で「それでも・・・私は1人であの人と戦う。」っ、バカじゃねぇのかテメェ何意地張ってんだよっ。」
紅葩の胸ぐらを思い切り掴み怒鳴りつける蓮。
正論を言っているのはもちろん蓮・・・だが紅葩は引かなかった。
「意地も張るわよっ、あの女も言ってたでしょっこれは親子の問題なのっ。」
「くれっ「他人がどうこう言っていい問題じゃない。それに家族を知らないアンタには1番言われたくないのよっ。」・・・・・。」
蓮の目が見開かれる・・・胸ぐらを掴む力も無くなり紅葩はその腕を払った。
誰も何も喋らない無言の空間に入ってきたのは天照、その雰囲気を悟ったのか悟っていないのか紅葩に向かって口を開いた。
「あの女性・・・じゃなくて貴女の母親の事教えてくれる?」
「・・・名前は椿 秋葉。椿家に嫁ぐ前はハリウッドで活躍してたとか色々聞いている。
嫁いでからは引退して父よりも椿家を仕切ってた、上品で気品があって・・・何より人を従えさせるカリスマ性を持っていた完璧な存在。」
紅葩も憧れていた・・・あの人の様になりたいと。
「そして母は誰よりも・・・父と私のことを大切にしてくれた。」
その言葉には矛盾がある・・・じゃあなぜ大切にしていた父親を殺し、今娘を傷つけているのか。
「それはあの人が1番大事にしているのは自分自身だから。」
自分のためなら父や娘でさえも他人・・・紅葩は言葉を続ける。
「あの人は何でもするしどんな手段でも使ってくる。
天照、しばらく学園を閉鎖してくれる?それと私しばらく学園にいるから。」
「えぇ手配しとくわ・・・紅葩本当にいいのかしら?」
「・・・・・何が?」
「なんでもないわ、さぁみんな保健室から出るわよ~紅葩をしっかり休めなくちゃ。」
天照は皆を連れて保健室を出た。
「・・・・・。」
保健室に1人になった紅葩。
(ごめん・・・みんな・・・蓮。)
後悔の念が胸を渦巻く・・・それでも紅葩は考えを曲げるつもりはない。
自分がどれだけ惨めになろうと1人になろうとも、紅葩は1人で母・秋葉と決着をつけるつもりだ。
「ふぇ・・・ふぇぇ~~~ん。」
「咲良・・・。」
場所が変わり生徒会室・・・咲良は璃莉に抱き付きながら泣いていた。
「紅葩の奴いくらムカついてたからってあんな言い方っ。」
剣以外のメンバーはあの街のスラム街に生きてきたのだ。
決して楽な生活をしてこなかったメンバーは幼い頃から大きな家柄や家族に関して悩んでいた紅葩の気持ちはまったく分からない。
「ボク達・・・仲間だよね?」
紅葩は人一倍みんなに優しく真っ直ぐだった・・・だからこそ出逢って半年で背中を預けられる位信頼できる仲間になったのだ。
そんな紅葩が自分達を傷つけ突き放すような言葉を言ったのだ、皆に動揺が走るのは当然のことと言ってもいい。
あの冷静な璃莉と剣でさえ上手く頭を働かすことが出来なくなっていた。
「そんな辛気臭いオーラはすぐにしまいなさ~いっ。」
「・・・天照。」
「あんた達の仲間意識はこの程度で崩れるものなの~?
誰にだって苛立って思ってもいないことを口走っちゃうもんでしょ・・・大丈夫よ紅葩なら。」
「・・・天照がまともなこと言ってる。」
「明日は雪が降るかもね~~~。」
天照のおかげで明るくなった皆だが・・・1人だけ立ち直れていない者がいた。
それから1週間・・・紅葩の傷はすっかり治ったが保健室から1回も出てくることは無かった。(学校は断水工事ということで2週間閉鎖になっている。)
「・・・・・。」
紅葩は自分の武器であり、命である大鎌を見つめていた。
「人を殺す覚悟・・・・・か。」
そんなもの持ちたくはない・・・がスサノオの玩具である限り持たなくてはいけない、殺らなければ自分が殺られるのだ。
しかも相手は全然刃が立たなかった秋葉なのだ・・・迷った時点で紅葩は敗北し光となってこの世から消えるであろう。
―――――「お父様、お母様っ。」
幼い日の大切な思い出・・・あの頃は廊下を走っても怒られず抱きとめてくれた。
「大好きですっ。」
「紅葩僕たちも・・・。」
「貴女のことを愛していますよ。」―――――
「・・・・・クスッ。」
紅葩の顔が綻ぶ・・・その笑顔はとても穏やかな晴れやかな表情だった。
父から貰ったネックレスを首にかけ斬られたゴムの代わりに誕生日の日に蓮から貰った白の髪紐でいつもの髪型に。
「・・・・・。」
真っ直ぐな目で紅葩はゆっくりと扉を開けた・・・・・。
その頃校門付近では現れた秋葉を生徒会のメンバーが待ち構えていた。
「紅葩はどこかしら?もう怪我は治っていると思ったのだけど・・・。」
「・・・アンタ自分が生き残るために夫まで殺した癖に俺達は眼中に無いのかよ。」
挑発的な蓮の言葉に秋葉は笑みを深くする。
「・・・そうね、貴方達に興味は微塵も無いのだけれど。」
全員が息を呑む・・・秋葉の雰囲気が変わったから。
「あの子が本気になれるように1人2人は殺しといた方が良いのかしら?」
蓮達は武器を構えた・・・が彼女の視線は蓮達から外れていた。
「やっと来たわね紅葩。」
蓮達の後ろに現れた紅葩、その目もまた秋葉しか映していなかった。
「・・・紅葩。」
「みんな。」
剣が呼ぶ声に答える紅葩・・・その顔は今から闘う者の顔では無かった。
「心配してくれてありがとう。」
「紅葩ちゃん・・・。」
「あの人は・・・あの人だけは私が倒す。
みんなには見ていて欲しい、この前みたいにやられそうになっても止めないで欲しい。」
「・・・だっ「止めろ。」」
「ダメだ。」と言おうとした咲良を止めたのは一番反対していた蓮だった。
「蓮。」
「テメェが言い出したことだ絶対に、手は出さねぇぞ。」
「・・・ありがとう。」
そして紅葩は秋葉と対峙する。
「茶番は終わったかしら?」
「貴女の目には茶番に映るのね・・・。」
紅葩は武器を出現させる。
「・・・1つ、聞いていい?」
「何かしら?」
「本当に、お父様を殺したの?」
秋葉は目を細めた。
「前に言ったことを忘れたの?生き残るゲームなのよ。
生きる為に私はあの人を殺し「違う。」・・・。」
「私が聞きたいのは貴女″が″殺したのか。」
「・・・・・。」
紅葩の言葉の意味がまったく分からない生徒会のメンバー。
「・・・殺したわよ。結局は皆最後には″自分の″命を選ぶのよ。
貴女だって例外じゃないでしょう紅葩、自分が生き残るために貴女は今私を殺そうとしている。」
初対面だった自分を庇って助けてくれた蓮、
自分の手を汚せる位自分のことを愛してくれた時雨、生徒会の仲間、親友の雫・・・そして笑顔の両親。
「私は負けない。」
2人の間に緊張が走る・・・闘いが始まろうとしていた。




